この世に一つの竹茶碗

竹茶碗


皆さんは、どんなお茶碗でご飯を頂きよりますろうか?焼き物もエイもんですちや。陶器にしろ、磁器にしろ、それぞれ味があって、それほど詳しくも無いですが器によって料理の味も違う気がしますきに。お茶碗ひとつも、こじゃんと大切やと思うちょります。まあ、皆様も毎日の食事の事やき、それぞれの決まったお気に入りのお茶碗がありますろう?自分にも、お気に入りのモノがありますぞね。竹屋だけに、やっぱり竹茶碗


もともと使い始めたのは祖父の知り合いの職人さんが、太い竹根の部分をくり抜いて漆で仕上げ製作しよったものを毎日眺めているうちに、どうしても使いたくなって、ひとつ自分用に頂いたのですが、もう何年になるろうか、手触りの優しさ、独特の軽さ、口あたりの柔らかさ、温もり食卓にコトンと置いた時の微かな心地よい音、渡辺竹清先生に頂いた煤竹のお箸との色合いもまるで、そろえて製作したようにマッチしちゅうので、ずっと使い続けゆうがです。


ただ、この職人さんが仕事をやめられてしもうて、お客様に販売するという事は考えちょりませんでしたが、今、自分が使わせてもらいゆう竹茶碗がダメになった時に、替わりに使えるものがないにゃあと困っちょったのです。その時、たまたまなのですが、現在の竹茶碗を製作していただく職人さんに出会いました。まっこと祖父が空の上から導いてくれゆうかも知れませんぞね。


けんど、自然の竹根をご覧になられた事はありますろうか?竹林でも土の中に埋もれちゅう所ですきに、あまり目にする事はないかも知れませんが、当然ですけんど、形はひとつひとつ全く違います。普段皆様が竹林で目にする竹の幹部分を「稈(かん)」と呼ぶのに対して、土中の幹部分の事を「稈基(かんき)」などと呼ぶがですが、この稈基から細い竹根が、こじゃんと沢山伸びちょります。


竹茶碗は、太い稈基の部分を選んで削り出して製造されます。形自体もそれぞれ竹の個性にあわせてそれぞれ違うがですが、稈基から伸びる細い根をカットして磨きをかけ、その根元の模様をデザインに取り込んでいますきに、同じ竹茶碗でも見た目の印象が別物のように違って、まっこと同じものが二つのない、この世にたった一つの茶碗ながです。


祖父の頃には、茶道具の一つとして創作されたものではないかと思いますが、お茶をたしなまない田舎者の自分ですきに日常使いできる、ご飯茶碗として愛用させてもらいゆうがです。竹箸に竹茶碗、竹の箸置きふとした時に愛着が深まるのを自分でも感じよります。


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