蘇るスズ竹市場籠、世代を超えて人に寄り添い続けるために

スズ竹市場籠


竹手提げ籠の中でも、一番日常的に皆様がお使いいただいてるのはスズ竹市場籠かも知れません。何と言っても抜群の丈夫さと使いやすさ、しなやかで軽いのに、重たい荷物を入れてもびくともしない。だから、毎日のお買い物や野外へのお出かけはもちろん、かつての築地市場や現在の豊洲市場でも、プロの料理人の方々が買い出しに愛用するほど、実用性に優れた竹籠なのです。


使い込まれたスズ竹市場籠


これだけ日々活躍してくれる籠ですから、どうしても傷みやすい部分が出てきます。実際、市場が移転する前には、東京の出張の際に何度か早朝の築地を歩いた事がありますが、本当にかなりの高い確率で、使い古したスズ竹市場籠の壊れた部分にガムテープで補強した強者の籠に出くわしました(笑)。


手提籠持ち手


「手にされている、その籠!写真に撮らせてもらえませんか?」何度、そう言いかけた事か...(笑)。


スズ竹行李


スズ竹は、主に東北などの寒い地方で育つ、細くしなやかでありながら非常に丈夫な竹です。その強さと柔軟性から、かつては市場籠だけでなく、衣類を入れる行李も大量に製造されていた時代があります。




しかし、このスズ竹もプラスチック製品の登場により活躍の場を段々と失くしていきます。そして、他の竹細工と同じように職人の高齢化と共に編まれる量が激減し、更には近年の120年に一度の開花時期を迎え、その後一斉に枯れてしまうという大自然のサイクルで材料が手に入りにくくなり、スズ竹製品の減少に拍車がかかってしまっているのです。だからこそ、せっかくの市場籠は、修理して使い続ける価値があると、ボクは強く思っています。


スズ竹市場籠経年変色


先日も、長年大切に使われてきたスズ竹市場籠の修理をお預かりしました。編みあがった時には、少し青みかがっている竹肌が、籠全体に渡って美しい飴色に変化し、深いツヤを放っているのを見ると、どれだけ持ち主の方に愛され日々の暮らしに寄り添ってきたかが伝わってきます。


市場籠四隅の穴


竹細工の素晴らしいところは、たとえ傷んだり壊れたりしても、修理によって再び命を吹き込むことができる点です。特にスズ竹市場籠は丈夫なため、部分的な手直しをすれば、まるで新品のようになり、生まれ変わった籠となって何十年も使えることが多いのです。


輸入手提籠底四隅を籐補強


なので、これからも末永く使っていただきたいという想いで、傷んだ部分を丁寧に補修させていただきます。持ち手を取り換え、穴の開いた四隅はスズ竹素材を持っていないため真竹で代用して補強し、その上を籐でかがっています。


市場籠の縁巻


また、縁巻も場合によっては内側に使われている芯竹が古くて弱っていたり、折れたりしている場合には、全て新しい竹でやり替え、新しくして籐で巻き直すと、籠はまた新しい輝きを放ち始めます。


スズ竹買い物籠修理完了、竹虎四代目


修理を施した箇所は、最初は新しい竹の色合いですが、古い素材と真新しい素材のコントラストは良いものです。これが、使い込むうちに周りの色合いと馴染んで、さらに味わい深い表情になっていくのも、たまらない魅力です。


スズ竹市場籠ハイキング、キャンプ、お花見


それぞれのお客様がご愛用されてきた籠は、同じ修理でも実はひとつひとつ程度が異なり別注品の竹細工を製作するようなものでもあります。そのため、時にはお客様が想像されているよりも修理費用がかかってしまうこともあります。でも、若干の出費はありますものの、出来あがったお品をご覧なられた皆様は、こちらのお客様のようなご感想を言っていただきます。


市場籠経年変色


(お客様のお声)

お直しの竹かご受け取りました!丁寧にしっかりとお直ししていただきありがとうございました、また使用できるの楽しみです!さすがの技術に感動してます。竹虎さんの、カゴも欲しくてSサイズも購入させていただき使っています、まわりから素敵と褒められます、両方とも大切に使います。どうぞ皆様によろしくお願いします。インスタストーリーにお直しカゴがでてきて、感動してました。ほかの商品も魅力的で竹製品、気になります。


野外の行楽に竹手提バッグ


こうして喜んでいただけることが、職人たちにとっても何よの励みです。愛着のある籠を、再びお客様の元へお返しできた時の感激は、言葉になりません。


新品手提籠


竹製品を修理して世代を超えて使い続けることは、まさにSDGsやサステナビリティを目指す現代社会に合った、昔から日本にある、素晴らしい伝統文化だとボクは思います。プラスチック製品なら捨ててしまうような状態でも、竹細工なら修理して使い続けることができる。これは、日本の「もったいない精神」であり、物やひいてはコトや人を大切にする心そのものではないかと感じるのです。


クルミ手提げ籠バッグ


YouTube動画やインスタグラムで情報発信するせいもあって、竹籠修理のお問い合わせが増えています。竹編みだけではなくて、時には山葡萄やクルミ、アケビの籠などのご相談もいただきます。お客様の物を大切に使い続けたいと言う気持ちがある限り、できるだけの対応をさせて頂いています。




この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」をご覧の皆様の中でも、もし、ご愛用のスズ竹市場籠や、その他の竹籠、竹細工の傷みでお困りでしたら、諦めるのは早いです(笑)。その前にぜひ一度、創業131年となりました竹虎にご相談ください。心を込めて、大切な籠を蘇らせるお手伝いをさせて頂きます。





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