
2026年、遅い新春のご挨拶
30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」を、ご購読の皆さん、明けましておめでとうごいます!睦月も終わりに近づいてからのご挨拶なので、本当に随分と遅くなりました。いつもご愛顧いただく方々からは、あまりに長い間プログの更新がないので、ご心配のお声も頂戴していました。ご迷惑をお掛けいたしまして申し訳ございません!こんなに長い間、ブログを書かずにいたのは十数年ぶりの事です。

openelective(短期集中型のデザインプログラム)
どうして、今回のような事になっていたたかと言いますと、実はご存じの方もおられるかも知れませんが、インドにあります国立デザイン研究所(National Institute of Design)のopenelectiveというに短期集中型のデザインプログラムにお招き頂いていたのです。出発したのが、お正月3日の朝一番の飛行機、それから19日(月)に帰国するまで結構長い間の渡印でした。

初めてのインドという事もありましたが、何よりNIDの事やopenelective(オープンエレクティブ)の事も深く知らないまま、竹の事なら何とかなるだろうと、ノコノコとやってき来たのです。けれど、NIDがインドでも国家重点機関として指定された最高峰の国立デザイン大学であり、各国から学生や研究者が集まる世界的にも有名な教育機関で優秀な学生さんばかりだと聞いていましたので、何かしら得るところがあるだろうとワクワクした思いがありました。

NIDの緑に囲まれたキャンパス
NID(National Institute of Design)のキャンパスは、インドらしいエキゾチックな美しい植物がいたるところに植えられていて和ます。凄いのはこの緑に囲まれた中に、犬、猿、キジ...まるで桃太郎のお供のような動物たちが普通に自由に暮らして(?)いることです。昼間からベンチの上で熟睡している犬を見て、私たちはこのような多様性を大切にしていると学生さんは話してくれました。

ロゴの壁(Logo Wall)
赤いレンガの壁沿いに歩いていくと「ロゴの壁(Logo Wall)」と呼ばれる、NIDでデザインされたSBI(インド国立銀行) の鍵のマークや、ITI(インド電話産業)など有名なグラフィック作品が数多く展示されています。さすが、特別な才能の集う場所です。

NID学生寮
広大なインド各地から学生さんが来られています。聞いたらビックリするような倍率を乗り越えて、しっかりした目的意識を持って入学される皆さんには、敷地内に立派な寮も完備されています。奥に入ってみるとバスケットコートがあり、ランドリー部屋や生活感のある雰囲気に、ボクも全寮制で6年間過ごした明徳義塾中高等学校を思い出していました。

イームズプラザ(Eames Plaza)
午後は学生さんたちの憩いの場となる芝生の広場は、イームズプラザ(Eames Plaza)だと案内いただきました。何と、このNIDはボクが若い頃から愛用しているラウンジチェアのデザイナーの提唱で生まれた学校だったのです!ご縁を感じます。

インド国立デザイン研究所openelective開会式
初日は、まず全員が集まっての開会式が開催されます。その後、記念品贈呈や撮影がありそれぞれのコースに別れての2週間がはじまりました。

第11回世界竹会議メキシコ
今回の参加となりましたのは、pravinsinh.k.solankiさんのお誘いがあったからでした。pravinsinhさんとは、2018年8月14日(火)~2018年8月18日(土)の5日間、メキシコのハラパで開催された世界竹会議 (World Bamboo Congress)でお会いさせてもらいました。日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」を、遥々と運び込んで初めて海外で走行させてもらうという印象深い大会でした。
世界50カ国の国と地域から500名もの方が参加する国際会議で、初めて英語で基調講演するとあって忘れられない会議でもありました。45分のスピーチのために半年間練習しましたが、全然でした。英語は勉強しておかねばなりません(笑)。

YouTube動画の活用
そこで今回は、通じない自分の英語よりもYouTube動画の自動翻訳機能を使って、自分たちのしている事や虎竹の事など大まかな事を知っていただくように工夫しました。動画も時間が長くなると退屈するかもと思っていましたけれど、関心のある方はしっかりとご覧いただいています。後からメモなど拝見すると、イラストなど交えて丁寧にまとめていて本当に優秀な方々なのだなあと感心しました。

虎竹油抜き
どうしても虎竹の事は知って欲しいと考えていましたので、油抜きする前の虎竹を用意していました。学生さんの目の前で油抜き加工する事により竹の色合いの変化をご覧いただきます。インドは中国に次いで竹資源が豊富な国で、様々な竹材があるのだと思いますが、今回こちらで拝見した竹は、日本の虎竹や真竹のように竹表皮の美しさを活かすという竹材ではありません。今まで竹を扱ったことのある学生の方にとっても油抜き加工は新鮮だったのではないかと思います。

インドの竹材
竹はイネ科なので、美味しいお米が育つ日本の竹の美しさは世界一だと常々思っていますが、こうして海外に来てみると改めて国内の竹材の素晴らしさ、貴重さを再認識する機会になります。でも、竹には様々な顔があり用途がありますので、インドにはインドの竹材の素晴らしさ、活用方法、強みというものがあるはずです。大きな特徴のひとつは、この身の厚さです。

鉄アレイ?
身が厚いだけでなく、ぎっしりと繊維が詰まっているのでしょうか。とにかく重いのです、短く切った竹端材でも、「これは鉄アレイ?」かと冗談抜きに代用品になるくらいの重量感があります。

アーメダバードの竹屋さん
竹の多い国だけあって、インドには様々な竹を使う工芸品がみられます。NIDにも竹専門の学科があり、独立した建物の中には色々な竹製品、竹細工が資料として飾られていて小躍りしたくなりました(笑)。そうこうしていると、近くの竹屋さんから竹材が届いたと言います。日本の竹とは、まるで違って空洞がなく、重たい木材のような竹ですが、真新しい竹が運び込まれてくると理由もなく嬉しくなって走りよってしまいます。竹があれば、そこから新しい何かが生まれるからです。青空の下で、地面に座り込んで黙々とヒゴを取り、編まれていく籠たち...。かつての日本でも良く見られた懐かしい光景ですが、今でも長い竹材を割ってヒゴにするのには、庭先など室外でする職人もいます。

ズシリと肩に感じた竹の重さ
さて、そんな中、「大切な時間を、どうして竹材に使わなければなりませんか?」このように尋ねられました。本当に素晴らしい感性と温かさをもった皆さんなのに、竹を運び込む職人さんに対する関心の薄さや、竹材に対するリスペクトがあまり感じられません。これは、原竹に触れてもらう事が絶対に必要だと思いました。だから、日頃は重たいものを持つ事もない若い学生さんに、一人一人に竹を担いでもらう事にしたのです。特に伐採されたばかり竹は重たい、これが竹?と思うくらい重い。インド中から集まった優秀な若者たちは、もしかしたら、この先竹を持つ機会は無いかも知れませんが、この時ズシリと肩に感じた重さを忘れないようにして欲しいと思っています。

竹と向き合う
竹に触れる、竹を持つ、竹を切る。竹籠になった竹を軽いとか、しなやかとか言っているけれど本当でしょうか?伐採したばかりの青々とした竹は両手でも持ちづらいのに、白くなって乾燥させた竹は3本の束にしても片手で運べてしまいます。鋭い学生の皆さんは、言葉も通じず、うまく伝えることもできませんけれど、真意は汲み取ってくれたのではないかと思います。
それにしても、国内外の専門家の集まるオープンエレクティブに、お招きいただくままに来させてもらいましたが、こんなに心安らぐ空気感の場所は初めてです。今回の竹ワークショップの準備をする中で、改めて竹の魅力を感じて、何と有難い機会を与えていただいたと感激していましたが、NIDでは想像もしなかった体験の連続です。今思い返しても、どう書いたらよいのか分からないほど教授も環境も素晴らしいです。さらに、竹に向き合う学生の皆さんの熱意と感性には毎日驚きの連続でした。
