土佐の山間に蓬莱竹

ホウライチク


「自由は土佐の山間より出づ」と言われるが、その高知の中山間地域は急斜面が多い。とにかく山々がそそりたって険しく、谷間を縫うように流れる川沿いに、曲がりくねって奥へ奥へと進む細い道は、遂に未舗装の道路に変わる。ガタゴト言わせながら車は埃を巻き上げながら走り続け、やがて脇の小道を下りて行く。


そこにあったのは大きな蓬莱竹(ほうらいちく)、淡竹や真竹と違って地下茎が横に伸びることがなく、根元が詰まった状態で大きくなる。高知の古老の職人はシンニョウダケとも呼ぶが、このような竹が生えていると言う事は、この山深いここにも人の暮らしがあったという事を感じる。


護岸用の蓬莱竹(チンチク)


雨が多く河川の増水に悩まされてきた地域では、護岸にこの蓬莱竹を植えている所が多い。川の流れのきつくなるカーブの所にポツリと生えていたりするから、小さい頃から不思議に思っていたけれど、実は先人がわざわ植えていたのだ。株立ちで、その場所から広がったり動く事もないので、山の境界線としても役立ってきた竹でもある。




YouTube動画でご紹介しているように、人の命や財産を守り続けてきた竹であると同時に、節間の長さとしなやかな材質から竹細工にも重宝されてきた。


桜箕、日置箕


たとえば、竹虎で桜箕としてご紹介させてもらっていた日置箕。細く取った蓬莱竹の竹ヒゴに桜皮を挟んで編み上げていくけれど、節間の長さと粘りのある性質ならではの緻密さと美しさがある。


寿司ばら


寿司バラには、孟宗竹と真竹と蓬莱竹が使われている。名前の通り、バラ寿司を作る道具だけれど、網代編みの部分には節間が長い蓬莱竹を用いるので、滑らかな編み目の上でバラ寿司も美味しく作る事ができるという訳だ。鹿児島や宮崎県で使われていた寿司バラ、今でも使っている方がおられるのだろうか?乾燥を防ぐための蓋まで付いているのだから、凄いとしか言いようがない。



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