小菅小竹堂さんと日本唯一虎斑竹

小菅小竹堂作花器


小菅小竹堂さんという竹作家の方を知ったのは昔の事ではありません。家系図を拝見させていただくと、竹工芸家の小菅竹堂(ちくどう)さんを父にもつ竹芸一家のお生まれで、7歳の頃から竹細工をされていたようです。産業工芸デザイナーとして、また、戦後からは新潟県竹工芸指導所技師として、竹工芸の普及に尽力され、日展などにも入選されるなど、竹芸士として活躍されて素晴らしい作品を多数残されちょります。


この華々しい経歴と作品を持たれている小菅小竹堂さんは、幻の作家とも呼ばれることもあるそうですが、海外の美術館やコレクターの方にも評価が高く、主だった大作が日本で見られるのは最後だと聞いて、息子さんの小菅秀顯さんが開催される「一日だけのミュージアム」に参加させていただく事にしたがです。


小菅小竹堂作腕環


室内に一歩足を踏み入れて、まず一番に目に飛び込んでくるのは、アメリカに運ばれて行くという逸品の竹編みかと思いきや、やはり日本唯一の虎竹を使うた作品達ながぞね。小竹堂さんは佐渡に生まれられ後に神奈川県葉山町に移り、工房を開かれちゅうがですが2003年にお亡くなりになるまで、遠く四国や高知とは縁があったようには思えません。けんど、それなのに虎竹を使うた作品があちらこちらに見られます。残念ながらお会いした事もない竹の大先輩であり巨匠であられますが、虎模様の美しさを認めてくれちょったかのようで、まっこと嬉しくなるがです。


「おまんらあ、凄い方に使うて頂いて幸せやにゃあ」


そう心でつぶやきながら見て回る中には、花籠や盛り器だけでなく意外に多くのアクセサリーもありますぞね。拝見させていただいたのは、小竹堂さんが創作された物の中のほんの極一部かと思いましたが、それでも、これだけ多種多様な作品を編み出せるのは、竹工指導所技師としての経験があるように思うがです。様々な竹を知り、竹編みを知り、またユーザーを知った。そんな数少ない竹芸士のお一人だったように感じるがぜよ。


小菅小竹堂作花器


堅牢さと高級感のある竹肌を併せ持つ鳳尾竹で編まれた掛け花籠の中に、虎竹のオトシが入れられちょりました。通常オトシに使う場合には竹表皮を薄く剥いで使うものですが、竹の見た目を考えてそのままにしちゅうがですろうか?


丸竹で使うと割れる事の多い竹ですが、この花籠のオトシは割れちょりませんでした。竹にも個性が大いにあって、割れやすいもの、割れにくいもの。いろいろありますが、こうやって年を重ねてきているのであれば、小菅小竹堂さんの眼力か、モノ作りへの執念か、いずれにせよ圧倒される迫力の展示に暫く目がまわるような錯覚を、ずっと押し殺しながらの鑑賞やったがです。


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