週刊日流eコマース 2010年4月22日 第0123号

新聞掲載
インタビューのコーナーに竹虎四代目が紹介されました。地方こそECで情報発信すべきことや私たちにしかできないことをECで表現していきたいという思いなどが紹介されています。
週刊日流eコマース 2010年4月22日 第0123号

ec人インタビュー

山岸竹材店 代表取締役社長
竹虎四代目 山岸 義浩


竹虎四代目 やまぎし・よしひろ氏
1963年生まれ。高知県出身。創業が明治27年の老舗竹屋の4代目社長。97年に竹商材のECを開始。第7回オンラインショッピング大賞最優秀中規模サイト賞(EC研究会主催)、06年WEB1グランプリ「アイル賞」(GMOホスティング&セキュリティ主催)、第1回エビス大賞(イーコマース事業協会主催)などを受賞。竹のある暮らしの提案に日々、奮闘している。

ユニクロと協業、ECをやってよかった

明治27年創業の竹屋「山岸竹材店」。高知県須崎市安和だけに分布する茶褐色の虎のような斑紋が入った竹「虎斑竹」(とらふたけ)を使った製品をつくる老舗だ。4代目となる山岸義浩社長が97年、希少価値の高い「虎斑竹」製品を全国に広めていこうとEC事業をスタート。運営するECサイト<虎斑竹専門店 竹虎>は数々のアワード受賞に加え、08年にはユニクロ(山口市)と共同で商品の開発に携わるなど、EC業界で存在感のある有力ショップとなった。山岸社長はECを通じ、全国の消費者に「竹のある暮らしを提案したい」と考えている。


3年間で売上300円

――ECに進出した経緯を教えてください。
不景気の影響もあり、業界全体がお先真っ暗だった90年代後半は、海外テレビ局(英BCCなど)が当社を取り上げてくれ、海外での認知が広がる一方で、日本人は当社の製品のことをあまり知りませんでした。その状況をなんとか打破したかったので、新たな販路としてECを選びました。96年当時、高知県の知り合いのネットショップが月商100万円を売り上げていた。いまでいうと、月商1億円を売り上げているぐらいのインパクトでしょうか。ECは売れるんだと思い、97年にECサイトを開設しました。

――売り上げはどんな推移でしたか。
サイト開設から00年までの3年間で300円です。竹和紙職人がつくった「竹繊維100%竹和紙ハガキセット5枚1組」がひとつ売れただけでした。当時、私は常務でしたが、実績を出さない男には誰もついてきませんでした。口先だけで"インターネットはいい"といっているだけの男には誰もついてきませんよね。昼間に会社の仕事をやり、夜にEC業務を行っていました。しかし、電気代がもったいないからと電気も消されていましたね。

――その我慢を支えたのはなんだったのですか。
3年間で300円の売り上げでは、認めてくれる人がいないのは当たり前。我慢のしどころだと自分に言い聞かせました。ようやく月商100万円を超えて、ECは売れるんだという認識が社内に広がっていきました。

――Tシャツ販売の岸本栄司氏(イージー社長)に教えられたとか。
00年に(財)高知県産業振興センターが中心となって、ECの勉強会「e商人養成塾」が立ち上がりました。その勉強会の塾長が岸本さんでした。岸本さんの講演などを聞くようになってから、売り上げが伸びていきました。

――竹虎が売れるようになったきっかけとは。
岸本さんに最初にいわれたのが「インターネットで買い物したことがあるの?」でした。私はネットでなにも買ったことがなかった。ネットで物を売りたいと思っていましたが、当の本人はカード決済が信用できないなどの理由でECを利用していませんでした。実際にネットで買い物をしてみると、いろいろと見えてきたことがあり、自社のサイトを根本的に見直すきっかけとなりました。

――例えばどんなことを見直したのですか。
生まれた時から、虎模様が入っている竹を見てきましたので、それが当たり前となっていました。「虎斑竹」は当社の近辺地域だけでしか採ることができない希少性のあるものですが、地元の人間たちはそこに鈍感です。なので、ページには「虎竹」という記載があるだけで、「竹の詳しい説明」「ここでしか育たない」といった内容がどこにもなかった。親切な商品説明ができていないことに気がついたんです。
例えば「虎竹の縁台」という竹製の和風ベンチの商品があるのですが、通常はデパートの売り場でも1週間に1~2台程度しか売れません。ところが、関西のテレビ番組で取り上げられると、1日で600万円も売れたのです。「この竹はどこで採れた竹か」「竹虎でしかつくれない」「職人が丁寧につくっている」――こんな詳細な説明をテレビが全部やっていました。その番組を見たのですが、ECのページづくりも一緒だなと気づいたのです。

地方こそECで情報発信

――地方こそECを活用すべきだと考えているそうですね。
インターネットの登場で、田舎に初めて光が当たったと思っています。例えば、当社の商品を直接買いに行くには交通の便が悪い。紙媒体を使って通信販売を手がけようと思っても、印刷にお金がかかる。しかし、ネットは商品の公開・非公開は簡単にできるし、いま得た情報をすぐに反映できます。ECは、田舎の情報を自由に素早く発信できる素晴らしいツールだと実感しています。

――ユニクロとコラボ商品を販売しましたね。
「ユニクロ」は全国の人たちが知っています。社長の子どもがユニクロに行き、「お父さんの会社でつくっているマークが載った商品が並んでいる。お父さんすごい」といわれたそうなんです。うれしかったですね。社員が初めて「僕たちの会社はこうやって世間に認められているんだ」と認識するようになった。ユニクロのような大企業からコラボレーション商品の要望をいただき、08年夏だけの限定企画でしたが、国内をはじめ、ロンドン、パリ、上海、香港でも「竹虎」のロゴマークが入ったコラボ企画のTシャツが並んでいた。初めて全社を挙げて喜ぶことができました。当社の従業員は、とくに勉強や運動に秀でている者はいません。しかしユニクロとのコラボレーションで、たくさんの人から褒められ、スポットが当たりました。スタッフ全員がこの取り組みを本当に喜びました。その姿を見て、ECをやってきてよかったと思いました。

――ECを始めたことで、会社を取り巻く環境が変わったということはありますか。
それまで誰も竹に興味はなく、私たちの話なんか聞いてくれなかった。いまはガラリと変わりましたね。竹が環境にいいなど、"エコ素材"ということで見直され始めています。これを追い風に、もっと竹の利用価値は上がっていくと思います。

――これからどんなことに取り組みたいですか。
動画配信です。「Youtubu」など動画配信ツールで楽しく見ていただける動画をつくりたい。竹を1本切る、そして運ぶ、割るといった私たちの作業風景を動画で配信していきたいです。私たちにしかできないことをECで表現していきたいと考えています。
(取材と文 瀧川正実)


(新聞「週刊日流eコマース 2010年4月22日 第0123号」より転載)

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