黄門様の印籠にように

虎竹名刺入れ


さて1月も今週だけになりましたちや、まっこと早いですにゃあ。ついこの間、年が明けたばかりと思っていたら...これは2015年もうかうかしていたら何もしない間に終わってしまいそうぜよ。


おっと、そう言うたら昨年の事で思い出した話しが一つあるがです。18年ぶりにニューヨークに行った事は何度もお話させてもらっています。ところが、せっかくの世界一の大都会にいながら、自分はデパートはじめショッピングには一度も行っちょりません。ええっ!?本当?と、思われるかも知れませんけんどマジです。田舎者ですのでファッションにも何にも疎いし、そもそもブランド品もあまり好きではないので、どうしても行きたいと思うような所が無いのです。


さて、そんな面白くも何ともない男ですが、何があっても行きたい、いや行かねばならないお店が一つだけあるがです。その店は、あの有名な映画の題名にもなっちょりました。誰もが知る高級宝石店、日本の百貨店にも沢山お店が入っていますが、この街にその本店があるのです。そのお店こそ何を隠そう渡辺竹清先生が竹編みされたパーティーバックを販売されていたという店なのですちや。


18年前に来た時にも、あまりに場違いな感じに圧倒されつつ、きらびやかな店内を恐る恐る入って一周しただけで帰ったのですが、今回は二回目ですので少しなんか違った事がないかにゃあ。そう思いながら入ると、正面に立った大柄な男性に呼びとめられたがです。


「何か、お探しのものがありますか?」


竹虎四代目


なるほど、少し風変わりなお客だと思われたかも知れませんぞね。なにせ竹虎前掛けは当然やけんど、首にはタオルを巻いちょります。広い店内にも、さすがにこんな格好の人はいませんでした。後ろに視線を感じて振り返ってみると、入り口に立っていたもう一人のスーツ姿のイケメンも何やらコチラに熱い視線を落としちゅうではないですか!?


「風変わりを通り越して不審者のように思われちゅうろうか...!?」


焦って「これはイカン!」とりあえず自分が何者か説明せねば。そう思うてサッと内ポケットから虎竹名刺入れを取り出しましたぜよ。


「It tiger bamboo in japan.only one in the world!!!」


文法的にどうか分かりませんけんど、こう言いました。ハッキリと大きな声で言いました。そしたら短い沈黙のあと、その警備のチーフらしき方は少し待っていてください、そう言うて立ち去って行ったのです。とにかく大きな身体の方がいなくなって安堵しましたぞね。ようやく辺りを見渡す余裕もできてキョロキョロしながら待っていると、ニコニコ笑顔で帰ってきましたちや。手には店内の案内パンフレットを提げていました。


「良いお買い物を(と言うたと思う)」


おお、さすがは日本唯一の虎竹ぜよ。まるで水戸黄門の印籠のようではありませんかっ!?右手に名刺入れを、しっかり掴んだまま店内の奧に向こうて歩いて行ったがです。


さて、その後のお話です。頂いたパンフレットを見てビックリしましたぞね。実はこの店舗の売り場は一階だけではなかったのです。前に来た時には、そんな余裕も無いので全く気付きませんでしたが、何と正面奧には上の売り場に行くエレベーターがあるがぜよ。確か四階までありましたろうか?最上階はお得意様専用フロアのような感じでしたが、三階、二階とそれぞれ個性的な宝飾類が展示されていました。貴金属と異素材を組み合わせた一点物のような作品も並んでいます。


なるほど、一階には指輪やネックレスなどは沢山ありましたが、渡辺先生の作品のようなバック類などは見当たりませんでした。つまり、パーティーバックは一階ではなく階上のこのような又雰囲気の違う売り場で販売されたものだと、この時にやっと始めて知ることが出来たのでした。今思うたら、それを教えてくれたのはあの入り口の警備の男性のお陰。そして虎竹製の印籠のお陰という事ですろうか。


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