120年の節目

安和海岸の竹虎四代目


断崖の続く海岸線を伝うようにして、一人の男が小舟に揺られてやって来る。波の穏やかな、さざ波の打ち付けるその小さな浜辺に引き寄せられるように辿りつく。


ガツン、、、、、


ほどなく船底は浅瀬に乗り上げる。


波打ち際に降り立つ地下足袋姿の男。羽織ったハッピには鮮やかに染め抜かれちゅう「竹亀」の文字。ずっと丸い小石が敷き詰められたような浜ぜよ。歩くたびにザッザッ...と小気味のエイ音がする。松林のずっと向こうに高くそそり立つ焼坂に、鮮やかな鶯色の竹林が揺れて手招きしゆう。


「良く来たにゃあ」


どこからともなく声がする。


「何や、竹まで土佐弁かいな...」


ザッザッザッ...。頭に巻いた手ぬぐいを締め直し、真っ直ぐ竹の山に歩きだす。


「どうして、こんな田舎まで来たがぞね?」


足を止めることもなく、ちっくと笑みをこぼしながら一言つぶやくがぞね。


「ベッピンさん、あんたに会いたいさかい」


夢を抱き、覚悟をもって遙か遠く浪速の町からやって来た。見上げる谷間から風が吹くおろしてくる。竹虎初代、宇三郎がその時に感じた風。その風を今、自分が感じられるか、どうか?100年前の声を今、自分が聞けるか、どうか?


幼い頃から竹と遊んだ大好きな安和の海。たった一人でここに来る。自分に問う事はこれだけ。


竹虎は明日から創業120周年の節目を迎える。


コメント(4)

fugiena 返信

こんばんは。
本年も大変お世話になりました。
来年が創業120周年ということで、節目の年、おめでとうございます。
これからも、御社製品の愛用者として、出来るだけ自然に寄り添った暮らしをしていきたいと思っています。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

飯島 昭 返信

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 120年という長い間家業を続けるということは、まことに素晴らしいことであると思います。
 世の中の変化が「十年ひと昔!」と言われていた時代から、「5年」「3年」と期間が縮まり、一年が年明けから大晦日までの間で様々な変化を遂げ、“大きく変化している”と感じているのは私だけでしょうか?
 そんな中、変わらず“昔”を引き継いでいる、伝統を大切に継承していることに敬意を表します。
 昨年から「竹細工」を始めた、“ひよこ”ではありますが、虎竹を知り、虎竹を目の当たりにして、その素晴らしさに感動し、これからの作品作りに利用させていただきたい!と思っております。
 これからも貴重な“虎竹”を守っていただくとともに、より良い製品や素材の提供を願って止みません。

                   群馬県伊香保温泉 香東

竹虎四代目 返信

fugiena 様

昨年はご愛顧ありがとうございました。
今年も何卒よろしくお願いいたします。
竹に節がありますように、この120周年は大事な節目と考えちょります
精一杯頑張りますので何卒よろしくお願いいたします。
ありがとうございます!

竹虎四代目 返信

飯島 昭様

明けましておめでとうございます!
今年も何卒よろしくお願いいたします。

コメントありがとうございます。
皆様のお陰で何とか120年の節目を迎えることができちょります。
最後に残るものは強くものではなく変わり続けたものだけと
教えていただいちゅうがですが
竹虎も長い社歴の間には様々な変化をして今に至らせてもらっています
日本唯一の虎竹を守り、竹という背骨を持ちながらも
どんどん新しくなっていける竹虎になりたいと思うちょります。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
ありがとうございます。

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