
スズ竹も度々申し上げておりますように、120年ぶりの開花で竹材不足が深刻になっており、大きな製品ほどできづらい状態が続いています。そんな中、職人さんの倉庫に仕舞われたまま忘れ去られてしまっていた、デッドストックのスズ竹商品が登場して注目を集めております!竹ざるも色々ありますが、スズ竹細工のみならず、片口ざるに近年なかなかお目にかかる機会がありません。通常サイズはもちろんの事ですが、小さな竹ざるほど製作が面倒で難しいので、今回たまたま数十枚ご紹介させてもらっています幅15センチ、奥行き14センチのミニ箕がるは超レアな逸品です。

小ぶりでも造りは大きな竹ざると同じです。この矢筈巻の縁の作り、小さいだけにより細かく難しい細工です。

豆魚籠は実際の釣りには使えないほど小さいサイズで高さは15センチ程度だから、花籠などとしてもお使いいただけます。

スズ竹ミニ籠は12センチの高さ、これもベルト遠しまでしっかりありますから、小さいとは言え耐久性も十分で、もちろん実際にお使いいただける竹籠です。

更に今回は、多くの方が初めてみるようなスズ竹の道具入れが登場しています。

口部分は籐巻されていて、行李やスズ竹市場籠と同じ作りですが、細長いフォルムで本当に珍しい一品です。

製作される職人さんがいなくなり、すっかり見ることのなくなった文庫も少しだけご紹介しています。詳しくはYouTube動画で是非ご覧ください。

畑一面に、まるで白竹の花が咲いたように美しい光景が広がっています。他では、あまり見られない景色なので、テレビ番組の珍百景にでも取り上げられても不思議ではありません(笑)が、実はこれは、白竹を天日干ししているところなのです。白竹は、晒竹(さらしだけ)と呼ばれる事もあります、元は真竹(青竹)です。白竹、晒竹、真竹、青竹など呼び名が色々で、もしかしたら少しややこしいかも、でも全て同じ竹の事です。

真竹の竹林も、実際に竹籠職人が伐採している山々を見てきましたけれど、今の時代、どこに行っても手入れが行き届いているような場所はなく、竹を伐っても山出しが容易でない竹林ばかりです。

そんな中、急斜面で足場も良くない竹林から真竹を運び出すのは大変な重労働ですが、この湯抜き釜の主は、場合によっては竹を一本一本布にくるみキズ付かないように大切に扱うので竹職人からは絶大な支持をされています。工房で話をしていると、何度も耳にするのが、この白竹加工場の事なのです。

竹虎でも、以前は白竹の湯抜き加工をしていました。長尺のまま湯抜きをしていたので、釜が大きくお湯が沸かないので、火入れは真っ暗いうちから始めます。2~3時間、竹端材を燃やし続けて湯気が上がり出すと職人が出社してきて、仕事に取り掛かるのか常でした。

こちらの加工場では、120センチ程度までに竹を伐っており、比較的短い釜で湯抜きをされています。

それにしても、この変化をご覧ください。これが竹林から出して来たばかりの真竹の色合いです。

湯抜きの熱湯から、釜上げされると余分な竹の油分と共に汚れも落ちて、こんな初々しい色合いに。


この竹を、畑にズラリの並べられた竹杭に立てていき太陽の光に晒していくのです。白竹が晒竹と呼ばれるのは、こうして日に晒すことに由来しています。

十分に日の光に晒された竹は、更に落ち着い白色に変化します。

こうして製竹された竹を使って、白竹三段ピクニックバスケットのような白竹の竹細工が編まれるのです。

地球温暖化の影響は、私たちの身近な環境にまで及んでいます。虎竹の里では、古くから言われてきた「霜が下りたら色がつく」という言葉があるように、温暖化によって虎竹の色づきが悪くなるなど、竹にも変化が見られます。一方、温暖化は瀬戸内海の牡蠣養殖にも深刻な影響を与えています。海洋酸性化や水温上昇により、牡蠣の生育不良や死亡率の増加が問題となっており、リスク回避のため養殖量を増やす動きが進んでいるのです。

そこで、活躍しているのが筏製作に欠かせない孟宗竹なのです。牡蠣筏は、近年の環境意識の高まりがあり、マイクロプラスチックなどの海洋汚染防止にも役立つ竹製が見直されています。養殖の本場である広島近辺の竹だけでは足りず、多くは大型の孟宗竹の豊富な九州から大型トレーラーで運ばれていきます。500本もの11メートルを超える長さのままの孟宗竹が積み込まれて、運ばれていく姿は壮観です。

ある業者では月に5,000本もの竹を伐採・運搬しています。そんなに伐れば竹林もハゲ山になりそう?そう思われる方もいるかも知れませんが、心配は一切不要です!竹は植林などしなくとも、毎年ドンドン筍が生えてくるスーパー植物です(笑)。

そして、わずか3ヶ月で20メートル以上に成長する「継続利用可能な唯一の天然資源」と言われます。孟宗竹の牡蠣筏への活用は、里山の竹林保全にも繋がり、海の環境にも優しい、まさにまさに山海両得なのです。

1980年以前は国内の竹林の90%は人の手によって管理された経営竹林でした。それが、1990年代以降のタケノコ輸入増加により、孟宗竹は「竹害」と呼ばれるような悪者扱いされるようになりました。しかし、牡蠣養殖によって孟宗竹が活用されることで、新たな光が当たっています。

広島県だけでも、1万台を超える牡蠣養殖筏があるそうです。ひとつの筏に使用される竹材は約130本、単純計算で130万本になりますから、全て竹製になればどんなに良いだろうかと思っています。

現在では、なにかと悪者扱いの孟宗竹が、こうして人の役に立てているのは本当に嬉しい事です。そして皆さまに、是非知っておいて欲しいのが、竹開花は孟宗竹だと60年に一度、淡竹や真竹は120年に一度です。つまり、日本に大陸から渡ってきた孟宗竹も、自ら増えたのではなく、それぞれの地域の人々に求められ、人の手によって増されてきたということです。ボクの暮らす高知県はじめ大雨の災害の多発する西日本では、 防災としての大きな役割もになってきました。竹は日本人の暮らしと共に歩んできたパートナーなのです。