知られざる最後の箕職人

 
土佐箕


には穀物などの塵を除去する農具の他に石箕や土箕、手箕など土木作業用に使われるものがあります。個人的には全寮制だった明徳中学の頃に、野球部のグランド整備や寮周辺工事を手伝うために良く使っていた竹製の手箕に馴染みがあるのです。職人から譲られた、ある大学教授が調査した資料を見てみると四国地方、中国、近畿地方を中心に西日本には33カ所もの竹箕の産地があって、全てが網代編みの箕でした。


カズラ箕職人


しかし、この箕は製作の難しさから竹細工の中では一番に姿を消してしまい産地の一つに数えられる土佐箕の作り手も一人しか残っていません。箕を使う農家さん自体が少なくなっているので需要もなく国産の箕は忘れられてしまっているのです。


箕


だから、このように数種類のサイズ違いの箕など今の日本で見ること自体がかなり貴重な事です。箕が必需品だった頃の名残のようにしか思えません。


カズラ箕


ところが、今年も箕を数百枚単位で編み続けられている職人がいます。この数の箕を見ると日本では無いと言われそうですけれど、まぎれもなく地元の真竹を使った国産の箕なのです。この量に圧倒されて品質の良さを見逃してはいけません、箕先の竹ヒゴの折り返し部分など惚れ惚れするような美しさです。


病人を箕であおいで邪悪なものを取り除く風習は全国各地にあったと聞きますが、箕は少し特殊な竹製品でもあり、仕事の道具としてだけでなく信仰や儀礼とも深く結びついています。そもそも竹自体が驚異的な生命力から、「松竹梅」と縁起ものに数えられますし、古来祭事や神事に使われてきて全国に竹関連の祭事は何と869カ所もあるのです。そして、そんな神秘的な竹で編まれる竹箕は、農作業で使われなくなった後も、福をすくい取る「福箕」として、ずっと生き続けてきました。




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