2026年6月22日の投稿

川と共に生きる職人が編む、土佐伝統の鰻魚籠

別誂え鰻魚籠


一日に川で鰻を100匹捕る

先日、お客様から別誂えの鰻魚籠のご注文をいただきました。こうして特別な注文をいただくたびに、ボク自身、改めて土佐伝統の魚籠の素晴らしさ、そして竹と人との深い結びつきを再確認させられます。「一日に川で鰻を100匹捕る」なんて聞くと、本当か!?と驚かれる方もいるかも知れません。けれど、ボクたちの小さい頃の高知の自然は、今と違って本当に豊かでした。小学生の自分たちが、小さな用水路のような流れに仕掛けた一本の鰻筌にさえ、15匹くらいの大物から小さなものまで、ズシリと重たいくらいに鰻が入っていることがありました。そう考えると鰻名人なら、1日100匹という日もあっただろうと普通に思います。




高知と言えば皆様がご存じの四万十川が有名ですが、最近人気になっている仁淀川も、昔から地元では清流として親しまれてきました。川の水が綺麗なので、キャンプと言えば仁淀川が定番になっていて、その頃は調理用の水など用意せず、そのまま川の水を使っていたように思います(笑)。上流域に行けば、麦わら帽子をかぶったお孫さんとお爺さんが一緒に鮎の玉しゃくりをしていたりして、川と人の伝統が次の世代へ繋がっていっているようで、ほほえましく、嬉しいものです。


鰻魚籠


竹細工は人の暮らしそのもの

竹細工というのは、まさに人の暮らしそのものです。だからこそ、そんな地域でずっと川を愛し、川と共に生きてきた竹職人が編む高知伝統の鰻魚籠には、言葉にできない圧倒的な迫力があります。皆様に普段ご紹介しているものは、今の暮らしに合わせて少し小振りにしてありますが、作りは間違いなく土佐伝統の鰻魚籠です。特に今回、お客様のご要望でお作りした別誂えは、編み目を通常よりも細かく引き締めています。さらに、一番負担がかかる底の力竹には、銅線巻きの補強を入れた特別仕様。職人の技とお客様のこだわりが結晶した見事な仕上がりになりました。


昔ながらの筌


竹林のゴルフバッグか!?

魚籠の素晴らしさはもちろんですが、中にミミズなどを入れて一晩川につけておく、仕掛け用の鰻筌もまた素晴らしいものです。これを細長い背負い籠に入れて運んでいると、まるでゴルフバッグを運ぶキャディさんのようにも見えますが...違います!これぞ、ボクたちも使っていた伝統的な昔ながらの鰻筌です。思えば、何十年も姿形が変わらないって凄いことではないですか(笑)、改めて感じますが、これ以上何も足せないし、引けない、究極の形なのだと思います。


真竹磨き鰻筌


用の美

けれど、そんな中にあって、さすがです。川の名人が作る鰻筌は一味も二味も違います。この磨きの逸品をご覧いただきたいのですが、どうでしょうか?鰻を捕るための道具には違いありませんけれど、川に浸けてしまうのが惜しくなる...そう思わずにはいられないほどの美しさ。機能性を突き詰めた先にある、究極の用の美がここにあります。


竹虎四代目(山岸義浩)、鰻ひご


鰻ひごとは?

さらに、鰻ついでにこんな道具をご存じでしょうか?これも、小さい頃からある鰻の穴釣りに使われる鰻ひごです。鰻は夜行性で、昼間は岩陰や小さな穴を見つけてジッとしている事が多いのです。そこで、川岸の岩の隙間や穴に潜むウナギを狙う釣り方で、先端に針と餌を付け、竹ひごの絶妙なしなりを利用して、ウナギのいる穴の奥深くまで差し込んで釣り上げます。このような竹ヒゴも、昔は街の釣具屋さんなどで普通に売られていたと思いますが、今では無くなってしまったのでしょうか(当時のボクたちはプラスチック製の安価なものを持っていました)。数年前、どうしても手に入らないからと、竹虎に鰻ひごのご注文をいただいたことがあります。


曲がる鰻ひご


その際、確か真竹と孟宗竹の2つの素材で作らせていただきました。竹は種類によって性質が異なります、ウナギの強い引きに対抗するには、肉厚で力強い孟宗竹の方が適材のように思います。けれど、実際に川に入り鰻釣りをされる方には、その使い心地の違いをぜひ一度お尋ねしてみたいものです。


暮らしが変わっても、形を変えながら生き続ける竹の道具たち。
今回の別誂えの鰻魚籠も、お客様のもとで、豊かな物語を紡づいていってくれることを願っています。





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竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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