高知の匠との出会い

尾崎さんと竹虎四代目


尾崎さんとの出会いは、まっこと感動的でもあり衝撃的でもあったがです。前々から高知から遠く鹿児島までやってきている竹細工職人さんの事は、名前だけですけんど知っちょりました。ところが、どこにおられるかも知らないし高知の方なら一度お会いしたいにゃあと思いながら機会もなかったのですが、ひょんな事から、この職人さんをご存じの方にお会いしたがぞね。


連れて行ってあげると言われて案内してもろうたがですが、車で少し走っては止まり、又少し走っては止まり...もう随分昔のことなので道路脇の景色も変わってしもうちゅうのかなあ?確かこの辺りのハズだけれど...そう言われる場所を道路から横に伸びる細い山道まで入っていってみては、キョロキョロとアチラコチラを見回すけんど何もなく、人に聞こうにも誰もいない道路脇、一度引き返して又同じ道を走ったりしてみよったのです。


竹職人


けんど、随分走ってきて、それらしき所は全くありません。最後に会ったのはもう何年も前の事なので、その職人さんの建物もなくなったか、何かかも知れない。そんな話しにもなって、あきらめちょったがです。


まあ縁がなかった言う事やにゃあ。自分も、しょうがないと思いながら帰りの挨拶もすませて、すっかり帰る気分になって車に乗り込み走りだして暫くいくと...ややっ!こんな所に目的の職人さんの工房らしき建物がありますちや。急いで車から降りて小走りで行ってみると、出迎えてくれたのは、会うのをあきらめかけちょった職人さんぜよ。


竹籠を持って


まっこと嬉しゅうになって大声で挨拶しましたぞね。けんど、おんちゃん凄いねえ、ここで仕事しゆうがやねえ。建物の裏側は切り立った崖があり、その下に広いスペースがあって、あれこれ話しをさせてもらうがぜよ。


しかし、まっこと良くぞここが分かったちや。そして、ようこそ、職人さんもおったものやちや。偶然が偶然を呼んで、又竹の神様が大事な人を繋いでくれた、そんな感謝の気持ちが湧いてくるがです。


麦わら帽子が似合う職人さん。身体は小さいけんど筋肉は現役そのまま。竹職人さんは、概ね元気ながはいつも身体を適度に動かし、手先をこじゃんと使いゆうきですろう。それにしたち高知を離れて40年と言うのに、やっぱり土佐の男ぞね。一緒に話し出したら、いきなりバリバリの高知弁になるがです。まるで高知で話しゆうみたいな錯覚になるがが嬉しいにゃあ。


竹職人


「恥ずかしいきに土佐弁は話したことが無いけんど」


いやいや、しっかりお国言葉ぜよ。コチラに来られちゅうのにも浅からぬ縁を思うがです。高知では竹細工をしゆう古老の方は竹ざるの事を、当たり前のように「サツマ」と呼びよります。昔は、どうしてやろうか?と思いよりましたが、これは、竹の技術が薩摩から伝わったいう証ですろう。そんな関係のある土地にこられて竹細工されゆうのも不思議ぞね。


竹ひご


何十年と竹の仕事をされてきた熟練の職人さんです。ところが竹の技は衰える事を知らんがやないろうか、ますます元気に腕も冴えちゅうぜよ。今日初めてお会いしましたけんど、青々と若々しい磨きの竹ヒゴが、そんな事を言いゆう気がするがです。


竹手付きかご


「これ、ひとつ持って帰りや...」


優しい笑顔で手渡してくれる高知の生まれの職人さん。虎竹の里から、こんなに遠く離れたところで何という心が温うなる贈り物ですろうか。おんちゃんの思いのこもった竹細工が40年ぶりに高知に帰る。そう思うたら竹の出会いとは面白いにゃあ。


虎竹の里にて


虎竹の里に帰ってきて、さっそく籠を見せに山に行っちょった。分っちゅう、分っちゅう。おまんらあ、皆の気持ちは良く分かるがぜよ。


コメント(1)

中村智美 返信

素晴らしい竹籠ですね。
いま、将来の為に金継ぎを習っていましてそのお道具入れにしたいと思います。
貴重なものですので大切に大切に使わせていただきますので、ぜひ、私にお譲りいただけないでしょうか。
宜しくお願いします。

コメントする