2025年8月 4日の投稿

120年に一度の試練か、未来への希望か?虎竹開花

竹虎四代目(山岸義浩)YOSHIHIRO YAMAGISHI


120年に一度の虎竹開花

さて今回は、この虎竹の里で100年、虎竹と向き合い続けてきたボクたちにとって、心を揺さぶられる、とても大きな出来事についてお話しさせていただきます。数年前から全国各地で、淡竹(はちく)の開花が相次いでいます。実は、虎竹も淡竹の仲間であり、いつかは虎竹の里でも開花があるだろうと覚悟していましたが、数年前に小さな竹林が部分開花したのを皮切りに、所々で竹の花が見られるようになりました。


虎竹の花


虎竹の花

竹の花と聞いて「見た事ないなあ」と思われる方がほとんどだと思います。なにせ竹の開花は、孟宗竹で60年に一度、淡竹や真竹では120年に一度なのです。だから人の一生のうちで竹の花を見る機会は、かなり少ないのかも知れません。竹は通常、地下茎を伸ばして増えていきますが、このように長いスパンの周期に一度花を咲かせ、種子を残します。そして、ここからが大事なのですが、開花を終えた竹は、その生命を全うしたかのように一斉に枯れてしまうのです。あれだけ青々として、冬でも緑の葉を繁られせている生命力の塊のような竹が茶色く枯れていく姿は、昔の人々も大いに驚いた事でしょう。竹の花が咲くと不吉なことが起こるという言い伝えは、このような事からはじまったと考えられます。


虎竹の花


竹をイネ科だと話しますと不思議に思われる方も多いですが、こうして花をみると稲穂のように見えますので、納得されるのではないかと思います。


竹葉


大自然の神秘的な営み


竹の開花が始まっていない竹林では、いつもと同じように竹葉が風にサラサラと音をたてて揺れています。


開花した後の虎竹林


ところが、開花があり、竹の花が落ちたあとの竹林はこのように立ち枯れ状態です。この数年来、出かけた先で遠くの山々を眺めると、竹林が茶色く変色している所をよく見かけるようになりました。それらは、どこもこの虎竹のように花が咲き、枯れてしまった竹林なのです。皆様のお近くにも、きっと同じような所があるかと思いますので機会があれば、里山に目を向けてみてください。


天狗巣病


竹の花と天狗巣病

竹の花と植物の病気である天狗巣病は、似ているので間違えられる事もあります。ただ、この病気は抵抗力が弱まった樹木がかかりますので、竹の開花時期が近づいてきた竹林で見かける事が多いのです。手入れされているので、このような病気の発生が少なった虎竹の里で、やはり数年前から天狗巣病も見ていましたので開花時期を迎える竹林は、少しづつ抵抗力も弱くなっているような印象です。


虎竹の故郷焼坂


虎竹とともに歩んできた竹虎の歴史

竹虎の歴史は、そのまま虎竹とともに歩んできた歴史と言えます。竹虎は、今から100年以上も前、初代宇三郎が竹細工の材料としてこの虎竹を見出したことに始まります。この独特の虎模様を持った竹は、ここ高知県須崎市安和のわずかな地域にしか自生しない、世界でも珍しい竹です。以来、二代目義治、三代目義継と先代たちが、この特別な竹を守り、竹文化を育ててきたからこそ、ボクたちは今その恩恵にあずかっています。

スズ竹開花


竹の未来へ、希望を胸に


先日、久しぶりにお伺いしたスズ竹の竹林を見ると、5年という歳月を経て古い竹がすっかり消滅している事に少しショックを受けました。あのように、虎竹の竹林も失われてしまうのではないかという不安は、もちろんあります。しかし、ボク達はこの開花を、ただの試練と捉えてはいません。これは、虎竹の生命力が次の世代へと受け継がれていく、未来への希望なのです。この開花をきっかけに、改めて竹林と向き合い、その再生をどのように手助けしていけるのか?虎竹の存在を未来に繋ぐため、これまで以上に竹林に力を注がねばなりません。





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竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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