鰻ウケの熟練職人

鰻うけ


前に職人の仕事のスピードの話しをさせていただいた事があります。昔から叩き上げで来られている職人さんは、兎に角一つでも多くの竹編みをと毎日仕事されてきちょります。黙っていても仕事がいくらでもあったと言うような古き良き時代を知っちゅう世代でもあるがです。


実はちょうどこの年末の事になりますけんど、鰻ウケを100本ご注文頂く事がありましたぞね。竹虎の工場の裏手を流れます川も自分の小さい頃は水量が豊富で、このウケを仕掛けて鰻をよく捕ったものでした。まっこと都会の方にお話したらビックリされるかも知れませんが、本当に小川とも呼べないような幅が数十センチくらいで浅い流れの所などにも夕方にウケ仕掛けておいて、早朝に来て持ち上げると重いくらい鰻が捕れたりしよりましたぜよ。


ところが、天然の鰻はどんどん少なくなる一方でカワウソがおったという事で有名な新荘川や、仁淀ブルーで注目されちょります仁淀川、最後の清流四万十川など自然の残る高知の主立った大きな河川では今でも少しは使われる事があるかと思いますが、虎竹の里では現在鰻ウケを使う方はほとんどおりません。


当然昔のように大量にウケを編む仕事はなくなっちょりますが、さすがに昔の職人さんは底力が違いますぞね。久しぶりでも、やるとなったら必要な竹を用意して一挙にバリバリやりはじめるがです。曜日も時間も関係なし、週休二日など若い頃にはなかったぜよ。と、言わんばかりのモーレツぶり。竹職人とは、こうながやにゃあと感心してしまうような迫力で次から次へと編み込み仕上げていくがです。忙しく働く職人は格好がエイが違うぜよ。世間話をしながら、笑いながら、手を一時も休めず仕事を続ける姿は頭と手が別々の人のようですらあるにゃあ。久しぶりにエイものを見せてもらいましたちや。


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