竹と香港生鮮市場

香港生鮮市場の竹籠


香港の市場では竹籠が一杯ですぞね。もちろん、竹の足場に鉄材のような新しいものかあるように野菜や魚など入れて保管したり、運ぶための籠としてはプラスチック製の物、金属製の物も多いがです。けんど、それでも「竹」がこれだけ多いのは、どうしてですろうか?


Hong Kong店頭の竹籠


店先に吊してある竹籠は日本でも見かける事はありますぞね。自分の小さい頃には近くのお店でも吊られた籠に、お釣りやら、伝票のような紙類やら店の人は何でも入れてました。とにかく忙しい店頭では、無くてはならない道具やったのです。


Hong Kong bamboo basket


路面に出した店頭で販売される野菜や果物を入れる籠として竹編みの籠が多く使われているのが目につきます。段ボールや他の容器に比べて竹籠に入れられた野菜は美味しそうやにゃあ。見た目が全く違うので、当然お客様からすると竹籠に入られた野菜に、ついつい手が伸びる事があるかも知れません。


Hong Kong bamboo basket竹籠


この市場は路面店だけでなくて、建物の中に入ると一階、二階部分が同じように肉屋さんや八百屋さんが軒を連ねる市場になっていて、その店頭の奥の方や、裏の通路あたりでは届けられた野菜を水洗いしたり、切って選り分けたりしています。そこは普通はあまりお客様の目には触れる場所ではないと思いますが、実は、こんな現場でこそ使われているのが竹籠やったのです。


Hong Kong bamboo basket


数人の女性の方が店の脇でモヤシでしょうか?野菜を洗いよりました。「写真撮ってエイですか?」訪ねると、重なっていた竹籠を除けて撮影しやすくしてくれましたぜよ。なるほど、ここでは野菜の水切りとして竹籠を使いよります。晴れ渡った朝の気持ちのよい空気の漂う中で、キビキビと働く皆様と一緒で竹籠も何やら張りきっているように見えるのです。


自転車に積んだ竹籠


「シャーーーーー」ふと見ると自転車が前と後ろに竹籠を乗せて走っていきます。おおっ!格好がエイが違うぜよ。日本でも、竹籠が自転車やバイクには必ず付いていた時代がありますちや。太い骨太のフレームの自転車の荷台に決まって取り付けられていたのは御用籠などと呼ばれちょった四角い形をした竹籠。力竹が何本も入った、こじゃんと(とても)丈夫な作りで荷物を沢山積んで、ちょうど同じように走っていたのです。


香港の御用籠


そんな事を思い出しながら歩いていくと何と、その先に!御用籠と同じような形の竹籠を発見しましたぞね。竹表皮部分を利用して編まれた籠と違い、竹の身部分を多用しいる籠は強さという面では劣りますので、これからの籠はもしかしたら掃除用かも知れませんにゃあ。自分の若かった頃までは竹虎の工場でも、端材などのゴミ箱として例外なく全部このような竹編みの籠が使われちょったのです。


香港市場の竹籠


日本の場合には急速に消えていった竹籠たちですけんど、香港では、まだまだこのような市場で現役で使われちょります。プラスチック製のもの普及している一方で消えずに残っているのは、やはり、使いやすさ、耐久性、機能性に優れているからですろう。


けんど、たとえばプラスチックよりも強いと言うと「えっ?」と疑問に思われる方も少なくないのかも知れません。ところが、市場での竹籠達の使い方をご覧いただくと、なるほどと納得されるのではないでしょうか。どのような使い方をしているのかと言うと籠に一杯入った野菜類を手かぎで引っ掛けて引きずって運んで行くのです。


Hong Kong bamboo basket


このように、引っ掛ける、引きずるなど手荒に扱う場合には竹の柔軟性、しなやかさが活きてくるがです。竹そのものの素材としての強靱さ、耐久性という特性がありますが、その素材を編み込む事により、竹籠はショックを上手く吸収し、分散させ逃がします。これがプラスチックの容器だと衝撃で破損しかねないのです。また、水を使う事の多い市場内は湿気の多い環境です。そのまま置いておくにしても通気性もよく、軽く扱いやすい竹が昔から今現在までずっと愛用されている理由は、まさに、ここにあるのです。


市場路地裏の竹かご


市場の路地裏には、こうやって仕事を終えた竹達が重なってひと休み。パッと見には粗雑な荒くれ者のようにも見える籠ですが、いざ力仕事となったら頼りがいのある市場に無くてはならないタフガイ達。やっぱり人の役に立っちゅう竹は生き生きして素晴らしいぜよ。


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