和傘と竹林

和傘


若い頃には母のお下がりの和傘をずっと使いよりました。穴が開いてボロボロになっても、妙に愛着がわいて、かえって古くなったのが格好もエイ気がして、とうとう傘をさしても雨に濡れてしまう...(笑)そんなまで使った後も、なかなか捨てられず玄関にずっと置いちょったのを覚えているのです。


もちろん、折り畳めたり、軽量だったり、乾きが早かったりする、今の洋傘と比べると使い勝手という点では勝っているとは言い難い和傘ですけんど、竹虎の歴史を振り返ると、大阪で119年前に創業した当時は、この和傘の骨の材料の竹材を扱っていたという事を祖父から聞かされちょりましたので、和傘には、少なからず思いいれもあるがですぞね。


よく日本の家は「木と紙で出来ている」と言われますけんど、和傘は「竹と紙で出来ている」そう言うてもエイと思います。先日、傘職人さんから一本の和傘が届いたがです。さっそく広げてみて拝見しました。和傘にも色々種類があるようですが、こりゃあ、まっこと素晴らしい出来映えです。この和傘の伝統の技も、だんだんと職人さんが少なくなり、これから伝承し残していくためには新しい試みが必要になってくるのかも知れません。


ところで竹を多用した和傘ですが、素材が竹で出来ちゅうと言うことだけでなくて竹林整備にも和傘が深く関わっています。いやいや、関わっている、という言い方は、ちっくと可笑しいかも知れませんが、竹林の竹を伐採して整備する場合に、竹と竹との間隔がどれくらいが適正かと問われた時、和傘を差して歩けるくらい竹同士の間隔を開けることが必要だと言われちょります。そうすると陽が入り、風が通り美しい竹林となるがです。そう思うて周りの竹林を眺めてみたら、まっこと日本の竹は伐採されなくなってちっくと詰みすぎちゅうと言うのが良く分かりますろう。


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