中学校から全寮制の学校でしたので入学時には自分用の衣類はプラスチック製の収納ケースを運んで部屋に入りました。もう何十年も前の話ですけれど衣装ケースと言えば軽いプラスチック製か、少し丈夫な金属製かのどちらかで誰ひとりとしてスズ竹で編まれた衣装籠など持っている生徒はいませんでした。
当時の事なので恐らく自宅ではまだ使われていた人もいたはずですが、さすがに小さな子供にわざわざ竹行李を持たせる親などいません。安価で扱いやすいプラスチック製のケースがいくらでもありました、竹はこうして忘れられていったのです。
プラスチックなどとは比べ物にならない通気性があり、プラスチックのように割れたりすることもありませんので持ち運びや使用時の耐久性も格段に上。さらに使うほどに色合いと光沢が深まり愛着が増して手放せなくなりますから、そもそも同じに考えること自体が間違い、まさに別次元なのです。
衣装を収納するのには柳行李か、このスズ竹行李かという時代がありました。柳行李も非常に堅牢性の高い自然素材です、そして同じように用途にあわせて色々なサイズが作られていました。
柳行李もスズ竹行李も良質の素材や職人が少なくなり製造数は激減していて、それが竹の一閑張行李を製作することにした背景ともなりました。竹素地に土佐和紙を貼って柿渋で仕上げた自然素材の衣装籠をだすと猫ちゃんも自然近寄って昼寝をはじめます。竹のある暮らしで作りたいワンシーンです。
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