虎竹を運ぶ運搬機のゴムクローラー

竹虎本社工場


竹は秋から冬場にかけて伐採するから今頃の竹虎工場には、虎竹原竹や真竹、孟宗竹、黒竹など竹材が豊富に揃っている。虎竹は、これから合間を見ながらガスバーナーで油抜き加工していくし、太い真竹は茶碗籠や脱衣籠などに、孟宗竹は袖垣の柱に使う他は、エビラ籠や国産竹ざるなどに多用する。黒竹は虎竹縁台、別注でのご注文も沢山いただくようになった玄関すのこにも使っている。


虎竹伐採


虎竹の伐採は終わっているが、山の仕事が全て完了しているワケではない。実はまだ竹林から出てきていない竹材もある、日差しのあたる土場よりも木々の繁った山道にそのまま置いてる方が都合が良い事もあるのだ。


虎竹山出し用機械


そこで、山出しに使う竹材運搬機は今でも待機中だが、本当に長く活躍している働き者だと感心する。


すり減ったベルト


この機械の足元に使っているゴムクローラーをご覧いただきたい。人で言うなら靴底にあたるかと思うけれど、これだけ靴を履き込む事があるだろうか?虎竹の里の険しい山道を一体どれだけの沢山の虎竹を支えて下ってきた事か!感じ入らずにはいられない。思わず頭をさげた、感謝感謝だ。





厳選する名人作の虎竹耳かき

名人作虎竹耳かき


名人作の虎竹耳かきが長い間欠品となっていた。名人作と言うくらいだから、職人が限定されているから製造が間に合っていなかったのか?実はそういった事ではなく、ただ単に竹材がなかっただけなのだ。こんなに小さい耳かきだけれど、ご愛用いただいているお客様ならお分かりのように持ち手はかなり太く持ちやすい。


虎竹原竹


なるほど厚みのある立派な竹材を厳選しているのは分かるけれど、それでも竹林を見れば沢山生えている。竹が増えて困っている話ばかり聞いているし、毎年沢山虎竹が竹林から出されるのだから、さすがに足りない事はないだろう?そう思われるのが普通だ。


虎竹油抜き加工


ところが、本当に直径が太くて身の厚い虎竹というのは貴重である。それで色付きがあって、3~4年竹の頃合いともなれば竹林の中を探し回って伐らねばならない状態だ。


虎竹箸


厚みがあって、節間の長さも必要な虎竹男箸なども同じ理由で度々品不足になる。決して沢山販売されているワケではないが、作られる量が少ないのだ。


虎竹


虎竹は淡竹(はちく)の仲間だけれど、そもそも淡竹は身が薄いのが一つの特徴でもある。竹林を見て回っても今の状況が急に変わるという事はないので、これからは製品自体の規格を少しづつ見直していかねばならない。虎竹に合わせて自分達の仕事や、作る物を変えていく、まさに自然だ。



虎竹伐採の山

虎竹伐採


この季節、虎竹の里の山々は賑やかだ、どうかすると山の麓にまで山仕事の音が聞こえて来る。道に迷ったと言う、汗だくのお遍路さんに次の目的地の岩本寺までの道のりを話している間も、竹の音はひっきりなしだから心地がいい。


竹林への道


山出しの機械を置いてある竹林への小道は、先人が繋いできた竹の道だ。虎竹の里には、このような竹を運び出すための小道がまるで毛細血管のように沢山延びている。


虎竹の里山出しの道


画像ではお伝えしにくいのだが、どの道も険しく曲がりくねっているから登っていくだけでも大変だ。


虎竹の里


全国の竹林を訪ねて回ると、竹の種類にもよっては意外と一年通して竹の伐採をしている所も多いけれど、虎竹の里では昔から竹伐りは晩秋から1月末日までと決められている。


虎竹の里、竹林


ここには今年のシーズンから何度も通って整備してきた、しかし竹林の表情はその都度変わる。手入れされた竹林は神々しささえ感じて、いつも時を忘れそうにさえなる。


虎竹伐採


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伐り倒された虎竹が、ずっと向こうの竹林まで見えている。


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虎竹の虎模様の色付きは、土中の細菌の作用と言われるが気温も大きく影響している。近年の温暖化、暖冬で竹の色合いは芳しくない年が続いているけれど、ここの竹はなかなか良い竹がありそうで安心する。


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こんな事を人に言っても信じないだろうが、帰ろうとしたら虎竹たちが「まだ帰るな」と騒ぎだす。今日のブログには間に合わないけど、動画に撮ったからYouTubeに後日アップします(笑)。





普通ではない竹虎本社工場

虎竹


虎竹は虎模様が表皮に現れる独特の竹で、虎竹の里の山々でしか成育しない不思議な竹でもある。工場に来られた方は、皆様沢山の竹材に驚かれるので、自分達では当たり前だと思っていた竹ばかりの工場が普通ではないのだと知った。それでも、近年は竹材の量が圧倒的に少なくなったので、もしかしたらあの当時に来られていたのなら腰をぬかしてしまうかも(笑)などと夢想する事もある。


虎竹


しかし、少なくなったとは言えこれだけの竹材が、しかもこの地域でしか伐採されていない竹が、こうして工場の中で出番を待っているなんて考えたら日本中探してもないのだと思う。もっと大きくて、設備が整った工場など山ほどあるに違いないが、虎竹が立てられている場所はここだけ。それが少なくなくとも、文献が残っているだけでも江戸時代から脈々と続く伝統だ。


チェーンソーのオイルの香りが漂ってきた、今年も、そろそろ竹伐採が近づき、山仕事の準備がはじまりつつある。





鰹と坂本龍馬と牧野植物園の国



高知県には鰹と坂本龍馬の他にも、この土佐の風土と文化が生み出した日本唯一の虎竹がある事を知って欲しくて、その想いが強くてYouTube動画まで製作してしまった。動画のバッグに流れるのは高知で活躍するシンガーソングライター江口美香さんに竹虎創業120周年記念で作ってもらった「まっすぐ~虎竹の里~」。竹虎にお電話頂いて保留になった時にもかかる曲で、何とバックコーラスに社員・職人が全員参加したという曲だ(笑)。


牧野植物園に虎竹移植


そして、今年はNHK朝ドラで大注目されているから、高知なら鰹、坂本龍馬、牧野植物園だろうか。実は、元々高知県に観光に来られた方にオススメする一番の名所は桂浜でも龍河洞でも播磨屋橋、四万十川でもなく自分は牧野植物園をお教えしてきた。都会から来られた方には特に大好評で、散策しているうちにあまりに心地が良いので飛行機の予約を最終便に変更して帰ったよと、喜んでいただいた事もある。


牧野植物園、虎竹移植


そんな牧野植物園には、虎竹命名の縁があって20数年前に虎竹を移植させて頂いている。ところが、虎竹の里以外では虎模様の付かない不思議な竹は、やはり牧野植物園でも思い通りに育っていない。そこで昨年末に新たに場所を用意いただいて移植させてもらった。




この時の虎竹移植に密着したYouTube動画があります、よろしければご覧ください。


博士の虎竹炭クッキー


さて、牧野富太郎博士の生誕160周年を祝って虎斑竹のスペシャル竹炭を使った、博士の虎竹炭クッキーがようやく焼けました。近日発売予定です、こうご期待!


虎竹炭クッキー


食べた社員の表情で、クッキーの味が分かります。





鰹と坂本龍馬の国

竹虎四代目(山岸義浩)、YOSHIHIRO YAMAGISHI、no bamboo no life


コロナが収まって沢山の観光の方が南国土佐に戻って来て頂けるようになった。まさに高知だけに戻り鰹のような勢い?だろうか。特にNHKの朝ドラ「らんまん」で注目を集めている牧野植物園などは既に昨年末からお客様が増加傾向だったけれど、遂に先月は月間新記録だったようだ。


大正市場、竹虎四代目(山岸義浩)


さて、そんな高知の玄関口である龍馬空港には、鰹の一本釣りで有名な中土佐町久礼の大正市場にある田中鮮魚店の大将、田中隆博さんの等身大パネルや、顔出しパネルが設置されていてお客様を出迎えている。高知と言えば全国の方々誰に聞いてみても、やはり鰹なのだ。実は自分も小さい頃は、毎日の食事はもちろん何かと言えば鰹だったので「またか...」とあまり好きではなかった。新鮮な魚をタタキにする事はないので、ほとんど生の刺身で頂いていたが、あの分厚い切り身とモチモチ感に若干うんざりした事さえある。今にして思えば恵まれすぎている(笑)。


坂本龍馬、竹虎四代目(山岸義浩)


そして、高知は坂本龍馬である。観光にお越しになられて桂浜の龍馬像をご覧になられない方などいないのではないかと思う。太平洋に向かって建っている姿は何度見ても荘厳だし、もし初めてのファンの方なら感動せずにはいられない。


虎竹、竹虎四代目(山岸義浩)YOSHIHIRO YAMAGISHI


しかし、何にか忘れてはいないだろうか?鰹と坂本龍馬の国にも、それらに負けない日本に此処だけの虎斑竹がある。鰹の泳ぐ太平洋の潮風が模様をつけるとの説もある不思議な竹であり、龍馬の時代にも土佐藩山内家に年貢として献上された由緒ある竹、今や全国に知れ渡った世界的植物学者、牧野富太郎博士が命名した竹なのだ。





第73期の新年度の虎竹はじまる

虎竹の竹林


竹虎は明治27年の創業で、竹の商いをはじめてから129年となる。こうして長く竹の仕事を続けさせて頂けているのは、いつもご愛顧いただく皆様方のお陰だ、本当に心から感謝したいと思う。創業した大阪天王寺から日本唯一の虎竹成育地である高知県須崎市安和に拠点を移し、製造量の増加と共に株式会社として立ち上げてから今期で第73期を迎える事ができた。今日は、その一日目である。


虎竹


和傘に使う竹材の取り扱いから竹材商としてスタートし、虎竹に魅入られた初代から今にいたるまで竹の世界も様々な変遷があり、自分達の会社も大きな時代の波のうねりの中で右往左往を続けている。


虎竹


長い社歴も変化の連続だったに違いないが、これからは更にスピードを増して全てが変わり続けていくのだろう。目が回りそうなほど早い流れを目の前にする度、ずっと変わらない虎竹を手に取り先人に問う。そんな一年のはじまりだ。





神木隆之介「鉄の骨」

 
鉄の骨


あまりテレビを観る事はないが、たまたま腰をおろして触ったチャンネルに「鉄の骨」が映っていた。人気小説をドラマ化したものだそうで、公開された当時は全く知らなかったのだが、主役の神木隆之介さんは来春から放送されるNHK朝ドラ「らんまん」で主人公を演じられるので、ずっと注目していた。そこでちょっと...と思ったが最後、あまりに面白いので結局最終話まで堪能してしまった(笑)。


牧野植物園


「らんまん」のモデルとなっているのは高知県出身の世界的植物学者である牧野富太郎博士だ。明るくユニークな牧野博士を神木隆之介さんなら最高に面白く演じてくれるのではないかと今から本当に楽しみにしている。


日本唯一の虎竹


もちろん、自分が高知県民であるという事だけではない。実は何を隠そう日本唯一の虎竹の命名の父は牧野富太郎博士だ。その縁もあり建築家・内藤廣さん設計で20数年前、高知市五台山にリニューアルオープンした牧野植物園には虎竹を移植していて当時は毎月のように訪ねて行っていた。


虎竹の里


虎竹は江戸時代から美しい模様の竹と珍重され、年貢として納められて来た歴史がある。代官が「哀れむべき浦にて候」と書き残すほど農地が少なく、収入のなかった地元にとっては、まさに地域の宝として大切に守られてきた。しかし「コチク」「モンチク」「コハンチク」など呼び名すら統一されておらず、どんな竹なのか植物学的な事は全く解明されていなかった、そんな竹に光を当ててくれた博士の功績は計り知れない。




牧野富太郎博士と虎竹と

マキノ缶


高知県出身で「日本の植物学の父」と言われる牧野富太郎博士は生誕160年の節目でもあり、来春から始まるNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公でもあるので注目が高まっている。先日、たまたま羽田からの飛行機で隣の席になった方は、世界の名だたる有名ブランドとコラボしたお菓子を展開されている凄い社長さんだった。話の中で、近日発売予定である牧野博士のクッキー「マキノ缶」を見せていただいた。タブレットの画面からも色とりどりの容器とお菓子が楽しさを感じさせてくれてワクワク心が躍った。


高知新聞掲載牧野富太郎博士クッキー


全国に先駆けて高知の蔦屋書店にて販売を開始すると聞いていたので、すぐに買いに行ったが現品の並んだ売り場は機内で感じた高揚感以上にハッピーな気持ちにさせてくれる。高知新聞に掲載された写真からもお分かりいただけるように、思わず笑みがこぼれるようなお菓子たちだ。


それらを見ながらふと考えた、自分はできる事はないだろうか?


日本唯一の虎竹


土佐虎斑竹は何を隠そう牧野富太郎博士の命名だから、実は自分たちとも浅からぬ縁がある。もしかしたら竹虎初代宇三郎とはどこかで出会っていたのかも知れないと思うくらいだ。その理由は話だしたら長くなるので今朝は割愛させてもらうが、とにかくこの節目に自分たちにしか出来ない事をするべきだと思うようになった。


虎竹の里、竹虎四代目(山岸義浩)


出来る事を思い当たるのに、そう時間はかからなかった。虎竹の里から牧野植物園には博士との事もあって虎竹が数株移植されている。虎竹は不思議なことに虎竹の里以外で育つ事のないと言われていて、今まで全国各地に移されてきたが期待するような成果は上げられていない。さすがの牧野植物園でも同じで、どうも元気な姿でないことが日頃から気にかかっていた。




竹虎YouTubeチャンネルでも紹介しているけど、弱々しく虎竹特有の色づきもなく、シラクモやテングス病と虎竹の里の竹林とは大違いだ。そうだ、虎竹をもう一度移植させていただく事はできないか?これなら自分たちにしか出来ない事だ、元気な虎竹を改めて移植させてもらえれば来春以降沢山の方が園を訪れた時にも美しい虎竹をご覧いただけるに違いない。


油抜きで生まれる虎竹の輝き

 
日本唯一の虎竹


虎竹茶を飲まれた方は自然な甘い香りに驚かれるけれど、竹虎の工場に来ると更に同じ甘い香りに気づかれると思う。ガスバーナーで油抜きの加工をしていると仕事場の入り口に入った瞬間に香ってくる。いつだったか、初めての場所で車から降りたら竹の香りがして、高い塀の向こうに竹屋があると確信した事があった。それくらい特徴的な香りなのだ。


虎竹油抜き


虎竹


炎によって磨かれた虎竹の輝きは、元々の竹が持っていた油分。竹林に生えている時には表皮部分を淡竹ならではのロウ質が覆って白っぽく見える虎竹が、まさに本来の自分らしさで光だした瞬間だ。


虎竹、tigerbamboo