
日本の涼のしつらえ
連日の猛暑、酷暑が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。これだけ気温の高い日が続くと、ふとした瞬間に目にする涼やかなものに、心底救われるような気持ちになります。今ほどではないにせよ、日本の夏は昔から蒸し暑く厳しいものでした、なので、そんな夏さをしのぐために涼を演出する知恵や工夫を凝らしてきたのだと思います。熱のこもらない民家、風鈴の音色や打ち水、金魚鉢、麻の浴衣など、そしてそんな中に簾や夕涼みの縁台のような竹細工もありました。竹という素材そのものが持つひんやりとした質感や、青々とした清々しさ、そして風を通す編み目は、まさに日本の夏に欠かせない涼のしつらえと言えます。

周りの空気感まで変える
先日、親しくして頂いている竹工芸の職人さんの工房をお邪魔した際に拝見した竹籠が、まさにその涼味を形にしたような素晴らしい作品でした。まず目を奪われるのが、そのゆったりと丸みを帯びた優美なフォルムです。ふんわりと空気を含んだような立体的な形でありながら、本当に軽やかなのです。竹ひご一本一本が描く美しい曲線と透かした編み目が相まって、まるで涼やかな川のせせらぎや、編み目を吹き抜ける心地よい一陣の風をそのまま体現しているかのような気がしました。光が透けることで生まれる陰影も幻想的で、部屋の中に置いているだけで、スッと温度が下がったかのような錯覚さえ覚えたのです。

驚愕の職人技
さらに近く寄って細部を観察してみると、ちょっと驚愕するような職人技に息をのみます。口部分から胴体にかけて、幅の異なる竹ひごの密度や編み方が細かく計算され、緻密に変化しているのが分かります。一本の乱れもなく整然と編み込まれた竹ひごの重なりは、職人の人となりそのもの、正確な手業と竹材に対する深い理解があってこその竹編みです。

大輪の花
そして、思わず魅入ってしまうのが、この籠の底部分です。見えない部分や支えとなる基礎の部分にこそ職人魂が宿ると思いますが、まさにそれです。中央から広がる見事な模様は、まるで大輪の花のようです。普段は見えにくい箇所にまで妥協をしない手仕事の姿勢には、敬意を覚えずにはいられません。

竹編みの避暑地
竹という自然の素材は、伐採されて加工された後も、匠の技によって生をさずかり生き続けます。こうした繊細で美しい作品を目にすると、単に花を飾る竹籠という枠を超えて、生活の中で季節を感じ、心を豊かにするための最高の芸術品であると感じます。冷房の効いた部屋で過ごす快適さも有難いものですが、職人技が生み出す目から感じる涼に触れることこそ、最高の避暑地なのかもしれません。

あまりの綺麗さと存在感に見とれてしまい、気がついた時には作品の名前を聞くことすら、すっかり忘れてしまっていました。次に職人さんにお会いした際には、ぜひこの作品の題名や込められた想いについて教えていただこうと思っています(笑)。

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