虎竹の里の竹根


  日本唯一虎竹の竹根


「痛いっ!」そんな声が聞こえたような気がしたがです。さっきまで降り続きよった小雨は、ようやく止んだようで曇り空を見上げます。


竹の根は、しなりがあり、強く、昔から杖にしたり、様々な竹製品に加工されてきた素材でもありますが虎竹の里で竹根を採ることなど考えたら今まで一度もありませんでした。今回、作家の方のご要望で竹根を用意させて頂くことになりました、あまり深く考えちょりはしまんでしたので、山主さんも切り子の職人さんも快く了解いただけるものとばかり思いよりました。


その竹林から出される竹も、竹虎で全て引き取らせて頂きます。取材やインターンシップなど特別な機会の場合には季節外れであっても1~2本竹を倒すことがあり、その都度お断りをさせてもらうのですが今まで一度たりとも断られるなどという事は経験はなかったのです。たがら、まあ「一応お断りを入れておく」。軽い気持ちではありませんが、自分の中では、竹根も、竹と同じように了解いただけるものとばかり思いよりました。返事がなかなか来ないのも、当然大丈夫だからと思っていたのが思慮の至らない所やったがぞね。山の職人さんは困って、返事がしにくくて、どう言うてエイか分からず遅くなっていたのです。


「それだけは、どうぞ、こらえとうせ」


最初は何かの行き違いかと思うた程やったです。竹林の中の竹根を掘り起こすワケではありません、道ぶちなどに飛び出している竹根を切りたいと思っているのです。ところが、その竹根すら、竹の品質や竹林の成育に何の影響があるかも知れないと、どうしても首を縦に振ってくれないのです。


竹虎には、祖父が苦労して買った虎竹の里で一番広い竹林があります。竹根を用意せねばならない当日の朝、仕方がないので焼坂の上まで登り竹虎の保有する竹林にやって来ました。雨もあがりかけた竹林や木々には靄がかかり、優しい雰囲気で出迎えてくれます、川のせせらぎを遠くに聞きながら急な山道をゆっくり歩きながら考えました。自社の持つ、この竹林の竹根を切る事すら、山の切り子に言わせればエイ顔をしない...、この広い竹林を管理し、全てを知り尽くしている専務の言葉を思い返して立ち止まりました。


そこまで思うて、この竹林で仕事をされてきたのか。竹虎がこの虎竹の里の竹に出会うて、わずか100年。この地の竹はそれ以前にも土佐藩山内家へ年貢として運ばれてきた地域の宝。地域の誇り。誰一人として口に出す者はおりませんけんど、どこかにそんな受け継がれてきたDNAがあるがやろう。


まっこと、自分が浅はかやった。


虎竹の竹根


虎竹の山出しに使う、この細い山道には誰が築いたとも知れない石垣があるがぜよ。急斜面の窪地に小さな石を無数に運んで来て積み上げられちゅう、細く、曲がりくねった道やけんど、こうやって難なく通れるのは、この石垣を一つ一つ積み上げて下さった方のお陰。下の車道もそうです、舗装されていない、こんな山深い山道にも関わらず、ここまで石コロひとつ落ちていなかった、轍も綺麗に整備されちょった。虎竹の里は竹への愛の満ちちょります。


「痛いっ!」そんな声が聞こえたような気がしたがです。さっきまで降り続きよった小雨は、ようやく止んだようで曇り空を見上げます。


本当なら竹根は、地上に出てくる稈の部分と違い、この虎竹の里の地から離れず、ずっと此処にあって竹林を守っていくもの。だからか地面から離される時、そんな悲しそうな声が聞こえるのかも知れまんにゃあ。けんど、おまらあ心配せんでエイき。この竹根が、どんなに形を変えて、これから多くの人を楽しませ、喜ばせ、和ませるか。それを知っちゅうき、今日、おまんらあを連れていくがやき。


約束を違えるようなら、この気持ちに嘘があるやったら命までとは言わんけんど「ワシの指でも腕でも好きに切り取っとうせや。」そう竹の神様に言いながら竹根を切り取ったがです。













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