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田辺幸竹斎さんの籠

田辺信幸作(幸竹斎)、篠竹つぶし花籠「蹲」


篠竹つぶし花籠「蹲」

竹虎は昔から九州の竹屋さんや工芸家、職人さんと結び着きが強くて、本店には名だたる作家の作品があったりしました。ボク自身は、竹細工は作り手と使い手で完成するものだと教わってもきましたので、実は竹工芸などアート的な要素をもった作品には、竹そのものより人との繋がりで好きになったものばかりです。ただ、どうも昔から気になっていた籠があったのです。それが田辺信幸(幸竹斎)さんという方の籠です、確か30年ほど前にはこの方の作品が自社の店頭に何気に飾られていたはず...そんな事を思い出しながら篠竹つぶし花籠「蹲」を拝見させていただく機会がありました。


田辺幸竹斎さんは、人間国宝生野祥雲斎さんが才能を見抜いた唯一の弟子とも言われ、この方が工房にいた10年間に最高傑作「炎」、「陽炎」などが発表されています。大作の籐飾りなどは殆ど任されていたと聞きますので、いかに高い感性、技術力を持たれていた方なのかが分かります。しかし、どうしても竹素材に目がいってしまいます、2001年の作でこの艶やかさを醸し出せるのは篠竹でしょうか?おそらく根曲竹ではないかと思っています。


スズ竹アタッシュケース


スズ竹アタッシュケース

「真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズ竹より根曲竹」という言葉がありますが、これが根曲竹に次ぐスズ竹で編まれたアタッシュケース。染料の入った釜で煮て染め付けたのとは違い、竹材を一年間かけて炭窯で燻した独特の風合いです。スズ竹も数十年選手の市場籠を修理させていただく事も多くて、その都度経年変色の素晴らしさには魅入られます。


篠竹細工


篠竹細工のザル

そして、こちらは篠竹細工のざる、編み込みで底の四隅が足のように立ち上がり通気性の良さが抜群です。竹の割幅で編み上がる雰囲気も全く異なりますが、全体的にやさしい雰囲気の籠になります。ちなみに画像の奥に写っててるのは、ハッキリと見えずに申し訳ないのですがマタタビで編まれた同型のザルです。


真竹籠


湿式か乾式か

さらに、こちらが白竹の籠。白竹も真竹を熱湯で油抜きして晒すのか、昔ながらの火で油抜きするのかで全く色合いや経年変色が違います。湯抜きを湿式、火抜きを乾式と呼びますが、現在のように製竹現場の人手不足が続くと効率のよい湿式に頼らざるをえません。


真竹磨き細工買い物籠


真竹磨き細工

同じ真竹でも表皮を薄く剥いだ磨き細工は、磨いて竹表皮が均一になるので非常に綺麗で大好きです。更に経年変色が早く進むので、表皮付きの籠本体に磨きの竹ヒゴで口巻などすれば、数年経つと縁巻部分にまるでラインが入ったかのようなツートンカラーになるから何ともたまりません(笑)。


メゴ笹洗濯籠


幻と言われたメゴ笹

その他にも、少しやっかいな素材であるメゴ笹。伐採してすぐに使わないと硬くなって籠に編めなくなる竹材です。だから長く保管することができず、一年の中でも旬のよい時に伐採する度に製造せねばならないので本当に数量が限られています。ボクも作られた古い籠は知っているものの、数年間は「幻の籠」なんて思っていた時期もあったほどです。


虎竹スツール


虎竹スツール

さて、このように竹材と一言にいっても色々な種類があり、それぞれに特性があり美点があります。日本には孟宗竹、真竹、淡竹の三大有用竹はじめ、竹類と笹類あわせて600種類もがあってまさに竹の国、竹細工や竹製品に加工される竹材だけでも、まだまだ語り尽くせない思いです。そんな竹を使う作り手の技術には受け継がれてきた歴史があり、絶え間ない創意工夫があり、もちろん素晴らしいものです。でもその技は、竹の個性があってこそもっともっと魅力的に輝くものではないでしょうか。



竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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