
黒竹なる名品あり
虎竹の里から車で数分走ったところにも、江戸の昔から知られた黒竹の産地があります。土佐藩山内家の皆山集という文献にも「黒竹なる名品あり、笛に適す」と、載っている黒竹の産地です。笛に適すと書かれているくらいなので、お分かりかも知れませんが黒竹は、皆様が想像されているような太さの竹ではなく、稈長(かんちょう)は3~5メートル、直径が2~3センチ程度の細い竹です。ちなみに稈長とは、あまり聞きなれない言葉だと思いますが、イネ科の植物の茎の長さに使われていて、同じイネ科の竹の高さを表す時にも使われています。
特産黒竹
さて、黒竹ですが、この竹は高知特産ではありますものの虎竹のように日本唯一という訳ではなく、日本に数か所産地があります。伐採した黒竹を集荷にいく頃は、まだまだ寒い日が多い時期ですが、どこの竹林も日当たりがよく温かななので、いつもTシャツ一枚になって積み込みしていた覚えがあります。それくらい、黒竹の好む土地は温暖な海沿いの地域が多いのです。

潮風と黒竹、虎竹の関係
これには理由があります。以前、地元大学の先生から塩分が植物を黒く変色させる作用があると教わった事がありました。波風の強い日には、虎竹の里でも潮風が真っ白い煙のように山々に吹き上げている事があります、そんな潮風と竹の色づきについては、虎竹も含めて少なからず相関関係があるのだと思います。

熟練竹職人の技
違う日に別注で製作した黒竹玄関すのこも、長さがありますのでこうして裏側から見ても、一本一本の黒竹の太さが揃えられ、真っ直ぐな事がよく分かります。もしかしたら、こんな真っ直ぐな竹が山に生えていると誤解されている方はおられませんでしょうか?竹林に、こんな竹など一本たりともありません、すべて熟練の職人が真っ直ぐに矯め直しという作業をして曲りを矯正しています。まさに、職人技をご覧いただいているのです(笑)。

先日、お客様からご注文いただきました別注の大型すのこも、二台とも完成して何とかお正月に間に合うと安堵しています。定番サイズがこのような大きさなので、別誂えがいかに大きいのかがお分かりいただけるかも知れません。

120年に一度の黒竹開花
でもここで、竹虎の事をいつもご覧いただいている皆様でしたら、ひとつの疑問がわいてくるのではないでしょうか。そうです、黒竹の開花です。数年前から、黒竹も120年に一度の花が咲いて竹林が次々に枯れてしまっています。
次の黒竹開花は見られません
ご存じない方は、是非、神秘的な竹の営みの動画をご覧ください。花が咲くスパンが長いので、次の開花を見られる方は普通ならいないはずです。

良質の竹材の大切さ
竹細工は、作り手と使い手で作るものですが、その元の良質の竹材がないと、どうしようもない事を100年ぶりに痛感しています。竹虎は和傘の竹材商として創業しており、当初は真竹などが中心でした。ですから、実は黒竹の開花も、竹虎131年の長い社歴の中でも初めての体験です。これから、この荒波をどう乗り切っていくのか?不安がないと言えば嘘になります、しかし、初代宇三郎から二代義治、三代義継が見守ってくれていると信じ、社員一同が来年の干支の馬のように前を向いています。

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