マイカ線

虎竹の選別


日本唯一虎竹の里も虎竹の伐採時期を迎え、切り子さんと呼ばれる竹を伐採する職人さんたちが、あちこちの山に入り始めました。竹は1本1本伐採されますが、ある程度の大きさの束に結束されて、トラックに積み込み、それを土場と呼ばれる広場で大きさや色によって選別し、広げていきます。


その広げた竹をまた束にして保管したり、トラックに積み込んで竹虎工場に運び込み、その竹の大きさや色つき、良し悪しなどによっていろんな用途に切り分けていきます。その際に竹を結束するのに使っているのがマイカ線です。かなり以前は竹を割ったものをヒモ状にして、それで束にしていた時期もあったようですが、今はこのマイカ線を使用しています。


マイカ線というのは主に農業用に使われているヒモで、ビニールハウスにビニールを張った後、風や雨でビニールがめくれてしまわない為に補強として使う線です。このマイカ線で風でフィルムが飛んだり、傷づいたりするのを防いでいるそうですが、結びやすく、ほどけにくいという特徴があるので結束にもうってつけなのです。


手袋をしているために滑りやすかったり、結びにくいヒモは扱いにくいのですが、このヒモはもつれにくく、少し長めに切っておくと、すごく結びやすいのです。工場内に取り込むと、いろいろな用途に合わせて短く切断していくために、またヒモが多く必要になってきます。今年もまた長いマイカ線を丁度の長さに切りそろえてカットする時期になってきました。

山道に立つ棒

虎竹の山


虎竹の里の虎竹の山に通じる山道を上っていると、所々に鉄の棒が立ってるのをよく目にします。これは何かと言うと、一般道でいえばガードレールのようなものでしょうか。虎竹を下してくるときに、竹を積んだソリが山道から落ちてしまわないように切り子さんたちが立てているのです。


山で伐採された虎竹は山である程度の大きさの束にされます。一昔前はキンマと呼ばれるソリのようなものを担いで山に上がり、それに竹を積んでおろしていたそうですが、今ではキャタピラーのついた運搬機に竹の元をのほうを積み、長い竹の先のほうの下側にそりを敷いて、竹が傷つかないようにしながら下してくるのです。


山道は当然ですが真っ直ぐではなく、山に沿って曲がりくねっています。運搬機の竹を乗せる部分は動くようになっていて、その部分では曲がってくれるのですが、竹の部分は真っ直ぐですので、どうしてもカーブの内側に竹がはみ出てしまいます。そのためにこうして鉄の棒を立てて、竹がカーブ内側の谷に落ちないようにしているのです。


その他にも急な斜面の場所は少し雨が降れば下の土が滑って、いくらキャタピラーの運搬機でさえも上がることができないために、ゴムを敷いたり、滑車付のロープで引っ張り上げたり、急なカーブでは曲がりきれないために、山側を削ったり、道を作り替えたりしています。山に入ってやってみなければ気づけなかった沢山のことが、山にはありましたし、まだまだあるように思います。


道から30~40分も山道を上がった山から出てきたり、急な山道だったり、道を毎年整備しながら入る山もあります。いろんな状況の中で苦労して切り子さんたちが出してくる虎竹です。毎年当たり前に出てきていた虎竹が、当たり前ではないことに感謝し、それを理解し、支え続けていくことが自分の役目でもあるように思うのです。

新竹が出てきました

虎竹の選別


は伐採する時期があり、だいたい秋口から冬にかけての時期が伐採時期とされています。これは竹が一番休んでいる状態で水を上げていなくて、養分も少ない時期とされています。こういう時期に伐採すると竹自体が固く、変色や腐敗しにくく、虫も入りにくい時期とされています。


もちろん竹によって時期も違い、2~3月ごろからタケノコを出し始める孟宗竹などは早い時期から水分を上げだし、タケノコを出す準備を始めるので、11月頃までが伐採時期とされています。その次にタケノコを出すのが虎竹で、一番遅いのが真竹です。


その伐採時期にも「つち」と呼ばれる時期があり、その時期も外しながら伐採をしています。古い暦に「大つち」、「小つち」と呼ばれる時期が記されています。つちの期間には、土公神(どくじん)が本宮あるいは土中にいるため、土を犯してはならない。つまり、穴掘り、井戸掘り、種まき、土木工事、伐採など土いじりは一切慎むべきとされている。特に、地鎮祭等の建築儀礼には凶日とされているといわれています。


また竹も生物ですから、当然バイオリズムはあるのですが、大つち、小つち期間中は、竹にとって低調な時期にあたり、この時期に伐採すると竹に虫が入りやすく、早く腐りやすいとか言われています。また地球のバイオリズムがその時期は低調なために、その弱っている地球に根差している竹をはじめとする樹木を伐採しても、よくないと考えている方もいるようです。


私が竹屋に入ったときからずっと言われてきたことですが、どんどん出荷しないといけない時期には、そうも言っておられずに伐採していた時期もありました。しかし、つちを外して切った年には明らかに虫の入る割合が減ったことで、その年からつちは外してもらうようにお願いし、毎年つちの時期を調べて切り子さんに周知しています。


11月16日にはつちがあけます。次は12月30日につち入りします。その間にどんどん伐採し、つちの間の伐採できない時期に枝打ちをし、山から出してきます。今年も虎竹の伐採時期となり、少しずつ切り子と呼ばれる竹の伐採職人さん達が虎竹の山に入ったり、入る準備の草の下刈りなどを始めました。


そしてこうして少しずつ竹が山から出てきます。その竹を1本1本選別しながら選り分けていきます。虎竹の里のおなじみの秋冬の風物詩です。

箸用の虎竹

虎竹


竹でお箸を作るための材料として必要なことは、材料の良し悪しはもちろんですが、竹の厚みと節間の長さが必要です。竹は中が空洞で竹によって厚みが違いますし、先に行くにしたがって厚みも薄くなってきます。元のほうは厚みがありますが、節間が短く、お箸の長さが取れないものも多くあります。


そういう条件の中で多く使われているのは孟宗竹と呼ばれる日本で一番大きくて長い竹です。この竹は大きくて厚みもあり、節間も長いために多くの竹製品の材料として使われています。


竹の表皮を削ってしまうと身の部分は白いために、炭化という方法で着色することが多い材料でもあります。これは高温高圧蒸気による着色で染料や薬品を使わずに、蒸気で竹材内部まで着色する方法で、熱による竹材自身の成分変化によって着色するために安全で煤竹に近い色に仕上がるので、多くの食品関係の製品に使われ、箸の材料としても最も多く使われています。またこの方法は竹の成分を抜くことで虫を入りにくくするという効果もあります。


虎竹削り箸や虎竹男箸のような、日本唯一の虎竹の箸も着色したわけでもなく、自然の模様の入った箸として人気のある商品ですが、材料の確保には一苦労があります。


虎竹は節間がそんなに長い竹ではなく、また厚みもそんなに厚いい竹ではないからです。厚みを求めれば元のほうで探すことになりますが、そうなると節間が短くて節の間でお箸が作れません。ある程度の節間の長さがあり、また厚みのある竹を多くの中から選別しておき、箸の材料とするのです。


また模様も様々で濃い色があったり、薄かったり、模様がはっきりしていなかったりと様々で、細いお箸にした時にせっかくの模様が綺麗に見えないものもあり、多くある竹からも気に入った竹はそんなに多くはないのです。


そんな日本唯一の貴重な虎竹の、またその中で限られた、選ばれた虎竹だけで、虎竹削り箸や虎竹男箸など、虎竹のお箸は作られているのです。