月刊石垣 2011年6月号

雑誌掲載
暖炉を受け継ぐのコーナーで、竹虎(株)山岸竹材店が取り上げられました。竹虎の紹介や、竹虎四代目のインターネットや竹に対する姿勢などが書かれています。
月刊石垣
BRAND暖簾を受け継ぐ
地域特有の竹を守り続ける


あぶると浮き出る虎模様

高知県須崎市安和地区。この地には、ここでしか生育しない竹がある。その名は「虎竹(虎斑竹/とらふだけ)」。特徴は火であぶると虎模様がくっきりと浮き出てくることが。
「植物学者が調べてもはっきりした理由は分かりませんでした。何でも土に含まれる菌が影響しているのではないかということです。試しに一度、ほかの地に移植してみたところ、やはり虎の模様は出てきませんでした。本当に不思議な竹なんです。しかも1本1本柄が違う」と山岸竹材店代表取締役社長で四代目を務める山岸義浩さんは説明する。
同社は、その虎竹を利用した商品を製造・販売している会社だ。創業は明治27年。初代・宇三郎が大阪の天王寺で竹材店を開いたのが始まりで、須崎まで船でやって来ては虎竹を仕入れ、加工業者に卸していた。
ところが、二代目・義治の時代に、太平洋戦争で大阪の店が全焼。二代目の母親の実家が虎竹林の大地主だったこともあり、これを機に産地に近いところに本社を置こうと終戦と同時に安和に移ってきた。
そして、山林を持っている地主に、スギやヒノキを植える代わりに虎竹を伐採することを依頼し、切り取ったものを全て現金で買うことを約束した。
「それは、いまでも続いています。すぐに現金化されれば、栽培している人も安心できますからね。うちが今日まで竹材店として生き残ってこられたのは虎竹のおかげ。栽培してくれる人のことを考えるのは当然でしょう。社員に対しても、『虎竹を守り続けることがうちの使命だ』と言っています。」と義浩さんは話す。
山岸竹材店では、代々その思いが受け継がれ、栽培する人を大事にしてきた。文字通り、虎竹あっての会社というわけだ。

時代に合わせ変化する販売法

しかし、義浩社長は大学4年生のころまで、後を継ごうとは思っていなかったそうだ。というのも、竹材店の仕事は3K(きつい、汚い、危険)で、仕事に生きがいなど見いだせないと考えていたからだ。ところが、大学卒業と同時に入社した。
「大学4年の夏休みに帰省していたときに、工場が火事になり、その第一発見者が私だったんです。夜中の11時に寝ようと思ったら、工場の方から誰かが呼んでいる気がして行ってみると、火事になっていたんです。原因は近くの河原でやっていたたき火によるものでしたが、何か運命的なものを感じて、入社を決めたわけです」
しかし、周りは年寄りばかりで話が合わず、仕事も面白いとは思えずにいた。毎日、「辞めたい、辞めたい」と30歳くらいまで悩んでいたそうだ。ところがそんなある日、竹垣を施工をした家の人から、「あなた方の仕事は素晴らしい。私は竹を見ると心が癒やされる」と絶賛され、仕事に対する考え方ががらりと変わった。
以来、義浩さんは懸命に仕事に打ち込むようになった。しかし、取り巻く環境は最悪だったという。バブルが崩壊して不景気の真っただ中、おまけに中国製の安い竹製品が市場を席巻していた。無論、同社の経営もピンチに立たされた。そこで、それまでの販売方法から転換を図った。
「うちは代々、時代に合わせて新しいことに取り組み、販売の仕方を変えてきました。それが伝統なんです。過去の成功体験にこだわっていてはいけない」と義浩さん。
初代は、主に竹を原料として販売。二代目は、自ら加工してエンドユーザーに販売を行い、四万十川を訪れる観光客目当てにショールームを兼ねた店舗を開いた。三代目はデパートなどの外商に力を入れた。そして、義浩さんはインターネットを活用することにしたのである。
「インターネットは、つくっているものや、やっていることを知ってもらうのには非常にいいツールですからね。しかも、印刷物で販促するより、コストが安い。うちのような中小企業にはもってこいの手段だと考えたのです。ホームページに寄せられるお客様の細かいニーズをくみ取って製品づくりに反映させることもできますし」と説明する。

竹の新たな利用法を模索

義浩さんはまず、ホームページに載せるための新たな商品づくりに取り掛かった。このとき、非常に役に立ったのが、二代目が全国から集めた数千点もの竹製品のコレクション。その中からこれはと思うものを選び出し、いまの人に喜ばれるような商品に加工した。
例えばキッチン道具や文具、ピクニック用のバスケット、草履など。新製品ができるたびに、義浩さんは二代目に感謝したそうだ。すると、だんだんとユーザーから反響を得るようになり、つくってほしいという依頼も増えた。その一つがスマートフォン用のケース。竹でできているものは目新しく、好評を得ている。
「竹は継続利用に適した数少ない天然資源だと思うんです。成長が早く、3カ月ほどで20mにもなりますからね。それに、『雨後のたけのこ』というくらいで、次から次へと生えてきます」と義浩さんは口元をほころばせる。
「利用方法も非常に幅広く、昔ながらのザルや籠をはじめ、最近は竹の持つ消臭・抗菌作用が注目されて、消臭剤、石けん、シャンプーなどにも使われています。変わったところでは、牛のえさや育毛剤にも利用されているんですよ。次々に新しい利用法が出てくる竹という素材には、無限の可能性があると思います」
現在、店舗には約1300点のアイテムが並んでいる。義浩さんは自らが先頭に立って、竹の新たな利用法の研究を進めている。
山岸竹材店が掲げる経営理念は「竹文化の創造と発信で豊かな生活を提案する」。この先も、安和の虎竹林からは、さまざまなものが生まれてくるに違いない。
(文・山田清志)

山岸竹材店 <プロフィール>
社 名 株式会社山岸竹材店
住 所 高知県須崎市安和913-1
電 話 0889-42-3201
代表者 山岸義浩 代表取締役社長(四代目)
創 業 明治27(1894)年

・「後ろにある石碑は二代目の義治が建てたものです」と話す山岸義浩代表取締役社長
・すのこの製造風景。現在、人気商品の一つとなっている
・虎竹はあぶるとこのような模様が出る


(雑誌「月刊石垣 2011年6月号」より転載)

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