
竹皮とは何か?
そもそも竹皮とは何だかお分かりでしょうか?そうです、タケノコが成長していく中で一枚また一枚と脱ぎ落としていくのが竹皮。竹になっていく稈に引っ付いた竹皮は、竹が傷むので剥がしてはいけません。自然に下に落ちた皮だけ拾い集めますが、竹は一日に1メートル以上も伸びることがありますから、シーズンになると一日に何度も竹林に足を運ぶのです。これが案外大変です、ちょうど梅雨時のジメジメした時期と重なっていたりして、山道を登って行き竹林に入り竹皮を集めるのも重労働ですし、天候を見ながら竹皮を乾燥させるのにも苦労します。案外何気に見ている竹皮一枚でも、職人さんの仕事に思いを寄せていただきますと、決して簡単に生産できているものではありません。

竹皮の抗菌力
皆さんに一番身近な使い方と言えば、やはり竹皮でおにぎりを包んだり、チマキにしたりと食べ物の包材としての使い道だと思います。昔は抗菌性など調べる事もできなかったと思います、それなのに腐りにくい天然の力を見抜いた先人の知恵は偉大です。触ってみるとお分かりのように、それほど厚みのある素材でもないものの、思うよりも強く破れにくいので重宝されてきました。

真竹・淡竹の竹皮の違い
竹皮草履に多用するのは真竹ですが、職人さんによっては編みはじめには柔らかい淡竹(はちく)を使うこともあります。竹皮草履の前ツボ部分だけが、模様のない白っぽい竹皮で編まれている草履がありますが、それが淡竹で編み初めをしたものです。真竹と淡竹とは、仕事をはじめた頃に見分けがつかなかったくらい似ています。いろいろ明確な違いがありますが、そのひとつが竹皮で真竹には竹皮特有の模様があるのに対して、淡竹は全く模様がありません。虎竹も淡竹の仲間ですが、竹になれば虎模様が出るのに竹皮は真っ白で模様ひとつありませんから不思議なものです。

丈夫で厚い孟宗の竹皮
真竹、淡竹、孟宗竹が日本三大有用竹です。なので、孟宗の竹皮はどうなんだ?と聞かれそうですが、実は孟宗竹には細かい毛があるので食材に多用されているのは「あくまき」という鹿児島にあるお菓子くらいではないかと思います。ただ、さすが日本最大級の竹だけあって厚みと強さが抜群です、だから孟宗竹ばかり使う職人もいますし、下駄の表に使うのは、しっかりした質感の孟宗竹だったりします。

竹皮の保管
食品の包材に使う場合は違いますが、草履に編みこんだりする場合には竹皮を数年寝かしておきます。3年くらいが調度なのですが、カラカラに乾燥した竹皮も水分を与えますと元のしなやかさを取り戻し、柔らかく細工に使いやすい素材になるのです。今では稲藁も貴重品、いくら腕のよい職人も材料がなれば仕事になりません。

この細かい竹皮は鼻緒の藁縄に混ぜ込んで強度をあげるために使うものです。目に見えませんが、このような隠れた工夫が竹皮草履の履き心地を支えています。

竹皮職人伝統の技
この貴重な地元里山の竹皮を使って作り続けてきた草履は、戦前あるいは戦後間もない頃の小学校では上履きとして使われていました。藁草履より長持ちして丈夫なので高価でもあり、竹皮草履は比較的に裕福なお家の子供が履いていたとも聞きます。子供用から大人用まで数種類のサイズまで用意していたこともありますが、現在では男性用・女性用だけをコツコツと製作しています。あまり大きいと履きづらいものの、実は鼻緒の履物は多少足のサイズが違っても不自由なくお使いいただけます。モノの無い時代には一つの下駄を家族で履いたなんてこともあったようですが、履物までエコで無駄がない日本の暮らしの美しさを改めて感じます。

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