10年の経年変色、竹玉編みソファ

経年変色の竹ソファ


先週閉幕した世界竹会議台湾は、日程により新竹の台湾新竹市の国立陽明交通大学(National Yang Ming Chiao Tung University)の第一会場で開催したあと、南投県草屯の国立台湾工芸研究所( National Taiwan Craft Research Institute)の第二会場に場所を移した。台湾の竹産業は竹材の豊富な南投県に多いようで、竹職人さんもこの辺りで活動されている印象だ、10年前にお伺いした時にも南投県の青竹竹芸文化園に連泊して、各所を見学させて頂いた。


経年変色の竹ソファ


そこで感銘を受けたのが、今回の会場ともなった国立台湾工芸研究所でご案内いただいた竹ソファだったのだ。球形にした竹編みは、日本では照明などに使うのでたまに製作する事もあるが、繋げてこのような家具として創作するのなど思いもよらなかったので本当に驚いた。


経年変色の竹ソファ


そもそも台湾の竹工芸の先進性が何故なのか?知りたいと思って訪台していたので、まさにその神髄に迫っているような感慨に胸躍ったことを今でも覚えている。


10年前の竹ソファ


さて、そこでどうしてもお話ししておかねばならない事がある。実は自分が以前に国立台湾工芸研究所を訪れたのは2014年、ちょうど10年前になる。その時には竹ソファは、このような色合いだった。


2014年の竹編み


「磨き」と言って竹表皮を薄く剥いだ竹ヒゴを使う竹細工の技法で、青竹の表皮をそのまま活かした竹編みとは又風合いの異なる仕上がりで人気があるのだが、一番大きく異なるのは、その経年変色だ。


古い竹籠


同じ籠でも、口巻に磨きの竹ヒゴ、本体編みに表皮の付いた竹ヒゴを使っていると、数十年経過した経年変色はご覧のように、これだけの違いがある。


2024年の竹編み


竹は長く使えば使うほど色艶が深まり、手に馴染んで一生の友となる存在だ。このような美しさを、これからも伝えていきたいし、多くの方に知ってもらいたい。ここに鎮座している竹ソファは革新的な創りでありながら、この古から続く竹細工の変わる事のない価値を伝えてくれているという点でも素晴らしいものだ。




竹編みのボールといえば、思い出す竹照明を動画にしています。同じ竹を使った、同じような竹細工に、国や地域は異なってもボクと同じような懐かしさや嬉しさを想う竹人がきっといると思っています。



竹トラッカー!世界竹会議で危機一髪

竹トラッカー撤収


第12回世界竹会議台湾は無事に閉幕した、国立陽明交通大学特設コースでの虎竹EV「竹トラッカー」の走行もトラブルなく終える事ができた。そして、帰国のため台北港まで運んでもらう大型トラックが最終日夕刻には積み込みのために会場にやってきた。


台座


ところが、トラブルは最後の最後にやって来た。搬入時に使用した木製台座に竹トラッカーを載せようとしていたが、狭いトラック荷台の上では手押しでは、なかなか丁度の位置に着ける事ができない。そこで、自分がエンジンをかけて載せる事にした。


台座の穴


竹トラッカーをバックさせながら、慎重に台座にはピッタリと載せていく。ああ、もう大丈夫と思ったところで急に「ガタンッ!」と右タイヤが沈み込んだ!台座の板が折れて大きな穴が開いたのだ!


竹製EV、台座破損


顔が青ざめた、このままでは帰国できないのではないか?台座の床板は薄すぎるとは思わないけれど、小型とは言え重量のある竹トラッカーだ、もっと丈夫な板材を使うべきだったかも知れない。


世界竹会議台湾


とにかく、異国での不測の事態は何ともしようがない。ドライバーさんとあれこれやっていたが、穴を塞がないと何ともしようがないのだ。辺りは、いつの間にかすっかり暗くなっていた。


竹EVトレーラーに積み込み


結局、この場では台座に載せることはできないので、このままトラック荷台に竹トラッカーを固定して倉庫まで運んでもらう事にした。これは、竹虎本社から神戸港など国内輸送する時と同じ要領なので安心だ。


竹トラッカー撤収


倉庫に帰ってから、壊れた台座を板で補強した後に改めて竹トラッカーを載せてもらう事にした。3日間、沢山の方に声援いただいた疲れを取りながら日本に帰って来てもらいたい。





台湾国際竹芸フォーラムにて竹虎四代目講演

台湾国際竹工芸フォーラム


今回の第12回世界竹会議台湾は、新竹の国立陽明交通大学で3日間の日程の後、会場を竹の本場である南投県、国立台湾工芸研究センターに移して開催された。こちらには、ちょうど10年前にお伺いした事があったのだが強烈な印象に残っていた竹編みソファが素晴らしい経年変色をしていて感動した。


台中市繊維工芸博物館


感動の竹編みソファのお話しは改めてさせていただく事にして、今日は国立台湾工芸研究センターから車で30分程度走った所にある台中市繊維工芸博物館にお招きいただいた台湾国際竹芸フォーラムのお話しをしたい。


李栄烈、徐暋盛、施恵関、竹虎四代目


台湾の竹工芸のレジェンドであり、日本の人間国宝にあたる重要伝統芸術保持者であられる李栄烈先生、盛志華台湾竹美術館館長の徐暋さん、台湾竹工芸の竹彫り師である施さんとご一緒させていただいた。


台湾国際竹工芸論壇


主催が国立統一大学研究開発室イノベーションインキュベーションセンターと言うところで、もしかしたら学生さんが多いのかと思っていたが、ほとんどか一般の方たちばかりで台湾の皆様の竹への関心の高さを感じた。共催が台中市文化局、台湾竹工芸協会というのも竹産業が盛んな証だろうかと思ったりした。


台中市繊維工芸博物館での竹虎四代目講演、竹トラッカー


講演では、自分達の地域資源として江戸時代から続く虎竹文化の話を中心に、日本の竹細工、竹製品をお伝えするつもりだった。


台湾国際竹工芸論壇


ところが、前日に国立台湾工芸研究センターで出会った竹職人さんと、10年ぶりに再会した竹ソファに感激してしまって講演を半分やりかえる事にした。


亀甲竹、台湾講演


これは亀の甲羅のような形が独特な亀甲竹という竹だ。左右の色合いの違いは日本の古民家にあった囲炉裏の煙によって色づいたものである。台湾のような暖かな地域では、あまりご存知ないのではないかと思って用意していたが、竹の経年変色の価値について重点を置いてお話しする事にした。


国際竹芸フォーラム、竹虎四代目(山岸義浩)


台湾国際竹工芸論壇


ちょっとしたトラブルもあって、PCが変わるとパワーポイントの動画が動かない(笑)。仕方がないので後で竹虎のYouTubeチャンネルをご覧くださいとお願いした。「竹虎YouTubeチャンネル知っていますか?」そんな問いかけに、本当に多くの方が挙手いただき驚いた!


台湾国際竹工芸フォーラム、竹虎四代目(山岸義浩)


竹の経年変色の美しさは万国共通ではないだろうか?


台湾国際竹工芸論壇、竹虎


台湾国際竹工芸フォーラム、パネルディスカッション


パネルディスカッションでは、話しながら自分達の課題が見えてくる。


台湾国際竹工芸フォーラム


竹虎なのでタイガーポーズをいつもお願いしています(笑)今回は一体何度このようなポーズをとったろうか...。機会があればまとめてみたい。



世界竹会議台湾(12th World Bamboo Congress Taiwan)について

世界竹会議台湾会場


世界竹会議台湾も、今日で3日目となった。世界30カ国から200名を超える竹の専門家の方が集まられているが、竹産業の盛んな地元台湾からの皆様を入れると400名規模の会議となり非常ににぎわっている。


12th World Bamboo Congress Taiwan、新竹国立陽明交通大学


虎竹製EV「竹トラッカー」も沢山の方にご覧いただき、特設コースを走らせていただいて感激している。当日昼前までの悪天候がウソのような穏やかで、心地のよい風の吹く絶好のコンディションで竹トラッカーにとっても本当に恵まれていた。


12th World Bamboo Congress Taiwan、新竹国立陽明交通大学


12th World Bamboo Congress Taiwan、新竹国立陽明交通大学


自分たちの虎竹の事をはじめてとして竹を目にして頂く機会や、お話する事は多くはないので、政府の方や会場となっている国立陽明交通大学々長様などを前に非常に貴重な時間をいただいた。


林務局 林華清局長


日本で言えば林野庁に相当する、林務局からお越しいただいた林華清局長様に竹トラッカーに同乗してもらい少し走らせてみた。台湾は、竹への関心や理解が深いといつも感じているけれど、この時にも同じような感想を持った。そんな土壌のある台湾での今大会を契機にして、竹が新たなステージに進んでいけば良いと思う。





恵みの雨、虎竹の里と台湾新竹

虎竹の里、竹虎四代目(山岸義浩)


雨が降ると竹林の仕事はお休みだ、急峻な山道の続く虎竹の里では機械も入る事ができなくなる。しかし、雨の後の竹林は格別でもある、やさしい陽射しが差し込んできたりしたら、知らない方でもここに何か不思議な存在がある事を感じずにはいられない神々しさだ。


虎竹


この美しさはどうだ。恵みの雨に歓喜している虎竹たち。


虎竹、tiger bamboo


竹表皮が濡れた虎竹は、まるで油抜きをしたかのように艶やかに輝き、模様が浮き上がってみえる。だから数十年も虎竹選別をしてきた熟練も、分かっているつもりでも目を奪われるので、夜露が乾くのを待ってから仕事をしていた。


世界竹会議台湾、Michel Abadie、竹虎四代目(山岸義浩)


ここ台湾新竹は風の強い所だと言う。激しい雨と風で、覚悟して臨んだ第12回世界竹会議台湾(World Bamboo Congress Taiwan)だが、日頃の行いか?やはり竹の神様に違いないのか、竹トラッカー走行の時間が近づくと嘘のように晴れ間が広がった。虎竹の里がそうであるように、晴れた後には格別の景色が広がっているものだ。



竹トラッカー無事到着、世界竹会議「台湾見」

虎竹電気自動車「竹トラッカー」


いよいよ明日から世界竹会議台湾が開催される。とにかく何にせよ今回は虎竹電気自動車「竹トラッカー」が無事に台湾に到着しているかを気にしていた。前回の、日本から太平洋を横切ってメキシコはマンザニーロ港から1000キロも走ったハラパの町に竹トラッカーを届けた時よりも何倍も気にしているのは、台湾の会議では、わざわざ専用コースを用意していただくほどの竹トラッカーへの期待を感じているからだ。


虎竹電気自動車「竹トラッカー」


すでに台北港に到着して税関も通過して倉庫に到着している。本日、午後には70キロ離れた竹会議の会場まで陸送される予定なので無事に到着してもらいたい。


虎竹電動車


台湾新竹市の国立陽明交通大学(National Yang Ming Chiao Tung University)に設置いただいている特設コースは2キロある。ちょうど、寿命がきていたリチウムバッテリーも新品に交換しているので、距離的には心配ない。


虎竹電気自動車「竹トラッカー」


今度も色々な方にお世話になり、お力添えをいただいて実現したので是非無事に3日間完走させたいと思っている。


electric car Bamboo Tracker


とにかく、今日の夜には会場に設置された竹トラッカーに再会できる予定なので、バッテリーや足回りが長旅で不具合出ていないか、しっかり確認したい。台湾の、世界各地からの竹人の皆様「台湾見」。





タイワンマダケ・桂竹(けいちく)とは?

タイワンマダケ・桂竹、竹虎四代目(山岸義浩)


いよいよ明後日から台湾での世界竹会議だが、今回は更に台中繊維博物館で開催される国際竹工芸フォーラムにて講演させて頂く予定だ。台湾には優れた竹工芸が数多くあるけれど、その竹の技を支えているのが、前に現地を訪れた際に良く見かけたタイワンマダケではないだろうかと思っている。そこで、今までは見るだけだったタイワンマダケを実際に手にしてみる事にした。


実は、台湾真竹は日本にも1913年に導入されたと言うことで、数量は多くはないが成育している。耐寒性もあると言われるけれど、元々が温かい地域に育つ竹なので日本ではあまり太くならないようだ。同じ「マダケ」と名前が付いていても、一番異なっている所は筍かも知れない。タイワンマダケは柔らかく甘みがあり食用としても多用されると聞くが、日本の真竹は「苦竹」と書くこともあるように苦みがあるからか筍を食する機会は少ない。


タイワンマダケ・桂竹


そんな台湾真竹は、桂竹(けいちく)とも呼ばれており、見た目はスッーと節間伸びた美しい姿だけれど、実際に触ってみると節も低く竹編みにしやすそうな竹材だ。


台湾干しざる


台湾では人の暮らしの中に、まだまだ竹ざるや竹籠が普通に使われていて嬉しくなった覚えがある。


台湾真竹・桂竹


割って竹ヒゴにした感じは粘りがあり、やはり竹細工には適しているようだ。


台湾竹籠


そう言えば、産地に行けば色々な竹籠があったのを思い出す。もしかしたら全く知らない竹を使った、想像もしない「竹」に出会えるのではないか?あるいは日本と同じ竹に感動するのかも。竹は知れば知るほど奥が深い。



京の筍2024

京都の筍


竹の旬と書いて「」、まさに季節ならではの美味が、今年も本場京都から届いた。この丸々とした形は早堀筍と言って、まだ地表に顔を出す前の筍を専用の道具で掘り出して収穫されている。地面から大きく伸びた馴染の筍も食べ応えがあって美味しいが、さすがに京都の雅を感じさせる筍は味も上品だ。できるだけ早くいただかねばならないので早速美味しく頂戴した。


筍、竹虎四代目(山岸義浩)


竹林には地下茎が縦横無尽に伸びていると、いつもお話しさせていただくが、そんな地下茎から毎年こうして筍が生えてくる。あそこにも!ここにも!と思ってみていると、竹林は本当に筍だらけだったりする。


孟宗竹タケノコ


そして、その筍の成長力が凄まじい。十分な水分があれば、1日に1メートル以上も伸びて行くので、少し山に行かないと、竹林の景色が変わって見えるほどだ。


孟宗竹、竹皮


現在、竹の利活用は全く不十分だが、ほんの数十年前までは多くの竹林が人の手によって管理され、筍が大きくなる過程で脱ぎ落としていく竹皮までもが製品として収入の一部になっていた。


孟宗竹


それにしても、さきほど竹ざるにのせていた小さな筍が、わずか3カ月でこのような20数メートルの大きな竹になるなんて信じられるだろうか?神秘的とも言える竹の力、持続可能な社会にむけて竹の果たす役割はもっとあるのではないか?そんな問題提起が、今週はじまる世界竹会議台湾でも交わされる。





竹笠の季節

竹虎四代目愛用の国産竹網代笠


今日も朝から随分と暑い(笑)、締め切った倉庫に入るとムッとする熱気で、もう夏がやって来たのかと思うほどだ。日差しも段々と強くなってきた、まだまだ太陽の光が優しいなんて油断していたら大間違い。確か真夏よりも、4月から5月あたりの方が紫外線の量は多いと聞いた事がある。そこで屋外に出る時に活躍するのが竹笠だ。




実は、日頃の生活の中では竹笠を被る機会はそれほど多くはないけれど、ずっと前から国産の竹笠を個人的に持っていた。その笠をモデルにしてもらって復刻した国産竹笠の細やかな編み込みを動画でご覧いただきたい。


竹笠、流鏑馬笠


竹網代笠の他にも、流鏑馬笠や托鉢笠など、かなりレアな笠を並べている。「こんな笠を被ってる人なんて見た事ない...」、確かに皆様が想像されるように需要が多いわけでは無いし、探せば海外製の笠がいくらでもあるのだが、せっかく残されている伝統の技が消えてしまうのは残念だと思って復刻させている。


竹網代笠


しっかり編まれた国産竹笠を大事に、年々深まる柿渋の色合いを楽しんでもらいたいと思う。





旅の相棒、虎竹パスポートケース

虎竹パスポートケース


とにかく田舎者なので海外に行くと目が回る(笑)。日頃なら考えられない事をしてしまう場合もある、ジャカルタのスカルノハッタ国際空港がそうだった。あまりの空港の広さに驚いた、乗り換える飛行機にどうやって行けば良いのか皆目分からない。一番最初に作ったプロトタイプの虎竹パスポートケースを手に迷ってしまい、締め忘れたジッパーからパスポートはじめチケットやら何やら全てをロビーに落としていた!


虎竹パスポートケース


自分でも、そんな事するのか?と今でも思うけれど、実際に落としていたのだから仕方ない。親切な現地の方に声を掛けてもらって紛失は免れたが、知らない土地では平常心を失ってしまう事があるのだなあと、しみじみと感じた。ちなみに、その後も親切な現地の方に出会ってシャトルバスに乗る事ができ、さらに親切な方に降りるターミナルで「ここだよ」と教えてもらい乗り継ぎの飛行機に間に合った。


虎竹パスポートケース


帰国してからパスポートケースは、ジッパーが開いていても中身が落ちないように革仕切りを工夫した。海外では大事な相棒、少し重くて硬い本体だが作務衣の内ポケットにスッポリ収まる虎竹を一生使うだろうと思っている。



忘れられたミカン籠(竹編み盛り籠)

鉄鉢竹籠


昭和の時代、家族の集まる居間には必ずと言っていいほどコタツがあって、その上には決まって竹編みの盛り籠があった。おじいさん、おばあさんから、お孫さんまでが揃ってミカンを剥きながらテレビを観ると言うのが冬の定番だったからミカン籠とも呼ばれたりしていたが、「ミカン籠って何ですか?」と声が上がる。


竹職人


果樹園を経営する友人が、当時と比べて今や柑橘類をはじめとした果物の消費量は半分になっていると話す。なるほど、コタツは無くなる、テレビは無くなりスマホでそれぞれが部屋で楽しむ、そして果物は食べないとなれば、ミカンを入れる盛り籠は知らなくて当然かも知れない。


ミカン籠


しかし、そんな時代の流れの中でも細々ながらも生き続けている、かつてのミカン籠の代表選手のような鉄鉢籠。修行僧が托鉢の時に用い鉄の容器に形が似ているから名付けられた竹籠で、当時は何種類もサイズがあり沢山編まれていた中から、今では一番手頃な大きさを作っている。


虎竹盛り籠


先日、たまたま手の平サイズの小振りな竹籠の別注があって、職人が久しぶりだと楽しそうに編み出した。実は籠は小さいものが手間がかかり難しいが、ちょっとした小物入れに最適なカワイイ虎竹鉄鉢が完成した。





地震に負けるな、いよいよ来週開催!2024世界竹会議台湾(World Bamboo Congress in Taiwan)

世界竹大使、World Bamboo Ambassador


いよいよ台湾で開催される世界竹会議が来週に迫ってきた。実は台湾の竹工芸や竹の活用は、日本などよりも先進的で非常に面白い。もう10年前になるけれど、新しい竹を生み出す源泉をどうしても知りたくなって主だった工房を回り、職人さんにお会いさせていただいた事がある。


そもそも何より竹と人の暮らしが、まだまだ色濃く残っていて、ワクワクするような空気感が漂っていた。そんな台湾で開催される第12回目の世界竹会議、一体どんな新しい竹と人に出会えるのか今から楽しみで仕方ない。一応、ボクは日本に二人だけの世界竹大使(World Bamboo Ambassador)となっているので出来るだけの事はしなければならないと思っている。


世界竹会議台湾(World Bamboo Congress in Taiwan)


そこで、少しでも会議が盛り上がり台湾国内外の耳目が集まればと、虎竹電気自動車「竹トラッカー」が登場するのである。ちょうど本日、予定どおり台北の港に到着するとの連絡をいただいて安心したところだ。今回は輸送についても、これほど手間と時間がかかってしまったけれど、それに似合うだけの成果を期待している。


世界竹会議台湾(World Bamboo Congress in Taiwan)竹トラッカー走行コース


新竹市の国立陽明交通大学(National Yang Ming Chiao Tung University)にご用意いただいたのは、全長2キロの特設コース。リチウムバッテリーも新品に載せ替えているし余裕で何周でも走る事ができる。竹の明日に向かって走りたい。





蓬莱竹、復活した地域の守り神

蓬莱竹、水防竹林


春雨で水かさも少しましている土手では「あの蓬莱竹」が新しい枝を伸ばしてイキイキと復活しつつあった。「あの蓬莱竹」とは、虎竹の里の隣町にある鰹の一本釣りでも有名な漁師町久礼を流れる川岸にある大きな株の事だ。いつだったか根元から綺麗サッパリ伐採されてしまっており、ビックリして思わず動画を撮った蓬莱竹なのだ。




YouTube動画をご覧いただきますと、今は川の流れに沈んでいる根元部分が、いかに巨大で川岸をしっかりと堅固に守っているかがお分かりいただけると思う。竹は、このように竹細工として生活用品として、仕事道具として人の役に立つだけでなく、防災機能としても大きな役割を果たしてきた。


防災用竹林


川の流れに沿って五三竹の竹林が続いている。大水が出た時には、手前の田畑を守るためにずっと働いてきた竹たちだ。平常時は、もちろん竹細工や箒の柄などとしても適時伐採され使わる事によって、手入れ管理されてきた地域の竹林だ。


護岸竹


普通の方は、あまり意識していないけれど、川岸にポツリとある竹林に見覚えはないだろうか?大きく川が蛇行するポイントや、流れが合流する場所に竹が植えられている事も多い。


水害防備竹林


川下の向こう側にあるのが蓬莱竹。株立で横に根を張らず広がっていくことがないので高知や九州など温かく雨の多い地域では、一番よく見られる竹のひとつだ。この竹は節間が広く、柔軟性に富んだ竹質で古老の職人ほど好んで使う。近年、若い職人が使わないのは、この竹材を知らない事と、竹細工と地域の暮らしの距離が離れてしまったせいである。



土用干し、干し野菜づくりに安心・安全な国産竹ざるなら、レアな四ツ目編竹ざるもあります

国産竹ざる、竹虎四代目(山岸義浩)


竹細工の代表のひとつである竹ざる。あまり身近でない方でも、ホームセンターや荒物屋で気軽に手にできる価格で並べられているのを、ご覧になられた事はあるのではないだろうか。そんな輸入の竹製品と思いつつも、短い期間と割り切ってお求めいただくのは悪くないかも知れない。が、しかし、やはり土用干しに使用したり干し野菜作りに利用されるのなら、安心できる国産のしっかりしたモノをお選びいただきたいと思う。


国産四ツ目編竹ざる


特に今年はできるだけ沢山製造しようと考えている四ツ目編の竹ざるがイチオシだ。日本国内はもちろんだけれど、海外で編まれるものでも、この通気性抜群の四ツ目編はあまり見かけない。


日本製四ツ目編竹ざる


目の詰んだ網代編みの竹ざる同様に、四ツ目編にも60センチタイプと40センタタイプの2種類のサイズがある。お使いの用途に合わせてお選びください。





台湾国際竹工芸フォーラムにて講演します

国際竹工芸フォーラム、竹虎四代目(山岸義浩)


台湾の台中繊維博物館で開催される国際竹工芸フォーラムにて講演させていただく事になった。実は昨年5月にも、台湾宜蘭県で開催されたアジア太平洋ソーシャルイノベーションサミット2023で登壇させてもらったが、その時には地域資源としての虎竹や日本の竹文化を中心にお話しした。今回のフォーラムに参加される皆様は、竹工芸や竹の仕事に携わる方も多いとの事なので、先進的な竹に取り組まれている台湾の竹人にお会いできると楽しみにしている。


以前から交流のある盛志華台湾竹美術館々長の徐氏、台湾竹工芸の竹彫り師である施氏のお二人と共に国際竹工芸フォーラムを盛り上げます。申し込みフォームは、繊維博物館や国立聯合大学にもあるそうだが、竹に興味のある方なら、どちら様でも参加できるようなので是非お越しいただきたい。


お申込みこちらから→國際竹工藝論壇


竹は伝統的に日本文化に深く根付いており、言語や生活習慣など日本人の暮らしや心情に深く関わり、様々な形で日本人の生活に欠かせない植物だ。ところが近年、長きに渡って寄り添い合ってきた竹を現代の日本人は忘れているように思う。講演では、日本文化はもちろん、アジア圏での竹と人との深い関係を考えながら、知られていない竹の素晴らしさ、そしてこれからの竹活用についてスポットライトを当てたい。


ディスカッション
■徐暋盛 竹織り職人 - 盛志華台湾竹美術館館長
2015年 第3回世界籐織物芸術祭~サードプレイス~夢の世界~
2023年 第5回世界籐織物芸術祭 準優勝

■施惠閔 竹彫り師
2020年 台湾クラフトコンペティション 新光三越特別賞
2023年 ウズベキスタン第2回国際手工芸フェスティバル 伝統手工芸技術継承賞

開催日:2024/4/22(月)
開催時間:午後1時30分~3時30分 国際職人フォーラム
イベント場所:台中繊維博物館

指導単位:教育省
主催:国立統一大学研究開発室イノベーションインキュベーションセンター、デザイン学部アボリジニ学士号プログラム
共催:台中市文化局、台湾竹工芸協会




このYouTube動画は、2023年5月に台湾宜蘭県で開催されたアジア太平洋ソーシャルイノベーションサミットで登壇させて頂いた時の様子です。



スズ竹市場籠の三色変化

スズ竹市場籠の経年変色


昨日に続いて竹手提げ籠の話題をお話ししたいと思う。
さて、問題です(笑)こうして3つの竹手提げ籠が並んでいますが、スズ竹で編まれたものはどれでしょうか?


チッチッチッチッチッ......チンッ!


そう、ご名答!すべて同じスズ竹で編まれた市場籠です。


スズ竹市場籠の経年変色


それでは2問目(笑)、同じスズ竹で編まれたものなのに色が違うのはなぜ?


チッチッチッチッチッ......チンッ!


またまた正解!時間の経過と共に自然と色合いが変化していくのです。


スズ竹市場籠の経年変色


最後の3問目(笑)、それでは一番古い籠はどれでしょうか?


チッチッチッチッチッ......チンッ!


大当たり!一番上に積まれている飴色になった渋い色合いの市場籠です。


今回の問題は、この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」をご購読いただいている皆様にとったら簡単な問題だったかも。けれど、このように青々とした若い色合いの竹籠が、時を経てこんなになるのだから、まさに自分で籠を育てると言う感覚がピッタリだ。





修理して何度でも蘇る竹手提げ籠

スズ竹市場籠革補強


買い物に持ち歩く手提げ籠で一番傷みやすいのは、持ち手部分と底の四隅の角部分だ。このスズ竹市場籠のように、厚い黒革で角を補強しているものは近年では少なくなったが、衣装類や生活道具を入れて使われていたスズ竹行李などには同じように四隅の角を覆ったものを良く見かけていた。


虎竹楕円買い物籠


竹細工の良さのひとつは、たとえ使っている中で傷んでしまっても、竹の加工性が高さで修理した事が見た目に分からないくらい、ほとんど同じように手直しできる事だ。


磨き手提げ籠バッグ


プラスチック製品には真似のでない自然素材ならではの利点を、一人でも多くの方に知ってもらいたいと思って声を上げている。そうすると少しづつ全国の皆様から修理依頼を頂けるようになってきた。やはり一番多いのは、持ち歩いて重たい荷物を出し入れする事の多い竹手提げ籠である。


古い魚籠


持ち手、底の四隅の次に傷むのは口部分。農家さんの納屋にあった、こちらの古い魚籠も口巻きが切れてしまったらしい。修理してお使い頂いていた様子が伺えるけど、残念なのはポリプロピレンのPPバンドを使っている事だ。


修理したスズ竹市場籠


使い込んだスズ竹市場籠の底の四隅に、小さな穴が開いたので補修させてもらったが事がある。横からは分かりづらいが、その辺りをよくよく注視して頂くと、色目の異なる竹ヒゴが入っているのにお気づきではないだろうか?少し青く見えるのが新しく差し込んだスズ竹ヒゴだ。やはり、本物の竹籠には本物の素材で修理するのが一番、今は、このように若干の違和感がある竹籠が、数年経つとしっかり色合いも馴染んでくるから竹を好きにならずにいらいれない。





よさこい祭りの地方車を虎竹で製作する!竹虎創業130周年コラボ企画

よさこい祭りの地方車を虎竹で製作


竹虎は皆様のお陰で創業130年の節目の年、そして、一昨日の4月1日は竹虎の第74期のスタートの日だった。実は月に一度、全員が一堂に会する全社会議を開催しているが、そこで遂に正式発表したのが「よさこい祭りの地方車を虎竹で製作するコラボ企画」だ!4月1日だけにエイプリルフールとも思われそうだが、さすがは竹虎社員の皆さん。竹虎四代目が前に立って話すことは、いくら荒唐無稽のようであっても真剣だと知っている。


だから担当する職人達は、一番後ろの席で一斉に下を向いた。全くどうしていいのか自信もアイデアも何もないのだ。けれど、安心してもらいたい!全然自信なくて、どうすれば良いか皆目見当もついていないのはボクも同じ(笑)。


REIWA-125号車体


しかし思い出しもらいたい、岡山科学技術専門学校さんから譲って頂いた、車輪の付いた車体骨組みを初めて見た時の事を。


竹虎四代目坂道レース練習


練習する坂道で転んでばかりいて、笑われていた竹虎四代目を。


190811001-400.jpg


付き合わされて軽四トラックで、車体を坂の上まで引っ張り上げている時、あのスペイン・ハラパの大歓声が聞こえたか?




竹虎創業125周年記念!REIWA-125号と虎竹アーマーで挑むスペイン・ボックスカートレース、大興奮のスタートからゴールまで


東京Red Bull Box Cart Race


東京よみうりランドで競ったRed Bull Box Cart Raceにて、全国から集まった強豪の中で準優勝するなどと想像できたか?




準優勝!レッドブル・ボックスカート・レース 2019(RedBull boxcart race)よみうりランド特設会場


よさこい祭りの地方車を虎竹で製作


もともと大阪天王寺で創業した竹虎は、戦後は虎竹の里に本社を移して須崎でしか成育しない虎竹で、今日まで仕事を続けてこさせてもらった。だからこそ、地元唯一のよさこいチーム「すさき~真実(まっこと)」さんとのコラボ企画の意味は大きい。南国土佐の夏は暑いけれど、今年は更に熱くなりそうだ。



阿波踊り竹人形の臨場感あふれる乱舞

阿波踊り竹人形


分かる人にだけ分かればいい。今時こんな竹人形なんて、どこに置いとくの?家の中に飾る所なんてないよ、そんな声が聞こえてきそうだ。でもね、ボクは確信している。受け取られたお客様が丁寧に包まれた梱包を解く、眺める、LEDライトを点ける、そしたら必ず蘇る。幼い日、友達や地元の人たちと一緒に楽しく舞った阿波踊り。故郷から遠く離れたご自宅で、この竹人形ご覧になられて涙されるに違いない。


阿波踊り竹人形


竹人形の伝統を受け継いで仕事をされている職人の技はもちろんだけれど、とにかくこの竹人形を創り出した方は天才だと思う。人形には五三竹という竹が使われる、竹虎では遍路杖などに加工する布袋竹とも呼ばれる竹だ。


布袋竹


水戸黄門さんの持つ杖と言えば分かりやすいかも知れない、布袋様のお腹のような膨らみがあって握りやすく、乾燥するほどに堅くなるので杖には最適なのだ。河川の護岸用の竹材として、地域を守る役割も果たしてきた五三竹の細い小枝を巧みに使って男踊り、女踊りを表現されている。


阿波踊り竹人形


阿波踊り竹人形LED


いや、見れば見る程ため息がでるような竹の技。どれだけの竹と踊り子への想いがあれば、このような躍動感のある細工が生み出せるのか。まさに竹に命を吹き込むとはこのような事だろう。どうです?竹って凄いでしょ。





五台山竹林寺、3月25日

竹林寺


高知市の五台山にある竹林寺、四国霊場第三十一番札所であり、「土佐の高知の播磨屋橋で坊さんカンザシ買うを見た」と唄われる、よさこい節に登場する純信は竹林寺脇寺の住職だった。有名でもあり「竹」が付いているので昔から何かご縁があるように感じ、若い頃には土佐和紙作家の先生と共に展示会等をさせていただいた事もある。


五台山竹林寺


その日の夕刻、ふと思い出した。何でも自分の生まれだと、3月25日は竹林寺にお参りに行くと良い事がある、だそうだ。そう言えば今日が25日、曇天の空は既に薄暗くなりつつあったが、気がつくと五台山に向かっていた。


五台山竹林寺


到着して驚いた、霧雨に煙る参道に人影は全くない。何度も来た事があるのに、こんな静かな竹林寺があるのだと初めて知った。


竹林寺


まるで、待っててくれたような気がしてお参りさせて頂き、とても有難い気持ちになった。


四国霊場第31番五台山竹林寺


昔から高知観光に来られた方には、いつも牧野植物園をオススメしている。昨年はNHK朝ドラ効果で、朝から行列の人気だったが、これからは少しはゆったり園内を歩けるのではないかと思う。お教えさせて頂いた知人の中には、あまりの気持ち良さに予定していた飛行機を最終便に変更してまでも滞在される方もいる。


竹林寺は、この虎竹命名の父・牧野富太郎博士の植物園の隣と言うのもご縁だ。今日から自分達は第74期の新年度を迎える、良い事が起こればいいと願っています。