託された竹根茶碗

 
竹根茶碗


もう随分と前に祖父が職人さんから頂いて来た竹根細工があったのです。竹根というのは文字通り竹の根の部分であり、土の中に埋もれちゅうところを活用しますので、竹の稈以上に、一つ一つの個性があり大きさも違えば形も違いますし、細かい竹根の出方など全く別モノというほど違うのです。竹根職人さんは、そんな違いこそ楽しむかのように、それぞれの大きさや形を活かした風合いの作品に仕上げられちょりました。実はその中で、ちょうどご飯茶碗として使い勝手の良さそうなものがあり、ひとつ頂いて自分用として長い間愛用させてもらいゆうがですぞね。


竹茶碗と竹虎四代目


しばらく竹根細工の職人さんは不在の時が続き、いよいよ竹根の作品もなくなってしまいそうな、ある日、たまたま偶然が重なってひとりの職人さんとご縁ができ、竹根茶碗を再び店頭に並べられるようになったがです。今までの職人さんの作風が軽やかで都会的でもあり、垢抜けたセンスを感じるとするならば、今度の職人さんの作り出す茶碗には、そのような洗練されたものは無い代わりに手に馴染む温もりがあります。ふたつとして同じような形も色もない竹根茶碗を眺めるとき、きっと職人さんも同じように見ていたのではないろうか?そう思えて仕方がないのです。


竹根茶碗


「病気になった、もう作品は作る事ができない。」


最初、職人さんから言われた時にはショックで声がでなかったほどぜよ。あんなに元気に工房で竹と向き合われていた方なのに...。けんど、次の言葉にハッと自分を取り戻したがです。


「手元に残る作品を竹虎に託したい。」


この言葉には感激して熱くなりましたぞね。自分が遺していく作品たちを託していただける事が光栄で、また、職人さんの思いを受け継いでいかねばならない責任を感じ、自分がずっと愛用してきた竹根細工の良さを皆様にお伝えしながら、作品がある限りご紹介していくつもりながです。


竹根器


けんど、それぞれ違いがあって、それぞれが素晴らしいちや。形や色合い、大きさだけでなくて重さや手触りなども違う、そんな竹根茶碗を見ていたら時を忘れてしまいそうぜよ。


竹器


竹根茶碗の特徴は何というたち、その細かい根っ子の模様ですぞね。大きな木材から、くり抜いた器であれば、このような模様や、形は生まれることはないのですが、自然そのままの竹根をできるだけ活かし、模様や形まで、個性を伸ばしきって創作しちゅうところに、この竹根茶碗の魅力があると思うちゅうがです。


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