一生涯一職人

篠竹細工


「篠竹の材料ならタップリあるよ」


そう言うて笑う職人さんは、まっこと格好がエイがぜよ。篠竹は真竹や孟宗竹とは違い笹の仲間で直径もボールペンか少し太いくらいの大きさにしか成長しない竹ながです。昔は沢山伐採されていた女竹(メンチク)のように節間が長く、節高も低く、真っ直ぐに伸びちょって使いやすそうな素材ではありますが高さが2~3メートル程度にしかならない竹でもあるのです。


11月~12月末くらいまでに材料集めのため自ら山に入り伐採するのですがこれくらいの大きさの竹なら伐るというより刈り取るという表現の方がシックリくるのかも知れませんにゃあ。


篠竹


刈り取られた篠竹は広い納屋のあちらこちらに束にしてビックリと積みこまれちょります。なるほど、これなら十二分に材料はあるなあと感心しますぜよ。普通、真竹、孟宗竹等などは品質のために3年以上経ったものだけを伐採して使用するがです。特に虎竹は淡竹(ハチク)の仲間ですが3年程度立たないと虎模様の色付きがないので3~4年竹しか伐採しちょりません。


ところが、こちらに積み込まれている篠竹はすべて新竹なのです。今年の竹を刈り取り3ヶ月程度こうして乾燥させたものは素材として竹編みに使っていくのです。伐採期間の違いは竹か笹かで異なっちょります、同じ笹の仲間のスズ竹なども1年竹を刈り取って細工に使用されゆうのです。


篠竹細工


籠の口巻き用に、細い木材を丸く曲げ込んで使う細工などもあるのですが、口巻き用の材料も沢山の籠を編む事が出来るようにズラリと作られ用意されちょります。篠竹細工は、かっては東京にも産地があったほどの竹細工です。素材が身近にあり、それだけ人々の暮らしに浸透していて需要も多かった細工なので、畑仕事のできない冬場の内職として受け継がれてきた仕事でもあります。


篠竹底編み足付きざる


篠竹は根曲竹などと同様に素朴で無骨な感じが好きなのですが、何というても強さとしなやかさが魅力ぞね。残念ながら、昔から続く手仕事は時代と共に少なくなりつつありますが、このような豊富で美しい竹材と若々しい表情の職人さんを拝見させてもらうと何やら自分の方まで、また新しい年も頑張っていこう!そんな覇気を頂くがです。


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