竹細工の修理・手直し
竹細工の修理を積極的にお受けさせて頂くようにしています。どうしてかって?もともと、竹籠や竹ざるは毎日の暮らしや仕事で使っていましたので、よく持つ部分とか、動かす箇所とか、擦れる所ながど、どうしても傷んでくることがありました。そこで、傷んだ部分を手直ししながら使うことが当たり前だったのです。衣類などでも、膝や肘の部分が擦れて弱くなったら当て布をして補強していたと思いますが、それと全く同じことです。
竹籠の修理をさせて頂くようになると全国から様々なご依頼が舞い込んできます。竹細工を販売されている所はあっても、修理については、実はあまり引き受けてくれる所が少ないようです。あちこちに問い合わせた末に、竹虎にやってきた籠の中には現在では誰も編むことのできないような大きな茶籠があったりします。実際に手直しする職人は苦労していますが、ボク個人としては毎回とても興味深い竹籠に出会えるので本当に楽しみにしています(笑)。
山葡萄の籠の修理依頼
さて、そうこうしていると竹細工だけでなく、他の自然素材の籠にもお問い合わせも沢山いただくようになりました。一番多いのが、やはり昔から人気がある山葡萄手提げ籠バッグでしょうか。長く使うことが出来て、使えば使う程色合いが深まる事が支持されている大きな理由だと思います。
竹虎四代目愛用の山葡萄バッグ
ボクも、いくつか国産山葡萄の手提げ籠は愛用しています。これは、もともと腰籠だった年代物の籠に持ち手を取り付けて使っているものです。全体的に黒っぽく変色していますが、使っていて良く擦れるところなどは黒光りしているから、たまらない魅力を感じています。
この山葡萄には、リング式の巻手と呼ばれる持ち手を取り付けていましたが、重たいPCなど入れて長年使っているうちに少し弱ってきたので、本体にしっかり取り付ける絡み手という持ち手にやり替えてもらいました。日本製山葡萄でも、やはりヘビーユーザーの方の籠は、十数年かあるいは何十年に一度かは分かりませんが、やり替える事はあります。
また、特にの自分の使ってる棚編みの籠は、本当に古いものであると共に農作業でガンガン使われていたものなので、底部分も少し傷みが目立ってきた事もあり補強を兼ねて新しい山葡萄のヒゴを入れています。
この復活については、YouTube動画でご覧いただけますので、関心のある方はご覧ください。この山葡萄をトートバッグ代わりに持って飛行機に乗り、新幹線に乗り、県外のお客様のところに出向くこともあります。遠く離れた場所で、手提籠が壊れてしまうと大変です。そこで、丈夫な山葡萄ではあるのですが、少し念入りにしているのです。
輸入の山葡萄籠バッグ
それで、お客様からお届いただく山葡萄手提げ籠バッグの修理についてです。竹籠バッグの場合には、本体の底編みの四隅の角が傷むことが多いですが、国産の山葡萄ではあまり見られません。ただ、近年とても多くなっている輸入の中国製山葡萄籠では、時々このような大きな穴が開いてしまうものも見かけます。
竹なら籐で補強して仕上げることが多いです。山葡萄には基本的に山葡萄の蔓で修理することが普通でずか、中にはお客様の方で接着剤などを使われている籠が届くことあり、自然素材に不釣り合いな修繕をされるくらいなら籐でかがるほうがまだ見栄えがよいのではと思った事もあります。でも、実際まだやった事はありませんが、山葡萄でも編み方などにもよっては反対に、格好良く出来あがるのではないかとも思います。
古く経年変色した山葡萄に、真新しい葡萄の蔓を入れて補強しています。これも時が経てば、周りの蔓に馴染んでいきますから、それも使う楽しみの一になります。
山葡萄手提げ籠バッグの持ち手修理
現在、お届いただく山葡萄の修理のほとんどは持ち手部分についてです。本体への取り付けが外れたり、持ち手そのものが折れたりしている籠バッグがほとんどです。持ち手の芯にも山葡萄の蔓が使われているので丈夫ではあるものの、どうしても自然素材なのでヒビ割れたり、折れてしまう事もあるのです。
ボクたちが自分たちの地域の自然に親しみ、竹に誇りを持っているように、東北の山々に育まれた山葡萄にも、それぞれの地域の職人さんは品質や色合いにこだわり、しっかり向合われています。
仕事場や倉庫に保管されている材料を見ても、日本の山々で採取された迫力のある山葡萄は大自然の力強さを感じさせます。この蔓を綺麗に加工して編み込めば、それは堅牢な籠になるだろうと納得します。
国産と中国製山葡萄籠の違い
海外で編まれる山葡萄のデザインや形は、日本の籠がサンプルになっているようです。ただ反対に国産の籠でも昔はなかったような技巧的な編み方の籠も増えているのは、輸入の中国製山葡萄の籠の影響でしょうか。ボクなどはシンプルな網代編みが好みではありますけれど、色々なバリエーションを増やしてく傾向にあるようです。しかし、いずれにせよ蔓の耐久性を言えばやはり国産のものが断然おすすめです。採取の時期や加工方法などの細やかな工程にも違いがあるのかも知れません。
今回、修理をさせていただいた山葡萄の籠バッグ、9個のうち6個が中国製のものでした。たとえ輸入のモノでもお客様が大切にされている手提げ籠なので、同じように修理させていただき、また十数年長くお使いいただけると嬉しく思います。ただ、やはり長い日本の伝統で育まれた熟練の技が生み出す籠は素晴らしいです。国産山葡萄を製作される職人さんはまだまだ沢山おられて、意欲的に取り組んでいますので「本物を見極める目」をご愛用いただくお客様自身、そしてもっと言うと、それらの山葡萄を扱うお店側にも養ってもらう事が必要ではないかと考えています。
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