根曲竹(ねまがりだけ)という竹は、非常にユニークな特徴を持った竹です。この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」にも、たまに登場していますが寒い地域に成育する笹の仲間です。直径も2センチ程度の細さで積雪地帯に自生するこの竹は、雪の重みに耐えながら育つため「根曲」の名前の由来ともなっているように、根元が湾曲しているのです。
いわゆる日本三大有用竹の孟宗竹、真竹や淡竹のような直径の太い竹とは異なり一見細くて頼りも見えますが、冬の間、そうやって鍛えられているので、驚くほどの強度としなやかさを兼ね備えた秀逸な竹材です。「真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズ竹より根曲竹」東北には、そうした言葉があるほど、根曲竹はその堅牢さと、竹細工にした時の美しさにおいて特別な存在として知られてもいます。
根曲竹角八ツ目手提籠バッグも、この特性を最大限に活かした逸品です。この手提籠バッグの目を引くのは、その美しい編み目。細く割った根曲竹を丁寧に編み込んだ八ツ目編みは、竹材そのままの無骨さを残したままでも洗練された印象を与えます。自然素材である竹の温もりと、職人の手仕事による丁寧な仕上がりは、使うほどに愛着が深まります。
さて、この美しい根曲竹を手に入れるまでには、実はあまり知られていない想像以上の苦労があります。虎竹などの竹林と同じように、根曲竹が生息するのは急峻な山深い地域、ただひとつ大きく違うのがクマとの遭遇があることです。根曲竹の伐採現場に行くと、笛を吹き鳴らし爆竹に火をつける物々しさなのです。是非、ご関心のある方はYouTube動画もご覧になってみてください。
虎竹の里でも、誰もいない山中でイノシシに出会う事があります、縞模様のある小さなウリ坊なら良いですが、真っ黒いイノシシは小さくてもドキリとします。人に向かってくる事もあるクマなら、どれくらい恐ろしいか想像してしまいます。そうした苦労を経て伐採された根曲竹は、熟練の職人の手によって丁寧に加工され、この美しい手提籠バッグへと生まれ変わっているのです。
根曲竹の魅力は、堅牢さと使い込むほどに色合いが深みを増し、独特のツヤと光沢を放つところ。同じ自然素材でも、ボクたちの虎竹や、白く晒した白竹とは又違う竹の魅力があります。
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