手のひらの大きな課題

竹の杯


自分の小さい頃にはに従事される方もずっと多かったですし、今とは比べものにならないような様々な竹細工がありました。竹は筍は食用になるし、その竹の皮も使えますし、大きくなったからでも穂先から地中の根まで、まっこと全て捨てる所がないほど役に立つ植物ですけんど、その中でも地面の中の部分。そう、竹根や竹根に近い部分を使った竹製品も実に色々とありましたぞね。生け花用の花入れから、お茶道具、香道で使われるものから始まり日常品の様々な小物、装飾品など、そうそう変わったものでは照明などもありましたちや。


そんな竹根細工は今では、すっかり作られる職人さんもおられなくなっちょりますが、太い竹根を使い製作された竹の杯というものがあるがです。これは祖父が全国をまわって集めてきた竹細工の中にあったもので、同じ方の製作した竹根茶碗を自分はずっと愛用しよります。もう十年程になりますろうか?ずっと愛用しよって、やっぱり手触りや口当たりが良くてもともとは焼き物も好きではありますけんど、この竹茶碗を越える焼き物の器には、遂に出会うことなくおるがです。だから、ひとつだけ残っちゅう竹の杯を見るにつけて、なんとか復刻できんものやろうか?ずっと思い続けてきたがです。そうやって思い続けよりましたら、不思議なもので、何とか形になるような機会ができて、先日、こうやって一つだけ出来あがったがですちや。


なるほど、なかなか悪うないぞね。ただ、適材の竹根が思うよりも、ずっとずっと少なく、この一つだけで次の製造見込みが全く立たないと言われよります。まっこと、一度なくなった加工技術を復刻するのは、材料をはじめとしてその道具、そして、その周りの職人さんまで、考えたら実は大勢の方に関わってきますので、そうそう簡単な事ではないがぜよ。まさに、至難の業と言うてもエイがです。けんど、古き良きものが消えていくのをどだれけ見送ったらエイがやろうか?手のひらの上にのる小さな竹杯の向こうに大きな手作りの課題があるがやにゃあ。


※竹職人のミステリーサークルの答え。釘の間に竹ヒゴを並べて菊底編みの編み始めに使うように工夫して作られたものです。


コメント(2)

丹羽秀幸 返信

竹は、筍で食べてもとてもおいしく、竹で加工してもいろいろなものに加工出来て、とても良いと思います。竹の製品は、味わいのあるものが多いです。

竹虎四代目 返信

丹羽秀幸様

コメントありがとうございます!
竹はまっこと竹葉から小枝、竹根まで捨てるところがないくらい
色々なものに活用することができるがです。
繊維などもできますので
これだけ「衣・食・住」に関わる植物も少ないのではないですろうか?
竹はやっぱり凄いにゃあと思うがです。

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