見慣れない竹刃物

竹刃物


日本は狭いと言うても南北にのびて四方を海に囲まれた海岸線の長さは、何とアラスカを除いたアメリカ大陸より長いと言われます。そんな海があり、富士山に代表されるような高い山々があり、美しい四季の巡る日本には、それぞれの地方で気候も多彩、人の暮らしや文化にも多様性があり、それだけでも豊かな国と言うても良いのではないですろうか?


竹にしても寒い地方に行くほどに真竹や孟宗竹のような竹は、だんだん少なくなり、自生していても温かい地方の竹より随分と小振りな大きさになっちょります。だから北の地方の竹細工は主に根曲竹やスズ竹、篠竹といった細い竹を使う細工が中心ですぞね。反対に温かい地方は太い真竹や孟宗竹が育ちやすく、それらの竹を活用した竹細工が西日本には多いがです。南方系の植物の竹は雨が多く温暖な気候の四国や九州が、成育には非常に適した土地であるのです。


竹の違いが竹細工の違いになりますけんど、先日は、こじゃんと変わった竹刃物を拝見させてもらいましたぜよ。鉄を叩きのばしただけのような無骨さ、持ち手には何も巻くこともなく、この辺りでは、こんな包丁で竹を割るがやろうか?持たせてもらうと、とても重くバランスを取るのも難しいように感じます。そうこうしている内に、この刃物を原型として、持ち手を木でしつらえたものがある事も知りましたぜよ。こちらは手にしてみると数段扱いやすく思いましたが、実は元になった刃物は中国の竹職人さんが使われていた物だそうです。大陸の方では、この一本で竹割からヒゴ取りまで器用に使いこなして何から何まで事足りちゅうがです。


そう聞いて思い出すのが中華料理の料理人の方が使う包丁ぜよ。確か、大きな中華包丁一本で大きな肉片もぶつ切りするし、細やかな飾り細工も器用にされていたように思うがです。もしかしたら、大は小を兼ねるという発想ですろうか?何でも大きな刃物で使いこなすのが中国の職人さんの流儀なのかもと想像するがです。


持ち手部分を改良した竹職人さんによれば、使いだすと手放せないくらい使い勝手が良いそうですぜよ。竹細工は、もともと大陸から日本に渡ってきてから、日本人の感性に合うように変化させてきた歴史がありますきに、このような刃物も自分たちの仕事に取り込み、使いやすいように変化させていくのは、ごく自然な事かも知れませんぞね。


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