自分を、こじゃんと好きになった日

竹虎四代目


皆様、突然ですけんど、ご自分の事は好きですろうか?実は、自分はあまり好きやなかったですぞね。そうやにゃあ今から30年ばあ前の事ですかにゃあ。全寮制の中学、高校から大阪の大学に進学して、10年ぶりに帰ってきたら高知県の中でも田舎と言われて何ちゃあない虎竹の里。夜になったら真っ暗でカエルの鳴き声だけが喧しいくらいに聞こえてくる。こんな竹しかない所に明日などがあるとは、その頃、どうしても信じられんかったがですちや。


仕事と言うたら、若い者は一人としておらん。おんちゃん、おばちゃんばっかりで、たまに、おおっ若手や!と言うたち、自分より30歳も上の職人さんぜ。毎日ボロボロの作業着で真っ黒うなって竹の中に埋もれちょった、都会の仕事が楽しそうで、面白そうで羨ましゅう思いよった。だいたい竹など今の時代に誰が求めよりますろうか?自分のやりゆう事が何の役に立っちゅうがやろうか?まっこと人は自分の道が見えずに迷いゆう時が一番辛いがですぞね。


この時知ったがです、人は楽をしたいがやないにゃあ。楽をしたいがやったら寝よったらエイけんど、寝よっても何ちゃあ楽しくも何ともない。反対に、しんどいだけやにき。そしたら何がしたいがやろうか?何をしたち人に負けてばっかり、何をやっても長続きしない。志も、夢も何ちゃあない自分が一体何がしたいのか、自分が一体誰なのか、ある時、教えてくれる人が現れましたぜよ。


それは、一人のお客様やったがです。


あの日は、泣いた。雨ならワイパーがありますけんど、涙は困るちや。泣きながら車を運転して、前が見えんほどやったがです。良く事故をせんかったもんですぞね。いや、いや、あの日事故はあったがぜよ。事故で弱い自分は死んだがぜよ。そして、竹虎四代目になった。


虎竹の里も、会社も、周りの人たちも何ちゃあ変わっちょらん。変わったのは自分ぞね。そしたら、何と幸せ者やと気がついたがです。イギリスからも取材に来る日本でここにしかない不思議な竹。100年前から続く自分達にしか出来ない仕事、生み出せない価値。あのお客様のように自分のする事で喜んでもらえる。仕事とは何やろうか?インターンシップで来られる学生さんや若い方には、いつも聞く質問ながです。


仕事とは何やろうか?それは、人に役立つ事、喜んでもらう事。


人の笑顔で自分が笑顔になる。自分を、こじゃんと好きになった、いつでも、どこでも、誰でも、人は変われる。自分は頭も悪いし、うまい事言えませんけんど、自分がそうやったきに分かりますぞね。


いつでも、どこでも、誰でも、人は変われる。そして、どこへでも行ける。


コメント(4)

chom 返信

>仕事とは ~ 、人に役立つ事、喜んでもらう事
人の笑顔で自分が笑顔になる

この経験なら私も持ってますし、
そこに喜びも感じてますけど

自分までも好きになる境地には、まだまだ達したことがないです。

四代目みたいに話せるようになりたいです。

竹虎四代目 返信

chomさん

自分は田舎者ですし分かったようにお話しよりますが
実は何にも分かっちゅうワケではないがです
ただ、まっこと有り難いと事に
この十数年の間、ご自身に自信を持ち
逆境を笑顔で乗り越えられゆう沢山の方を拝見する機会がありました。

それで自分もちっくとは変わりましたし
これからも変わって行きたいと思えるようになったがです
「自己実現」という言葉があります
なにか達成されている方が使う言葉のように思いよりましたが
実は、この本当の意味は「チャレンジし続けられている状態」の事
そう聞いて自分の周りにおられる皆様に頭の下がる思いながです。

タロ 返信

人には認められたい、役に立ちたい、褒められたい。
という欲求があって、
誰にも、役立ちたい気持ちはある。
それが満たされなければ、幸福にはなれない。

どんな単純作業でもいいから仕事を与えればいいんだろう、
と言う発想は間違い。

それでは人は幸せにならない。
精神は沈んだまま・・


小説の一節を思い出し、
しみるブログ内容でした。

ショットも素敵でー

竹虎四代目 返信

タロ様

いつもブログをご購読いただいて、まっことありがとうございます。
自分のような田舎の竹屋でももしかしたら誰か人様の
お役に立ちるがではないかと願いよりますが
実は竹も同じように思いゆうと、いつも感じちょります

神秘的とも言えるような成長力があり
いくらでも生えてくる竹を現代の暮らしに活かしていくことが
沢山の方に喜ばれることに繋がると思いゆうがです。

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