ブランケットの心使い

メゴ笹洗濯籠


このメゴ笹の籠は、瑞々しくて、竹肌の手にしっくりと馴染んだ感じがエイにゃあ。使い込んだ籠にはない、ズシリと感じる質感もたまらんにゃあ。出来たら、ずっと自分の手で提げて行きたいにゃあ...。そう思うて荷物で送る事は止めたのです。空港に行ってから「ありゃあ!」と思いましたぞね。田舎者なので考えもしませんでしたけんど、もしかしたら、こんな大きなサイズは持ち込めないのではないろうか?手荷物でいけるのかにゃあ?心配したとおり、声をかけられます。


「これは何ですか?」


何ち、見たら分かりますろう。冬いうたち、南国土佐は日差しも強いですきに。


竹虎四代目と籠


「帽子です(無理矢理)」


お預かりする事もできますが?


「大事な物なので、とても預けられんがです」


そんな無理を言わせて頂いて、検査場を通過して何とか機内まで手に持って入る事ができてホッと一息ながです。けんど、今度は手荷物棚に入れられません。前に楽器を運ばれる奏者の方が二席分予約しておいて、隣の席に大切な楽器を置いておくと言うような話を聞いた事がありますけんど、さすがに、そんな事はできませんぞね。棚に入れるのに四苦八苦しよりましたら、客室乗務員の方が来られて手伝ってくれます。


機内荷物棚


なかなか上手く収まりませんでしたが、さすがに手慣れちょります。何とか斜めに固定して頂いて棚の扉も閉める事ができたので安心して眠ることができたがです。さて、飛行機が到着してメゴ笹籠を取りだそうと扉をあけると、


ややっ...!?


何とビックリしましたぞね。知らない間に籠の下にブランケットが敷かれちゅうではないですか!?客室乗務員さんが笑顔で言うてくれます。


「お客様が、とても大切に持たれていたので...」


まっこと、さすがに人をよく見てくれちゅうぞね。大事に運んでいるのを知ってくれていたようですちや。仕事とは、人に喜ばれる事だと思いますが、本当にこのような心くばりには感動するがです。


大きな竹籠を持って、乗り物に乗って行くなど、宅配もあるし、何でも便利になっている今の時代にはあまり考えられない事ではありますが、お年寄りの職人さんからお話など聞くと、交通機関の発達していない昔は生産された竹製品を沢山手で提げて、あるいは背負って遠くの取引先様まで運ぶのは普通の事でした。たった一つの竹籠を提げて行く事と、ご苦労も多かったと思う昔の事とは比べものにもなりませんが、大変な思いをしながらの旅だからこそ、もしかしたら、たとえ本当に小さな親切であったとしても、心に染みたのではないかと、つくづく思うがです。


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