驚きの竹照明
昭和の時代は、一般のご家庭でも竹の照明は結構普通に使われていたのではないでしょうか。部屋に吊るすペンダントライトの笠もいろいろと製造されていて、一部は大手電機メーカーさんのカタログにも掲載されていたほどです。カタログに掲載された竹笠を製作する工房も、そんなに大人数のところはありませんでしたので、大量注文がくると毎晩遅くまで竹編みをしたものだと古老の職人さんから伺うこともあります。
そんな竹照明ですが、さすがにこのように凝ったものはあまり見た事がありませんでした。実は、灯台下暗しとはこのことで、この驚くほど作り込んだ照明はかつて祖父が使っていた部屋に吊り提げられているものです。あまり入ることのない部屋でもありますが、小さい頃から普通に見ていて全く気付かなかったというのが正直なところです。室内と一体化して見えていなかったのか、ボクがようやくこの灯りの値打ちが分かるようになったのか、とにかくハッとしました。
本体に使われているのは、京都の銘竹のひとつゴマ竹。均等に入るゴマを見ただけで誰の竹か一目瞭然、清水銘竹店さんのものだと思います。ゴマ竹は自然の竹林でも見かけることがあるのですが、基本的に枯れているので製品にはなりません。そこで人工的にこの竹を作るのですが、この職人技がスゴイのです。ご関心のある方は30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」の胡麻竹の作り方をご覧ください。
そうそう、短い動画もありますのでゴマ竹のことが更に詳しくお分かりいただけます。皆様のお近くの竹林でも、恐らく立ち枯れの竹があるかと思いますので良く観察されてみてください。ゴマ状のブツブツができていれば、それがゴマ竹です。
御簾の透かしに竹枝が!
さて、照明にもどりますが、本体部分に使われているゴマ竹は細い竹のように思います。けれど、ゴマ竹自体は太い孟宗竹なのです。照明本体には小さめの角材に、ゴマ竹を細く幅に割切り貼り付けて製作されてされています。節の位置をしっかり合わせているので、あたかも細いゴマ竹の図面竹か!?とツウを唸らせたかったのでしょうか(笑)。
まあ、冗談はさておき。凄いのは竹材やつくりだけではありません。四方が囲んだ竹簾に注目いただきますと、何と内側に竹枝が仕込まれています。普段は目立たないけれど、灯りをつけると竹の小枝と竹葉が浮かび上がる、いえいえ稈も見えているので、あたかも照明のなかに竹林があるかのよう...見事に再現されているのです。
灯りが入ると部屋全体が竹林に
下から見上げる白竹のあしらいも素晴らしいです、大中小の竹が交差する中に竹の特徴である節がアクセントで効いてます。灯りが入った瞬間に部屋が竹林になるかのような錯覚すら覚える圧巻の竹照明。昭和の時代、竹に生きた先人たちの思いが伝わります、そして当時の竹人の竹への愛着を改めて知るのです。