田中淳シェフ「Restaurant A.T」

 
田中淳(Atsushi Tanaka)、竹虎四代目


いつもお話しさせていただきますけんど食に炭を使う事自体は、正直新しい事でも何でもなく昔から日本では民間療法的にあった事ですぞね。それが、たまたま見直されて今や国内では様々な食材に使われています。パンやお菓子だけでなくて、レストランの一品料理にも出てくるようになり、まっこと、面白い時代やにゃあ。あの竹炭を炭窯でかじる言いよった職人さんが見たら、どんな風に思うろうにゃあ...。けんど、これが世界の食をリードしゆうパリにまでとなったなら、これは何と凄い事やろうかと思いよったがです。


そうこうしている間にパリで大注目されちゅうという日本人シェフ、田中淳(Atsushi Tanaka)さんの「Restaurant A.T」を知る事になったがぞね。実はこの方、地元のフランス料理人の間でも広く知られる存在で、あのミシュランの星の付くのも間違いないと言われちゅうそうぜよ。日本から遠く海外まで行って、まっこと素晴らしい方やと感激しましたぞね。


Atsushi Tanaka、Laurent Favre-Mot、竹虎四代目(山岸義浩)、Ben Bibenbou、Sang-Hoon Degeimbre、Catherine Seiler Luttmann


「Restaurant A.T」さんに行きたいと、パティシエのLaurent Favre-Motさんに頼んだら、ちょうど自分達も行きたいと思っていた店だったとの事で、話しはトントン拍子に進んで、料理関係のご友人の方なども含めて、一緒に予約をしていただいちょりました。中にはベルギーで二つ星のレストランをされているシェフの方もおられます。こうやってパリでお店をされるという事は、毎日のように舌の肥えたお客様を相手にされるという事で、日々、挑戦と進化の積み重ね、まっこと凄いにゃあと思うがです。


竹炭チップス(Bamboo charcoal)、Laurent Favre Mot


さて、田中淳さんの、コースはいきなりの先制パンチ、竹炭のチップスから幕を開けますぜよ。これからの期待を更に盛り上げる嬉しい一品でした。


「Restaurant A.T」(Atsushi Tanaka)

「Restaurant A.T」(竹炭、Bamboo charcoal)


それから自分が勝手に名付けた竹炭三種盛り?おっと実際にはそれぞれお皿が別なので三種盛りではないがですが、竹炭入りの料理が連続3連チャンで運ばれます。


「Restaurant A.T」(竹炭、Bamboo charcoal)


最初のインパクトから、すっかり心を奪われちょりましたが、次々と出していただく料理が新鮮な感覚で美味しく、食事が楽しくて次の料理が待ち遠しくなってきますぞね。きっと、この方は絵心があると思うがです。お皿が一枚、一枚、彩りが美しく、まるで絵画のようやきです。白いお皿に効果的に黒い竹炭粉を使う事によって、今まで見た事もないフランス料理の表現がされちょりますが、黒は主役にもなれるし、脇役として他の主役を引き立てる事もできる、使い勝手のエイ色合いではないかと思うたがぞね。


「Restaurant A.T」

レストランA.T、竹炭、Bamboo charcoal

レストラン A.T

「Restaurant A.T」竹炭、Bamboo charcoal


最後のデザートに致るまで竹炭を使うちょります。炭の量を調節することにより黒色でも濃淡ができますちや。確か黒に種類が何種類もあるのは日本ではなかったろうか?日本の繊細な色使い、感覚がフランス料理の世界でも、十二分に活かされているようにも感じたがです。


田中淳(Atsushi Tanaka)、竹虎四代目(山岸義浩)


食事を終えた後に田中さんが厨房で竹炭と料理について、いろいろと教えてくれるがです。結局、今夜の12品のうち竹炭が入ったのは6品。今度は、12品全部に使ってチャレンジしたい、そう話されていた表情は、すでに自信たっぷりやったです。


今度...?


精一杯頑張って、ようやくの思いで、はじめてパリに来て、もう二度とフランスには来る事もないろうと思いよりましたが、むむむ、、、Laurent Favre-Motさんの店もオープンしてなかったし、あと一度だけは何としても渡仏する運命ながやろうか?


Atsushi Tanaka、YOSHIHIRO YAMAGISHI、Sang-Hoon Degeimbre、Ben Bibenbou


田中さんの料理はアート的なところが感じられますきに、つい勝手なイメージがありましたけんど、まっこと気さくで話しやすい方やったです。料理の味だけでなく、人間味ても魅力的な方で、嬉しい出会いやったぜよ。


さて、話しは少し変わりますけんど、ピエール・ガニェール(Pierre Gagnaire)さんという方を、たまたまテレビで拝見したばかりだったのです。食通の方なら知らない人のいないフランスで有名なシェフであり、聞くと日本にもお店があって大変な人気のようながです。田舎者の自分は、高級なフレンチのような世界には縁遠く、実は、存知上げていなかったのですが、この方の立ち振る舞いが格好よくて、見た瞬間から画面の前に釘付けになりましたぞね。白衣を着ちょりますので料理をされる方というのは一目瞭然ですが、フランス料理のシェフと言うよりも芸術家かアスリートのような、チラリと見え隠れするストイックな感じと、料理を心から楽しんでいる姿に、まっこと魅入られてしもうちょったがです。


時間を費やせ(prends le temps)ピエール・ガニェール(Pierre Gagnaire)


そして、最後にピエール・ガニェールさんが言うた言葉にしびれたぜよ。生きている事自体が夢であり、自分にとってプレゼントのようなもの、だから、他の多くの人を喜ばせたい、幸せにしたい、そんな事を話された後にこの言葉が出てきたがです。


「 prends le temps(時間を費やせ) 」


まさに、これは田舎者で頭が悪く、人より全てにおいて劣る自分が心がけて来た事でした。準備が長く必要なので誰よりも早く会社に行く。要領が悪い分は、誰よりも時間を使うことでカバーする。


けんど、自分は朝から晩まで竹の事ばかり考えて、実はこれでエイがやろうか?そう思うてしまう事もあったのです。けんど、この言葉が自分の毎日をも肯定してくれ、間違うてないよと、背中を押してくれちゅうような気がして本当に嬉しく思いました。それで、このシェフの名前は忘れたくないなと写真を撮っておいたのです。そしたら、何と田中淳さんが若かりし日にピエール・ガニェールさんに感銘を受け、この方の店で料理人としての修行もされたというのを後から知ったがぜよ。いやいや、さらに不思議なご縁やにゃあと思うたのです。田中淳シェフに又お会いできる日はあるろうか?目と舌が喜ぶ料理を食させていただける機会はあるろうか?その日が来ることを信じて、今日も頑張るがぞね。


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