インターンシップ2014年~工場編

竹虎本店前


竹虎本店を背にして山側をみたら、すぐそこには虎竹の古里である焼坂の山が迫っちょります。右手の山々から左手の山々は少しだけ深い。虎竹の里の谷間の奧に尾根が伸び、そこで繋がっちゅうがですが、不思議な事に、この谷にだけ虎竹は成育するがです。


この谷間の間口は1.5キロ程度。頂上までは虎竹が成育するのに、峠を越した向こうには、竹が全くと言うてエイくらい無くなっているのです。いつも、ここで皆様にご説明させていただく度。自分の頭に思い浮かぶのは高知県の産んだ世界的植物学者、牧野富太郎博士の事ながですぜよ。土佐虎斑竹という命名の父でもあられる牧野博士の研究資料を、高知市五台山にある牧野植物園で見る事ができますけんど、ここ虎竹の里の谷間だけ他の地域と土質が全く異なるのを見て、鳥肌が立ってそのまま動けなくなったがです。この土質の違いが原因やろうか?自分の事を「植物の精」と呼ばれよった博士が、この地に来られて虎竹をご覧いただいた、研究してくれた。そう思うだけで嬉しい事やと、いつも思うがです。


そうそう、ついでですけんど、その後、牧野博士も虎竹をご自分の庭園に移して観察されたようですが、やはり虎の模様は付かなかったと記録に残っちょります。世界の牧野富太郎博士でも虎竹の謎は解けんかった言う事ですろうか。


竹虎工場インターンシップ生見学


竹には孟宗竹、真竹、淡竹(はちく)と、この3種類くらいが、一般的に竹と言われて皆様が真っ先に思い浮かべるものですろう。その中で、虎竹は淡竹の仲間で表皮に白く粉をふいたように見えます。つまり、この不思議な虎模様は自然のままやと隠れちゅうがぞね。それをガスバーナーの高熱を加えると竹の油分と共に、美しい虎模様が浮き上がるかのようにクッキリと見えてくるがぜよ。


ここでお話させていただく時にも思い出す事がありますぞね。それは初めて入った東京のホテルにある喫茶店での事。ウェイトレスさんが持って来られたレシート入れが、何と、まぎれもなく虎竹の筒やったがですぜよ!こじゃんとビックリ仰天して一緒におった人に話ましたけんど、こんな大都会のど真ん中にある虎竹も、必ずこの場所で化粧...おっと化粧言うのは、たとえで油抜きの加工の事ですちや。まさに、必ずここを通り加工され運ばれて行ったもの日本中の虎竹が虎竹として、生まれ変わる重要な作業場であり、虎竹の「聖地」と呼んでもエイ場所ながぜよ。


竹虎職人


インターンシップの学生さん達には、エビラを製造している工程も見学いただきましたぞね。毎年女性の方も多いので土用干しの事なども聞いてみますが、やっぱり最近の若い方は梅干しを漬けるような事はないようで、知っている方は、ほとんどいないのです。


けんど、そんな若い方も素晴らしい心を持っちょります。ただ、今の日本の生活の中で、竹のある暮らしを忘れているだけ、そんな風に思うのは、たとえば竹虎に来るようになって、国産の竹ざるを知り、梅干しの土用干しの事を知ると、その年から梅干しを漬けたくなって、はじめる方もおられるがです。


自分の家では小さい頃から、このような干しざるは、普通に何枚もあって、梅干しでなくとも干し大根やニンジン、そして椎茸など色々な野菜干しに常的に使いよりました。最近では雑誌などでも、野菜の活用方法として紹介されちょったりして、少しは古き良き時代の伝統が見直されゆうに思い嬉しゅうなるがです。


竹虎職人


職人が、ちょうど大きな袖垣を作りよりました。淡々と進む作業を見学した後、せっかくの機会です。学生の皆さんに色々と質問をしてもらいます。会社では朝礼や全社会議など人前で報告しなければならない事もあります。実は、手を動かす事は得意でも、口の方はそれほどでもない職人が多いのです。しかし、若い学生さんを前にすると、日頃された事のないような新鮮な質問があるせいか、結構色々深い話しまでしてくれてまっこと有り難いがです。


袖垣製造


袖垣という日頃目にすることのない竹製品作りですが、単純に見えて思いの他手のかかる仕事なのです。竹素材も、もちろんそうですが、それぞれに使われるパーツも内職の方や山の職人さんの力をお借りして、竹虎の工場で最後の完成品にしていくのです。一つの竹細工を例にとってお話させていただき、出来上がるまでをイメージしてもらえるたら今まで何気に見ていた多くの物達が、ちっくと違う顔に見えてきたりするのではないろうか。そんな事を期待して工場見学を終えたがです。


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