再会、虎竹人形

虎竹人形


先日の事、とある会社様を訪問させて頂いちょりました。見晴らしのエイ、こじゃんと立派なお部屋に通していただいて高級そうなフワフワの革のソファーをススメて頂きましたけんど、田舎者ですきに、反対に座り心地が悪いがぜよ。なんやら、お尻がモゾモゾしてきますちや。そんな事を思いよったら先様がお見えになって、色々とお話をさせていただくがです。日本唯一の虎竹の話しは必ずさせていただきます。高知県の須崎市の、たった1.5キロの間口の谷間でしか成育しない事。イギリスBBC放送が取材に来られたりあのユニクロさんとのコラボTシャツが発売された時の事。


正直いうて、こんな当たり前の事を話しさせてもろうても、何ちゃあ面白くもなんとも無いと、ずっと思ってきた時期もありました。江戸時代に山内家のお殿様に年貢として献上されよった頃なら、よその藩に行って話す事は御法度やったかも知れませんちや。けんど、珍しい竹で皆様がご存じない竹やと知ってからは、どこにお伺いさせて頂いても虎竹の話しはさせて頂くがです。と、言うより、虎竹の事しかお話させて頂く事はないがです。色々談笑させてもろうた後、


「不思議な竹なんだねえ。一度見てみたいなあ...」


先様が言われますので、


「遠いですけんど一度、虎竹の里にもお越しになられてください」


そう言うて帰ろうとした間際、ふと高級そうな黒塗りのサイドボードの上を見ると、


「あれっ!オマン、ここにおったかえ?」


一同が振り返って見つめる先には小さな竹人形ぜよ。


「ここにも使って頂いちょります、これが虎竹ながです」


ずっと、この部屋に飾られちゅう遠い故郷の竹に誇らしいやら、嬉しいやら、しばらく、言葉にもなりませんけんど、まっこと、まっこと、こじゃんと嬉しい再会をさせていただいたがです。


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