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SHILP SANGAM(シルプ・サンガム)伝統工芸と現代のデザイン

(National Institute of Design)openelective、YOSHIHIRO YAMAGISHI


SHILP SANGAM

インド最高峰のデザイン教育の場であるNID(国立デザイン研究所)でのopenelectiveを思い、今も胸に深く刻まれている言葉があります。それが「SHILP SANGAM(シルプ・サンガム)」です。サンスクリット語で「SHILP」は工芸や職人の技を、「SANGAM」は川が交わる合流点を意味するそうです。この言葉こそ、これからのインド、そして日本の工芸にとっても最も必要な指針のひとつであるように感じています。


インド国立デザイン研究所(National Institute of Design)


NIDで開催されたプロジェクトは、インド各地に脈々と受け継がれてきた熟練の職人技と、現代のデザイン感覚を一つに融合させ、次世代へと繋いでいくための試みでした。ボクが今回のワークショップで目にしたのは、まさにその「合流」の真っ只中にいる学生さんたちの姿だったと思います。彼らはただ技術を学ぶだけでなく、仲間と助け合い、他者を思いやりながら、伝統の技に自分達なりの新しい創造を重ねようとしていました。


インド国立デザイン研究所(National Institute of Design)


けれど、長く受け継がれてきた素晴らしい技術も、現代のライフスタイルという大きな流れから切り離されてしまえば、いつかは途絶えてしまうかも知れません。だからこそ、伝統工芸という川の流れがあるとすれば、デザインという異なる流れの川が交差し、互いの良さを引き立て合いながら、より大きな一つの流れとなって大海へ向かう「SANGAM」が必要という事でしょうか。まさに、竹籠や竹ざるなど、身の回りで当たり前に使われていた竹細工が、気が付けば消えてなくなってしまっている日本の事だと感じます。


虎竹眼鏡


虎竹眼鏡

今回のインド訪問に際し、ボクは虎竹で制作したメガネやトランクを肌身離さず持参していました。かつての日本では当たり前のように生活に溶け込んでいた竹細工が、いつしか過去の遺物のように扱われ、多くの技術が消えてしまった現実。その寂しさを誰よりも感じてきたからこそ、伝統の技に現代の息吹を吹き込み、今の時代に求められる形に変えて生き続ける竹を知ってほしいと思っていました。


虎竹トランク


職人の手仕事と現代の感性

虎竹のメガネやトランクを学生たちに見せたとき、彼らの瞳が輝いた瞬間を忘れることができません。それこそが、職人の手仕事(SHILP)と現代の感性(SANGAM)が、遠く海を越えて合流した瞬間ではなかったでしょうか。かつての日本で、工芸が生活から切り離され、川の流れが途絶えてしまったのは、この合流の努力が足りなかったからかも知れません。


竹皮メガネ


伝統とは守るだけのものではなく、今の、そして未来の道具として使い続け、更新し続けていくものです。十分にお伝えできたとは言えないものの、日本から携えていった竹製品の数々は、失われゆく日本の竹細工への哀愁とかではなく、NIDから始まって欲しい新しい時代への種まきのつもりでした。SHILP SANGAM(シルプ・サンガム)、考えれば深い意味あいのあり言葉です。インドに行って初めて知った言葉ではありますが、日本にも、世界にも通じる言葉です。


竹メガネ


虎竹の里のSHILP SANGAM

今回の渡印前にこの言葉の意味を深く知っていれば、さらに踏み込んだレクチャーができたのではないかという後悔もありますが、現地の竹の重みを共に担ぎ、学生たちの温かな利他的精神に触れた今だからこそ、この言葉の真実味が腑に落ちています。伝統は革新の連続です、虎竹の里で守り続けてきたボクたちの挑戦もまた、一つのSHILP SANGAMであるべきだと確信しています。



竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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