「蟻とをし」の竹箸

煤竹箸


前に何かの本で読んだ事があるがですが、竹の茶杓と言うても信じられん作品が残っちゅうもんですぞね。片桐石州作「松しま」という茶杓があるそうですが、昭和14年に2万8000円という今の金額に換算したら、ええっ!?本当かえっ!?何回も見直しましたけんど、間違いない茶杓1本に2億数千万円!?そんな凄い値段で売買されたいう話やったです。


さて、その本の中に、茶杓の真ん中、節のあたりに穴が3つ並んで空いた「蟻とをし」という独特の形をした茶杓も掲載されていたのです。お茶道具の名品とは比べようもないがですが、ワシが毎日使うちょります竹箸も古い民家の屋根裏で百年という風雪を耐えた煤竹を使って、祖父の代から懇意にしていただく竹芸界の巨匠渡辺竹清先生が自分のために削りだしてくださったお箸。


限定で販売させてもろうちょります煤竹箸とは又違うて、虫食いの小さな穴が開いちょります。けんど、この虫食いの穴が「蟻とをし」のように、先生の遊び心や煤竹の年期を表しているようで、そしてひとつの景色として煤竹箸に深い味わいと、いっそうの趣をくわえてくれるがです。頂いてから、もう5年になるろうか?まだ使えず大事に持っちゅうお箸の一つながです。


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