2025年11月25日の投稿

和の空間を彩る虎竹袖垣の魅力と庭の愉しみ

虎竹袖垣


玄関脇を飾った「袖垣」の歴史と現在

竹袖垣(そでがき)をご存知でしょうか。かつては和風建築の玄関脇や庭先のちょっとした目隠し、あるいは飾りとして庭によく置かれていた竹垣の一種です。30年前くらいまでは、竹虎でも10トントラックが満載になるほど製造し全国へお届けしていた竹製品です。それが、住宅環境の洋風化に伴い、今ではほとんど見かけることがなくなり、いわば忘れられた和の風情となってしまいました。それで、その洗練された姿は現代でも日本のわび・さびの美意識を静かに伝える存在です。


袖垣で生まれる、心安らぐ我が家

洋風化が進んだ現代の住宅においても、和風建築のご自宅にはやはり袖垣が素晴らしく似合います。玄関脇に設えられた袖垣が、ご自宅に帰ってきた家人を静かに、そして温かく出迎えてくれる...そんな情景を想像してみてください。忙しい日常から離れ、心安らいで過ごせる我が家。袖垣は単なる目隠しや飾りではなく、日本のおもてなしの心と、生活を豊かにする美意識の象徴だと思います。


虎竹ミニ玉袖垣


伝統的な竹細工の技術と、国産竹の良さ

竹虎は創業明治27年以来、130年以上にわたり日本唯一の地域特産の竹、虎竹を守り続けてきました。そして、この虎竹で制作する袖垣には肩が丸くなった玉袖垣と呼ばれるものと、端正な直線が美しい角垣(つのがき)があります。また、狭いスペースでもお使いいただけるようにミニ玉袖垣といって、170センチの高さのある袖垣を120センチにサイズを小さくしたものも製作しています。現在では製造量はごく少ないものの、ボクたちはこの伝統的な竹細工の技術と、国産竹の良さを守り、伝え続けています。


古い竹垣


天然の竹垣が醸し出す経年美

天然の竹でできた竹垣や袖垣の最も素晴らしい点は、「古くなることを楽しむ」ということです。プラスチック製の垣とは違い、天然竹は時間の経過とともに色が褪せ、風合いを増していきます。古色を帯び、やがて苔などがむすことで、そこにしかない素晴らしい風情と、歴史を刻んだかのような侘びた美しさが生まれます。この自然そのものの変化、「経年美」を長くお楽しみいただきたいと願っています。


店舗使用の虎竹袖垣


数十年を経てなお輝く、虎竹玉袖垣との再会

先日、偶然立ち寄った飲食店で、ボクは久しぶりに心を奪われる出会いをしました。そこには、数十年の時を超えて使い込まれ、見事な飴色に変化した虎竹玉袖垣が静かに置かれていました。その風格ある佇まいを見た瞬間、かつて竹虎で多くの職人たちがこの袖垣を一つひとつ丁寧に製造していた頃の活気が鮮明に蘇ってきた気がしました。長い間、和の空間を守り彩り続けてきたこの袖垣の姿は、地域特産の竹と職人の技の素晴らしさを改めて教えてくれています。


虎竹玉袖垣


環境に優しい竹の持続可能性

竹は木材と比べて圧倒的な成長速度を持ち、適切に管理することで永続的な利用が出来るため継続利用可能な唯一の天然資源とも言われます。現代社会が直面する環境問題への一つの答えとも言えそうな竹製品は、まさにサステナブルな社会を形作る上で重要な役割を担っていると考えています。天然素材の竹を選ぶことは、日本の伝統を守ることはもちろんですが、大袈裟に言うならば地球の未来にも貢献することに繋がっていきます。


虎竹袖垣製作


袖垣の文化を若い世代に伝える

確かに、現代の住宅環境の変化に伴い、袖垣の需要は大きく減少しています。しかし、ボクたちはこの日本の美しい文化を、決して途絶えさせてはならないと思い、老舗竹屋として竹袖垣文化を少しでも次の若い世代へと遺していく取り組みを積極的に進めています。それは自然素材が持つ心地よさや、和の造園がもたらす心の豊かさを伝えていくことに他なりません。袖垣のような大きな製品から、日常で使う竹籠、竹ざるといった小さな竹細工まで、竹の魅力は尽きる事がありません。ボクたちは、まだまだ自然と和風庭園への関心を深めていただき、そこに宿る日本の美意識をこれからも発信し続けなければならないと思っています。


虎竹枝折戸


虎竹枝折戸(しおりど)

竹の趣が愛らしい枝折戸が一枚あるだけで小さなお庭や空間であっても雰囲気は一変します。自然素材である竹を見ると心が和み日本に暮らす喜びを感じます。このような竹のある暮らしが、皆様の日常にあればと願い続けています。





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竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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