和傘の思い出

和傘


和傘と番傘は呼び名は違いますけんど、ほとんど同じものですぞね。竹と和紙を使うて作られた日本伝統の傘ですが、少し持ち手の竹も太く、骨太で無骨な感じがするのが番傘、女性向きの少し繊細な傘を和傘というように自分は呼びよります。実際に和傘を使うた事のある方ならご存じのように、この傘は決して機能的には出来ちょりません。


そもそも、まず重たい、そしてかさばります。例えば洋傘のように折り畳んで鞄の中に入れられたり、細くスマートに巻けたりできません。なので出張などには絶対に持って行けませんし、お出かけの際にも荷物になって邪魔になってしまうので、本当に使える機会というのは年に何度かあれば良いほうですぞね。


けんど、自分は20代の頃、母から譲られた番傘をずっと愛用しよりました。高知は車社会で、何処に行くにも車なので、あまり荷物に感じていなかった事と誰も持っていない特別感、何より雨の日も良いものだなあと心から思えるような豊かな気持ちになれたのです。もちろん、働き出した竹虎が元々は和傘の骨竹を扱う事から創業した、そんな思いも、ちっくとあったがですぞね。使った後には雨でぬれた傘を、いちいち土間に干さねばならない、手間のかかる所も可愛いと思いよったがです。


和傘


手入れの行き届いた竹林は和傘を差して歩けるほど、竹と竹の間隔をゆっくり開けて竹を育てゆうがぜよ。和傘には竹が欠かせないというだけではなく、竹虎との深い縁も感じてボロボロに穴があくまで使うたがです。洋傘の穴の開いたものなど見られないと思いますが、和傘の少し古くなった感じは返って渋いと何人もの方に言われたにゃあ。懐かしい思い出ではありますぞね。


番傘の柄を黒竹にした特製傘を製作いただいて、再び雨の日を心待ちにする日がやってきたがです。この傘は竹骨の一部分に朱赤で色が付けられちょります。閉じている時には赤いラインのように見える傘が、開くと赤いラインが消えて白い蛇の目模様が表れる色使い、優雅という言葉は自分にはあまり似合いませんが、ちっくとゆとりを持って雨の日を楽しむのもエイものですぞね。


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