2025年9月22日の投稿

いけばな小原流五世家元・小原宏貴氏「虎×龍」インスタレーション!創流130周年記念家元紀行

創流130周年記念家元紀行・小原宏貴氏、竹虎四代目(山岸義浩)


いけばな小原流五世家元・小原宏貴氏

いけばな小原流五世家元の小原宏貴さんとの出会いは昨年の事でした。小原さんがアドバイザーを務められている、日本和文化振興プロジェクト主催「日本和文化グランプリ」のレセプション会場で虎斑竹のお話をさせていただいたことがありました。いけばなのお家元だけあって、日頃から接しているお花や植物には強い関心を持たれているご様子でした。特に虎斑竹が、国内でも高知県の本当に狭い地域でしか生育しないという不思議さに魅力を感じていただいたのかも知れません。


小原流家元・小原宏貴氏、虎竹の竹林


小原流「挿花」

小原流では「挿花」という季刊誌を発刊されています。見本誌を拝見しますと、とても充実した内容です。いけばなの美しさはもちろんですが、読み物としても多岐にわたっていて華道を習っている方でなくとも面白い内容になっています。そんな本の中で、長い歴史の中でも節目の130周年にあたる小原流創流130周年記念家元紀行として、小原さんには虎竹の里にお越しいただいたのです。


雨の虎竹の竹林


竹は泣いている

撮影は7月中ごろで、その日は朝から生憎の大雨でした。ところが、竹林への山道を登り始めると奇跡のように雨がやみます。なるほど、これは虎竹たちが雨に煙る神秘的な自分たちを、お家元に見てもらいたいのだなと感じました。竹は、あれだけ日本の生活の中で欠かせない必需品として活躍してきていたのに、プラスチックなど新素材の登場により今ではすっかり忘れ去られています。竹は、里山の竹林で「自分達を使ってほしい、見直してほしい」と泣いているのです。


小原流家元・小原宏貴氏×竹虎四代目(山岸義浩)虎竹の竹林


雨模様でもありましたので、虎竹の竹林はできるだけ近い場所を選んでいます。ところが、それでも山道の勾配は急で滑りやすく歩きづらいものですが、小原さんはスイスイと平気な顔で登ってこられます。聞くと、休日には登山をされることがあるそうで、なるほどと納得しました(笑)。


小原流家元・小原宏貴氏


本社工場に帰ると、竹虎で用意させてもらった花籠に家元が花を活けてくださいます。


小原流家元・小原宏貴氏、花籠(岡崎竹邦斎作)


花で輝く竹花籃

それぞれ個性のある草花を手際よく、全く迷いなく活けていかれているので驚きました。花籠は自然の花で輝きます。規則正しい六ツ目編みが心地よい、岡崎竹邦斎作の花籃が生き返ったようでした。


小原流家元・小原宏貴氏


祖父の代から懇意にしてもらっていたからこそ竹虎に遺されている塩月寿籃作の花籃には、花を活ける機会はほとんどありませんでした。寿籃さんの分身のように個性的で、言い換えれば美しきアクの強さの籃が一体どのように変化するのか?実はとても楽しみにしていますが、予想をずっと上回る小原家元の作品が完成しました。


小原流家元・小原宏貴氏、竹虎工場


虎竹の矯め木

若いお家元との時間は貴重でした。工場での何気ない言葉にも、竹に通じるアイデアがあり、見落としていたと思える事がいくつかありました。竹は真っ直ぐではありません、すべて曲がっているので、実は一本ずつ曲りを矯正(矯め直し)しています。700度のガスバーナーで熱を加える油抜きの時に、その熱を利用しながら竹を真っすぐに矯め直しますが、その時に矯め木という道具を使います。確かに、このような道具は他にはほとんどないのですが毎日見ていて気付かなくなっている価値を教えてくれます。


小原流家元・小原宏貴氏竹トラッカー


竹トラッカーと小原宏貴家元

今回の撮影でメインテーマとなっていますのは、「虎と龍」です。虎は、日本唯一の虎竹をヤタラ編みして製作した電気自動車です、それに対して小原さんが創作されるの龍とは?


小原流家元・小原宏貴氏竹トラッカー試乗


強くなってきた雨のため、外で乗っていただく事はかないませんものの、ヤタラ編みのシートに腰かけてもらい、横浜まで1,000キロを走り、メキシコや台湾の世界竹会議にも参加して車体を感じていただきました。


小原流家元・小原宏貴氏×竹虎四代目(山岸義浩)竹虎工場


小原宏貴家元のドラゴン製作

いよいよ龍の製作が始まります。特徴的なのは落羽松(らくうしょう)と呼ばれる湿地帯に生える杉でした。根元には酸素を取り入れるために呼吸根が隆起しているそうなのです。この珍しい樹木の根を着色して龍にすると言われます。


小原流家元・小原宏貴氏


小原流家元・小原宏貴氏インスタレーション


小原流家元・小原宏貴氏インスタレーション


迫力のドラゴン完成!

こうして出来あがったのが迫力満点のドラゴンです!並べられた落羽松が、一体どんな形になるのだろうとワクワクしていましたが、荒々しいように見えて、どこか知的で神秘的な龍に仕上がっています。どこから来て、どこに向かって行くのか?物語を感じる、お家元である小原さんにしかできない作品です。虎竹が立ち並ぶ工場に、このようなアート作品が鎮座されたのは初めてのことで感無量です。


タイガーVSドラゴン


虎×龍

さて、こうして完成した作品を並べて虎と龍での撮影をしていただきました。このような機会を頂戴できて光栄です。


小原流挿花


小原流「挿花(Soka)」2025年9月号を拝見しますと、特別企画~創流130周年記念家元紀行として見開きに掲載されています。あまりに素晴らしいので本を少し分けていただく事にしました。竹虎のお客様でも花籠などをお求めになられる方の中には、関心の高い方がおられるので、お送りしたいと考えたのです。


小原流家元・小原宏貴氏×竹虎


竹虎本社前

竹虎の社員も随分と若返っています。花籠が多くの方に求められてスター選手のような時代を知るのは、一人か二人です。極端ですけれど花籠を沢山製造していた当時には、竹細工=花籠というくらいに思っておられた職人さんもいたほどなので、日本人の生活様式は、この数十年で随分と変化してきました。


2509小原流家元・小原宏貴氏、竹虎本店


お家元の置き土産

けれども、花が毎日の生活にうるおいを与えてくれ、心豊かになることは変わりません。小原宏貴家元が活けた花を愛でるなどという贅沢は、そうそうできませんので花籃をそのまま店に運んできていました。和んだ優しい雰囲気に包みこんでくれる花の力を改めて感じます。





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竹虎四代目

竹虎四代目
YOSHIHIRO YAMAGISHI

創業明治27年の老舗竹虎の四代目。100年守り続けた日本唯一の竹林を次の100年に繋ぐ。日本で二人だけの世界竹大使。

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