台風の思い出


竹虎工場


今度の大型台風もお陰様で、これという被害もなく通り過ぎてくれましたぜよ。昨日の早朝には風雨が強まってきちょりましたので、どうなる事かと思いよりましたが、まっこと、ありがたい事やと感謝しちゅうがです。けんど、台風のニュースを見る度に思い出す事があるがぜよ。


「嵐の前の静けさ」そんな言葉がありますけんど、まっことその通り、まっくろい雲が垂れ込めて、ムッとするような湿度の高さを感じます。雨もふらず、風も吹かず、異様な静けさの中、だんだんと近づいてくる台風の前は社員も、家族も、皆がそろうて工場の片付けをして台風の準備をしよりましたぜよ。


自分が小さい頃の竹虎の工場は、払い下げられた電柱の柱にトタンを打ち付けて建て増し、また建て増しで作っていったツギハギだらけのボロボロの工場やったがです。雨が降ったら驚くくらい勢いよく滝のように雨漏りする所もある。風が吹いたら剥がれかけたトタンがバタバタ音をたてる所もある。そんな薄暗い、古い竹工場やったぞね。


けんど、長い竹を沢山置いちゅうので敷地だけはこじゃんと広い。その広い工場を、60名もの社員全員で回って台風の準備をするがです。一番強い風の入ってくる海側には束ねた竹をズラリと並べて、太いロープでしっかりと縛り上げよりました。工場の中を片付けて、奧からトラックを詰めて停めていきます。飛んでしまいそうな板や小物はまとめて倉庫の中に入れる。外に山積みされちゅう竹にはブルーシートをかけて、何回もロープで巻いて重たい枕木を何本ものせる。カッパに長靴姿の職人さんが、雨に打たれながら作業しゆうのを遠くから眺めよりました。


小さかった自分は何の手伝いもできなかったけんど、ただならぬ大人達の雰囲気に何かしないと思うて、日頃あまり使っていなかった壊れかけた階段を上ったがです。そして、片隅が割れたガラス窓に、当時よくあったコンクリート製の瓦を立てかけたがぜよ。


台風は怖かったけんど皆が一丸となっちょった。壊れかけたような竹工場ではありましたけんど、ここを全員で守っていく、そんな気概を感じて武者震いがした。「来るなら、来い。」何の力もない小さな自分がそう思うた。作業が終わって大人達が一人もまた一人と帰って行く。白いランニング姿から太い腕をだしたあのおんちゃんも、いつもお菓子をくれる優しいあのおばちゃんも、濡れながら急いで車に乗り合わせて、おらんなった。


波の音が、こじゃんと大きくなってきた。だんだんと風の強くなる海の方をじっと睨む。父親の後ろ姿は何と大きいがやろうと思うた。あれから何十年経ったろうか?ずっと忘れちょったがぜよ。自分はあの時から竹虎四代目やったに違いない。













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