柳細工のミニ弁当箱

柳おにぎり弁当箱


随分前の事ですが柳行李の職人さんの工房にお伺いしたがです。もしかしたら柳細工などはご存じない方もおられるかも知れませんが、プラスチック製の衣装籠が普及するまでは、この柳で編まれた行李が家庭の荷物の整理には欠かせないものやったのです。自分も実際に使うた事はないのですが、若い頃の引っ越には荷物を柳行李に入れて運んだという話しを聞いて、まだ現役の頃を知る方がおられると思わず嬉しくなったりするがです。


自分の小さい頃には、どこの家の押し入れにも一つ二つは角を革や布で補強された柳行李がありましたぞね。この角のあしらいがワンポンイトになって格好がエイがですが、柳行李が全国で広く使われていたのは、そのしなやかな強さですろう。かくれんぼ等して遊んでいて柳行李の上にのったりしても、多少きしむ音がするのですが弾力があり全く平気やった覚えがあります。重さや衝撃で割れてしまうプラスチック製の箱とは、やはり耐久力に大きな違いがあるように思うがです。


そんな柳ですが自分も「ネコヤナギ」くらいしか知りませんでしたので、大きな木から細い枝を伐るのか、あるいは細かく裂いて材料を取るのか、現場の製造となると、その程度の知識しか無かったのですが、柳と言うても種類があり、また栽培品種まであるという事を教えていただいて、ビックリもしましたが、かつては大量に作られていた製品です。当然その材料は効率的に栽培されていても不思議ではないですぞね。


毎年冬に2メートル前後になった材料を集めて皮を剥ぐのですが、黒っぽい樹皮から、柳細工で良く目にする白く綺麗な素材が表れるのを見ると、マタタビ細工等の素材と同じような感動を覚えるがです。日本には、本当に沢山の自然素材を上手く活用した細工がありますちや。柳も見た目の美しさはもちろんの事、その堅牢さなど、野山に生えていた時には想像も出来なかったに違いないがです。それを先人が、あれこれ試行錯誤して沢山の素材から選びだし、丈夫な作り方を編み出して今に伝えられちゅうがですろう。


柳の産地は兵庫県や長野県、岐阜県などが有名でしたが、自分のお伺いした職人さんの工房では後継者もなく、行李の製造も、すでにあまりされていないようでした。ただ、こうやって大型の行李は見る事は少なくなったものの、柳の弁当箱は今でも少しづつではありますが見かける事がありますぞね。耐久性に加えて通気性にも優れちょりますので、知る人ぞ知るような根強い人気がある弁当箱ながです。


先日からご紹介させて頂いちょります柳おにぎり弁当箱は、小さめのオニギリを二つも入れると一杯になってしまうミニサイズ。珍しい弁当箱で、実は今後作られる事もない限定の商品です。手にする度に壁一面に柳が立てかけられていた、あの薄暗い工房と職人さんを思い出すがです。


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