国産山葡萄の桝網代編み手提籠バッグの修理について

国産山葡萄手提げ籠


竹虎では、全国の皆様がご愛用いただく竹籠などの竹細工の修理を賜っております。実際、自分たちが製造したものでないと修理以来を受け付けていただけない所が多いようで、手直しをお断りされた方々には大変喜んでいただいており、ボクたちも本当に嬉しく思っています。


最近、多くなっているのが竹素材の製品だけでなく、山葡萄手提げ籠バッグやアケビといった自然素材の手提げ籠バッグです。これからの籠は、素材が丈夫で数十年お使い頂く方が普通なので、長くお手元にある中で、どうしても傷みなどが出てしまいます。今回も、そんな山葡萄の手提げ籠が修理に届きました。


国産山葡萄手提げ籠バッグ持ち手修理


箱から取り出した山葡萄の手提げ籠を見てアッと声が出ました。この籠は、竹虎が限定で販売させて頂いた、ものでした。特徴的なのは普通の網代編みでなく、桝網代とよばれる枡形の模様に編みこまれた手提げバッグだったのです。持ち手部分が少し細めだったので、内側の芯が折れてしまっていました。


国産桝網代編み山葡萄


近年は、海外製品からの技巧的な編み込みのものか多く、ボクなど昔ながらの国産山葡萄しか知らない者にとっては少し違和感を覚えていますが、この桝網代は無骨とか野暮ったいと言葉が似合うような、決して整いすぎていない美しさがありました。型にそってキチンと編み上げられた、洗練された籠とは一線を画しています。専門の山葡萄職人というよりも、地元の山で採れた山葡萄の蔓を、農閑期にコツコツと編み上げた、そんな素朴さを感じていた籠でした。


持ち手は取り換えねばなりませんので、もちろん、それはあります。けれど、とにかく修理に戻ってきた桝網代編みの山葡萄の成長ぶりに目を見張ります。野葡萄の樹皮は、使い込むほどに人の手脂などで、ゆっくりと馴染んで漆黒のツヤを帯びていきますが、それもご愛用の方次第。きっと毎日手元に置かれて使い込まれている幸せな籠だと感じます。


山葡萄セカンドバッグ


ボクも母から譲られたセカンドバッグを愛用していますが、まるで黒革のような質感と黒光りです。この黒光りこそ、山葡萄の真骨頂なのですが、このツヤが、最初はぼんやりとしていた桝形の網代編みの模様を、くっきりと、鮮やかに、しかし優しく、浮かび上がらせています。


国産桝網代山葡萄手提げ籠バッグ持ち手


現在の山葡萄の手提げ籠バッグは、ご存じの方もおられるかと思いますけれど、輸入品も含めて非常に高価なものになっています。ものによっては数十万円もの作品のようなモノまであります。ところが、この山葡萄買い物籠バッグは、驚くほどお求めやすい価格でした。なのに、お客様が愛情こめて数年お使いいただくと、このような大変身を遂げるのだと感激します。


国産山葡萄手提げ籠バッグ


何とも言えない深みのある風合いを醸し出し、まるで長年連れ添ったパートナーのように、お客様と共に時を刻んできたに違いありません。暮らしの風景がにじみ出る買い物籠バッグなどと言えば少し大袈裟かも知れませんが、傷みやすい底の四隅には革で補強をされているあたり、本当に大切にされているのが伝わってきます。


国産山葡萄手提げ籠バッグ


現代社会においては、効率性や均一性が重視されてきました。けれど、だからこそ、手仕事の温かみや、自然素材の持つ豊かな表情が、より一層尊く感じられるのではないかと考えています。竹細工も同じで、使い捨ての文化とは対極にある、まさにサステナブルな逸品たちです。日本の豊かな自然の恵みを最大限に活かし、永く使えるものを作る。それは、先人が長年大切にしてきた手仕事の精神そのものです。また、この桝網代に会えるだろうか?30年、40年、もしかしたら50年先でしょうか(笑)。




こちらのYouTube動画は、同じタイプの桝網代編みの買い物籠バッグです。手直しの仕方も今回とは少し異なっていますが、よろしければご覧ください。



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