虎竹伐採の山

虎竹伐採


この季節、虎竹の里の山々は賑やかだ、どうかすると山の麓にまで山仕事の音が聞こえて来る。道に迷ったと言う、汗だくのお遍路さんに次の目的地の岩本寺までの道のりを話している間も、竹の音はひっきりなしだから心地がいい。


竹林への道


山出しの機械を置いてある竹林への小道は、先人が繋いできた竹の道だ。虎竹の里には、このような竹を運び出すための小道がまるで毛細血管のように沢山延びている。


虎竹の里山出しの道


画像ではお伝えしにくいのだが、どの道も険しく曲がりくねっているから登っていくだけでも大変だ。


虎竹の里


全国の竹林を訪ねて回ると、竹の種類にもよっては意外と一年通して竹の伐採をしている所も多いけれど、虎竹の里では昔から竹伐りは晩秋から1月末日までと決められている。


虎竹の里、竹林


ここには今年のシーズンから何度も通って整備してきた、しかし竹林の表情はその都度変わる。手入れされた竹林は神々しささえ感じて、いつも時を忘れそうにさえなる。


虎竹伐採


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伐り倒された虎竹が、ずっと向こうの竹林まで見えている。


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虎竹の虎模様の色付きは、土中の細菌の作用と言われるが気温も大きく影響している。近年の温暖化、暖冬で竹の色合いは芳しくない年が続いているけれど、ここの竹はなかなか良い竹がありそうで安心する。


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こんな事を人に言っても信じないだろうが、帰ろうとしたら虎竹たちが「まだ帰るな」と騒ぎだす。今日のブログには間に合わないけど、動画に撮ったからYouTubeに後日アップします(笑)。





普通ではない竹虎本社工場

虎竹


虎竹は虎模様が表皮に現れる独特の竹で、虎竹の里の山々でしか成育しない不思議な竹でもある。工場に来られた方は、皆様沢山の竹材に驚かれるので、自分達では当たり前だと思っていた竹ばかりの工場が普通ではないのだと知った。それでも、近年は竹材の量が圧倒的に少なくなったので、もしかしたらあの当時に来られていたのなら腰をぬかしてしまうかも(笑)などと夢想する事もある。


虎竹


しかし、少なくなったとは言えこれだけの竹材が、しかもこの地域でしか伐採されていない竹が、こうして工場の中で出番を待っているなんて考えたら日本中探してもないのだと思う。もっと大きくて、設備が整った工場など山ほどあるに違いないが、虎竹が立てられている場所はここだけ。それが少なくなくとも、文献が残っているだけでも江戸時代から脈々と続く伝統だ。


チェーンソーのオイルの香りが漂ってきた、今年も、そろそろ竹伐採が近づき、山仕事の準備がはじまりつつある。





鰹と坂本龍馬と牧野植物園の国



高知県には鰹と坂本龍馬の他にも、この土佐の風土と文化が生み出した日本唯一の虎竹がある事を知って欲しくて、その想いが強くてYouTube動画まで製作してしまった。動画のバッグに流れるのは高知で活躍するシンガーソングライター江口美香さんに竹虎創業120周年記念で作ってもらった「まっすぐ~虎竹の里~」。竹虎にお電話頂いて保留になった時にもかかる曲で、何とバックコーラスに社員・職人が全員参加したという曲だ(笑)。


牧野植物園に虎竹移植


そして、今年はNHK朝ドラで大注目されているから、高知なら鰹、坂本龍馬、牧野植物園だろうか。実は、元々高知県に観光に来られた方にオススメする一番の名所は桂浜でも龍河洞でも播磨屋橋、四万十川でもなく自分は牧野植物園をお教えしてきた。都会から来られた方には特に大好評で、散策しているうちにあまりに心地が良いので飛行機の予約を最終便に変更して帰ったよと、喜んでいただいた事もある。


牧野植物園、虎竹移植


そんな牧野植物園には、虎竹命名の縁があって20数年前に虎竹を移植させて頂いている。ところが、虎竹の里以外では虎模様の付かない不思議な竹は、やはり牧野植物園でも思い通りに育っていない。そこで昨年末に新たに場所を用意いただいて移植させてもらった。




この時の虎竹移植に密着したYouTube動画があります、よろしければご覧ください。


博士の虎竹炭クッキー


さて、牧野富太郎博士の生誕160周年を祝って虎斑竹のスペシャル竹炭を使った、博士の虎竹炭クッキーがようやく焼けました。近日発売予定です、こうご期待!


虎竹炭クッキー


食べた社員の表情で、クッキーの味が分かります。





鰹と坂本龍馬の国

竹虎四代目(山岸義浩)、YOSHIHIRO YAMAGISHI、no bamboo no life


コロナが収まって沢山の観光の方が南国土佐に戻って来て頂けるようになった。まさに高知だけに戻り鰹のような勢い?だろうか。特にNHKの朝ドラ「らんまん」で注目を集めている牧野植物園などは既に昨年末からお客様が増加傾向だったけれど、遂に先月は月間新記録だったようだ。


大正市場、竹虎四代目(山岸義浩)


さて、そんな高知の玄関口である龍馬空港には、鰹の一本釣りで有名な中土佐町久礼の大正市場にある田中鮮魚店の大将、田中隆博さんの等身大パネルや、顔出しパネルが設置されていてお客様を出迎えている。高知と言えば全国の方々誰に聞いてみても、やはり鰹なのだ。実は自分も小さい頃は、毎日の食事はもちろん何かと言えば鰹だったので「またか...」とあまり好きではなかった。新鮮な魚をタタキにする事はないので、ほとんど生の刺身で頂いていたが、あの分厚い切り身とモチモチ感に若干うんざりした事さえある。今にして思えば恵まれすぎている(笑)。


坂本龍馬、竹虎四代目(山岸義浩)


そして、高知は坂本龍馬である。観光にお越しになられて桂浜の龍馬像をご覧になられない方などいないのではないかと思う。太平洋に向かって建っている姿は何度見ても荘厳だし、もし初めてのファンの方なら感動せずにはいられない。


虎竹、竹虎四代目(山岸義浩)YOSHIHIRO YAMAGISHI


しかし、何にか忘れてはいないだろうか?鰹と坂本龍馬の国にも、それらに負けない日本に此処だけの虎斑竹がある。鰹の泳ぐ太平洋の潮風が模様をつけるとの説もある不思議な竹であり、龍馬の時代にも土佐藩山内家に年貢として献上された由緒ある竹、今や全国に知れ渡った世界的植物学者、牧野富太郎博士が命名した竹なのだ。





第73期の新年度の虎竹はじまる

虎竹の竹林


竹虎は明治27年の創業で、竹の商いをはじめてから129年となる。こうして長く竹の仕事を続けさせて頂けているのは、いつもご愛顧いただく皆様方のお陰だ、本当に心から感謝したいと思う。創業した大阪天王寺から日本唯一の虎竹成育地である高知県須崎市安和に拠点を移し、製造量の増加と共に株式会社として立ち上げてから今期で第73期を迎える事ができた。今日は、その一日目である。


虎竹


和傘に使う竹材の取り扱いから竹材商としてスタートし、虎竹に魅入られた初代から今にいたるまで竹の世界も様々な変遷があり、自分達の会社も大きな時代の波のうねりの中で右往左往を続けている。


虎竹


長い社歴も変化の連続だったに違いないが、これからは更にスピードを増して全てが変わり続けていくのだろう。目が回りそうなほど早い流れを目の前にする度、ずっと変わらない虎竹を手に取り先人に問う。そんな一年のはじまりだ。





神木隆之介「鉄の骨」

 
鉄の骨


あまりテレビを観る事はないが、たまたま腰をおろして触ったチャンネルに「鉄の骨」が映っていた。人気小説をドラマ化したものだそうで、公開された当時は全く知らなかったのだが、主役の神木隆之介さんは来春から放送されるNHK朝ドラ「らんまん」で主人公を演じられるので、ずっと注目していた。そこでちょっと...と思ったが最後、あまりに面白いので結局最終話まで堪能してしまった(笑)。


牧野植物園


「らんまん」のモデルとなっているのは高知県出身の世界的植物学者である牧野富太郎博士だ。明るくユニークな牧野博士を神木隆之介さんなら最高に面白く演じてくれるのではないかと今から本当に楽しみにしている。


日本唯一の虎竹


もちろん、自分が高知県民であるという事だけではない。実は何を隠そう日本唯一の虎竹の命名の父は牧野富太郎博士だ。その縁もあり建築家・内藤廣さん設計で20数年前、高知市五台山にリニューアルオープンした牧野植物園には虎竹を移植していて当時は毎月のように訪ねて行っていた。


虎竹の里


虎竹は江戸時代から美しい模様の竹と珍重され、年貢として納められて来た歴史がある。代官が「哀れむべき浦にて候」と書き残すほど農地が少なく、収入のなかった地元にとっては、まさに地域の宝として大切に守られてきた。しかし「コチク」「モンチク」「コハンチク」など呼び名すら統一されておらず、どんな竹なのか植物学的な事は全く解明されていなかった、そんな竹に光を当ててくれた博士の功績は計り知れない。




牧野富太郎博士と虎竹と

マキノ缶


高知県出身で「日本の植物学の父」と言われる牧野富太郎博士は生誕160年の節目でもあり、来春から始まるNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公でもあるので注目が高まっている。先日、たまたま羽田からの飛行機で隣の席になった方は、世界の名だたる有名ブランドとコラボしたお菓子を展開されている凄い社長さんだった。話の中で、近日発売予定である牧野博士のクッキー「マキノ缶」を見せていただいた。タブレットの画面からも色とりどりの容器とお菓子が楽しさを感じさせてくれてワクワク心が躍った。


高知新聞掲載牧野富太郎博士クッキー


全国に先駆けて高知の蔦屋書店にて販売を開始すると聞いていたので、すぐに買いに行ったが現品の並んだ売り場は機内で感じた高揚感以上にハッピーな気持ちにさせてくれる。高知新聞に掲載された写真からもお分かりいただけるように、思わず笑みがこぼれるようなお菓子たちだ。


それらを見ながらふと考えた、自分はできる事はないだろうか?


日本唯一の虎竹


土佐虎斑竹は何を隠そう牧野富太郎博士の命名だから、実は自分たちとも浅からぬ縁がある。もしかしたら竹虎初代宇三郎とはどこかで出会っていたのかも知れないと思うくらいだ。その理由は話だしたら長くなるので今朝は割愛させてもらうが、とにかくこの節目に自分たちにしか出来ない事をするべきだと思うようになった。


虎竹の里、竹虎四代目(山岸義浩)


出来る事を思い当たるのに、そう時間はかからなかった。虎竹の里から牧野植物園には博士との事もあって虎竹が数株移植されている。虎竹は不思議なことに虎竹の里以外で育つ事のないと言われていて、今まで全国各地に移されてきたが期待するような成果は上げられていない。さすがの牧野植物園でも同じで、どうも元気な姿でないことが日頃から気にかかっていた。




竹虎YouTubeチャンネルでも紹介しているけど、弱々しく虎竹特有の色づきもなく、シラクモやテングス病と虎竹の里の竹林とは大違いだ。そうだ、虎竹をもう一度移植させていただく事はできないか?これなら自分たちにしか出来ない事だ、元気な虎竹を改めて移植させてもらえれば来春以降沢山の方が園を訪れた時にも美しい虎竹をご覧いただけるに違いない。


油抜きで生まれる虎竹の輝き

 
日本唯一の虎竹


虎竹茶を飲まれた方は自然な甘い香りに驚かれるけれど、竹虎の工場に来ると更に同じ甘い香りに気づかれると思う。ガスバーナーで油抜きの加工をしていると仕事場の入り口に入った瞬間に香ってくる。いつだったか、初めての場所で車から降りたら竹の香りがして、高い塀の向こうに竹屋があると確信した事があった。それくらい特徴的な香りなのだ。


虎竹油抜き


虎竹


炎によって磨かれた虎竹の輝きは、元々の竹が持っていた油分。竹林に生えている時には表皮部分を淡竹ならではのロウ質が覆って白っぽく見える虎竹が、まさに本来の自分らしさで光だした瞬間だ。


虎竹、tigerbamboo




牧野富太郎博士「植物を愛すれば、世界中から争いがなくなるでしょう。」

 
牧野富太郎博士生誕160周年の高知新聞


「植物を愛すれば、世界中から争いがなくなるでしょう。」先日の4月24日に生誕160年を迎えられた高知出身の世界的植物学者、牧野富太郎博士の言葉です。この日の地元高知新聞は、牧野博士の大好きだったという桜の花が印刷された新聞カバーとでも呼ぶべきでしょうか?初めて見るような特別バージョンで誕生日をお祝いされていました。


虎竹の里


実は土佐虎斑竹の名前を命名されたのは牧野博士でした。それが1916年(大正5年)の事で、当社初代宇三郎が大阪天王寺の工場にてヨーロッパへの輸出材として虎竹製造を開始したのが、その前年の1915年です。二人は当時何もなかった虎竹の里に、竹という目的を持って他の土地から出入りしていた数少ない人間でしたので何処かで出会っているのではないかと思っています。


虎竹の竹林


土佐藩政時代には「憐れむべき浦にて候」と時の代官が書き残しているくらい当時の安和(あわ)地区は漁業に適した港を持たず、農地も少ない貧しいドン底の集落でした。若い頃、土地の名前の由来に興味を持って調べていたら須崎と久礼という大きな町の間という意味だと書かれていましたけれど、本当は「憐れむべき」の「アワ」から来ているのではないか?と土地のお年寄り達は笑います。


唯一の珍しい模様の浮かびあがる虎竹を年貢の代わりに献上して何とか苦難を乗り越えていた諸先輩にとって、山や竹林の価値は今では考えられないほど高く部外者が立ち入れる場所ではありませんでした。自分の小さい頃には山に向かう人や車は沿道の民家によってチェックされていて、見慣れない場合には追いかけて声をかけるような光景が見られていました。


日本唯一の虎竹


牧野博士も長い年月に渡り何度か虎竹の里を訪れられているようですし、竹虎初代宇三郎は竹伐採シーズンには長期滞在していましたので、閉鎖的な地域で同じ虎竹に引き寄せられた者同士の交流があったのは自然な事のように思います。


土佐虎斑竹


いずれにせよ牧野博士の100年も前の言葉が、今を生きる自分達に大きな教訓として胸に突き刺さります。「植物を愛すれば、世界中から争いがなくなるでしょう。」




霜が下りると虎竹が色づく

虎竹


「霜が下りると虎竹が色づく」、虎竹の里では昔から古老や山の職人が、こう話していました。実はあまり深く考える事もなく毎年の虎竹伐採を迎えていたのが特にこの数年の気温の変化で、土地の言い伝えのような言葉に真実味を感じています。


竹林の虎竹


虎竹は淡竹(はちく)の仲間で白い蝋質部分の下に虎模様が隠れています。そこで美しく耐久性の高い虎竹に加工するために熱を入れて、竹自身の余分な油分を炙り出し竹表皮を磨いて艶をだすのです。


虎竹油抜き加工のガスバーナの炎


虎竹は高温の窯に入れた瞬間に色付が変わります。それぞれの竹の太さ、性質、乾燥具合により調整しながら油抜きしたばかり竹は生まれたけの赤ちゃんと言えます。


竹虎工場


まだ湯気が立ち上っている虎竹です。


虎竹油抜き作業


竹は意外に曲っていますから竹の矯正作業をして矯め直す事があります。その場合も、この熱が非常に大事になって、熱いうちに曲げを矯正していきます。


竹虎四代目(山岸義浩)


竹は南方系の植物なので暖かい方が良さそうに思われるかも知れません。しかし、同じイネ科のお米も寒暖の差で美味しくなりますし、昔から品質が良いと職人に好まれる竹は実は冬の寒さが厳しい地方のものです。


加工したばかりの虎竹


今年は比較的寒さが続きましたので、有難いことに色付が良い竹が見られます。それでも、この中央に立てられた竹の右左で色づきが違うのがお分かりでしょうか?虎竹を土場で一本づつ選別し、工場に運ばれた竹の中でも色づきはこのように随分違うものなのです。