続・虎竹で修理した腰籠でサクランボの収穫体験

虎竹で修理した腰籠


サクランボの収穫を手伝わさせてもらった。片手で小枝をもって茎をつまんで上に動かすとポロリと収穫できる。しかし、小粒だから、あの枝、この枝と収穫は本当に重労働だと思う。山形では「はけご」と呼ばれる腰籠も、大きくてもダメだ、これくらいのサイズで少しづつ運ばないとサクランボはデリケートなのだ。


サクランボ農家禅別場


収穫される度に運ばれて来るサクランボは色別、サイズ別に選り分けられる。ご家族三世代の皆様が力を合わせられているのが素晴らしい。まさに、家族の絆で作られている果物だと思った。


ビニールバンドの腰籠


実は収穫籠は竹製のものだけではなく、荷造り用のPPバンドで作られたものなどもあるようだ。素材や大きさの違いは、他に栽培されているラ・フランスやブドウ、リンゴなどの果物用なのかも知れない。


作業場での休憩


畑で収穫作業をされていた方々も戻られて休憩タイム。缶コーヒーと地元のお菓子での楽しいひと時は竹虎の現場や内職さんでもあるから全国共通だ(笑)。


虎竹で修理した籠でサクランボ収穫


選別場でブラスチックコンテナの上で休む腰籠は、やりは存在感が圧倒的に見えて仕方ない。


サクランボ選別


仕事が再開されて、次々とサクランボの宝石箱が出来あがる。


佐藤錦


思えば、この可憐な果物の収穫に役立っているのだ。凄い事だと思っている。


サクランボ籠、腰籠


修理させてもらった腰籠が農家の方々の大切なパートナーとして活躍している姿を拝見した。竹籠が畑でどれだけ重要な役割を果たしているのかを改めて感じさせてもらった。天童市の美しい果樹園の景色とともに、サクランボの収穫作業は貴重な体験となった。


宝石のようなさくらんぼ


この美味しそうなサクランボはどうだろうか!?


虎竹で修理した籠でサクランボ収穫


来年もその次も、その次の年も長く長くお使いいただきたい、虎竹で修理させていただいた腰籠。そして、また何か不具合があって手直しの連絡をしてくださるのは、もしかしたら次世代を担う方々からかも知れない。





虎竹で修理した腰籠でサクランボの収穫体験

虎竹で修理した腰籠


昨年、サクランボ農家のお客様から収穫用の腰籠三個の修理を依頼され、その修理が完了したことをこの30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」続・使い込まれたサクランボ籠の修理で皆様にお知らせさせて頂いた。


宝石のようなサクランボ


山形のサクランボといえば、佐藤錦などが有名で高級フルーツだ。まるで宝石のように輝やいており、普段は食する機会などはあまりない。一体どのような場所で栽培されているのだろうか?


天童市の果樹園


最初は一個だけの修理依頼だった籠が、職人の手によって蘇った出来栄えに、農家の方が思わず全ての腰籠の修理依頼をされてきたのだ。あれから10カ月が経ち、その腰籠がどのように農園でお使いいただけているのだろうか?どうしても拝見したくて、山形県天童市の農家さんを訪問させてもらった。


虎竹で修理した腰籠


天童市は美しい自然に囲まれた町で、訪れた日は晴天に恵まれ本当に気持ちのよい日だった。農家さんの畑に到着するやいなや、修理させてもらった腰籠が目に飛び込んでくる。


竹虎四代目(山岸義浩)


すっかり農家さんに溶け込んだ格好、皆さん暑い暑いと言われていたが、風は涼しくとても過ごしやすいのは、さすが東北だと感じた。


サクランボ農園


畑に入れて頂くと、早速サクランボの収穫作業を行う姿が目に飛び込んでくる。今日は朝の5時から収穫作業が始まっているそうだ。それにしてもサクランボの果樹園自体が初めてだからキョロキョロ、ここでは佐藤錦の他に数種類のサクランボが栽培されているとの事で、なるほど実の色合いが異なっていたりする。


虎竹で修理した腰籠


おおっ!昨年に修理させてもらった腰籠がしっかりと腰に巻かれている。脚立の上で大変な作業をされながら、輝くような真っ赤なサクランボが次々に収穫されて腰籠に入れられる光景に感動した。


虎竹で修理した腰籠


サクランボは傷みやすい果物だそうだ。手早く収穫して、集められたサクランボはすぐに集荷選別場に運ばれている。「この籠、本当に丈夫で使いやすいです。収穫がとてもスムーズになりました」と笑顔で話していただき嬉しくなる。こうして、あの壊れた腰籠が現場で活躍している姿を見て、竹虎としての誇りを強く感じました。


収穫したばかりの佐藤錦


それにしても、収穫されたばかりのサクランボは何とジューシーで、爽やかな甘さ、これが本物かと驚いてしまう。口いっぱいに広がる美味しさに思わず声を上げてしまった。ツヤツヤと美しいサクランボを前に、農家さんの日々の努力と情熱に心から敬意を抱くのだ。





今も息づく御用籠の竹文化

御用籠


こんな大きな御用籠を見たのは久しぶりだ。近頃ではすっかり見かけなくなってしまっていたから、現役で活躍している籠と、しかもこれほど沢山の御用籠に出会えるとは思ってもみなかった。


竹角籠


修理のために職人の工房に運ばれてきた籠たち、所々青く見えているのが今回やり直した竹ヒゴだ。こうして手直しすれば、また長く仕事ができる籠に蘇る。自然素材の籠の素晴らしい点のひとつだ。


籠


このような大きな御用籠には荷物を入れると結構な重量となる。そこで、一人で籠を移動させようとする場合、片方の持ち手部分を持って引きずる事も多い。籠の底に幅広の力竹が四本も入っているの、そのためで、強さと滑りの良さとを併せ持つ竹の特徴を活かした構造と使い方なのだ。


特大自転車籠


プラスチックコンテナが、いくらでも手に入る時代にこうして竹籠が愛され続けるのは何故だろうか?色々な理由が挙げられるけれど、一番は使いやすさだ。硬質なだけのプラスチックは、コンクリートなどに当たった衝撃で破損してしまう事もあるが、竹は堅牢でありながら編み込みが衝撃を吸収するから物流の仕事では頼もしい存在なのだ。


御用籠


それでいて、酷使して傷んだ場合には、今回のように修理して元通りの形になってしまうからプロの現場では今でもバリバリ現役、知っている職人は手放さない。





覚えておられますか?修理したサクランボ籠



さて、今朝のニュースでは山形県のサクランボ収穫の話題が流れていた。前にギフトで頂いた山形のサクランボは色艶、形が綺麗に整い、箱詰された姿が美しくて、まるでアート作品のようで食べられなかった覚えがある。そんなサクランボの収穫が今年も始まるという事なのだが、実は昨年、収穫に使う竹籠の修理をさせて頂いた話題を、皆様は覚えておられるでしょうか?忘れられている方や、初めての方は是非このYouTube動画をご覧いただきたいと思っています。


修理前のサクランボ籠


竹細工は手直ししながら長く使って頂きたいので、竹籠や竹ざる、買い物籠などの修理は積極的にお受けさせてもらっている。そんな中、こちらのサクランボ収穫籠は、国産ではないものの農家の方が大事に愛用されてきたのが伝わってくる、本当に素晴らしい籠だったので修理させてもらったのだ。


送られてきた籠は3個ともボロボロの状態で、最初は1個だけ修理して後の2個は破棄して欲しいとの事だった。ところが、手直しさせてもらった籠が、これから何年も使えるような綺麗な状態になるので、後の籠も全部修理させていただく事になり自分達も嬉しかった記憶がある。


修理完了したサクランボ籠


そして、その時に農家の方に、「来年は機会があれば、修理した竹籠を使うサクランボ収穫を拝見したい」とお伝えしていた。そしたら、何と農家の方はしっかり覚えて下さっていて、来週は山形は天童市まで訪問させてもらう予定だ。サクランボの収穫など初めてだが、職人の手によって見事に復活した竹籠が、再びサクランボ畑で使われるなんて考えたらワクワクする。




1個修理した後の残された2個のサクランボ籠の動画もあります。



重さ3割減、愛着10割増し、真竹コンテナ手提げ籠

真竹コンテナ手提げ籠


真竹で編んだ御用籠にスズ竹市場籠のようなパイプ持ち手を取り付けた、コンテナ手提げ籠バッグ。これくらいのサイズ感なら女性の方にも持ちやすく、使いやすいのではないだろうか。巷にあふれるプラスチックコンテナに取って変わられて、今ではすっかり見ることのなくなった竹製御用籠を身近に感じてもらえると嬉しい。


真竹コンテナ手提げ籠


先週、ボクがコインランドリーまで洗濯物を5キロ入れて持っていったコンテナ籠と比べてみると、これくらいの大きさの違いがある。見た目も違うが、特大サイズは竹ヒゴもワンランク厚みがあるから手にした時の「ズシリ」とくる重量感が全く違う。小さいサイズ(と言っても普通サイズ)は、コンパクトに軽量化して、かなり持ちやすくなっている。


御用籠手提げ


外に持ち出すだけでなく、室内でも野菜籠やマガジンラックなど、持ち手が付いた動かしやすい物入れとしても活躍する。


手提げ付き御用籠


小さくしたからと言って、堅牢さ丈夫さは全く損なわれていない。力強い縁竹や力竹が十二分に入っているので、安心してガンガンお使いいただける。


真竹コンテナ手提げ籠


数年使っていると、このような色合いに落ち着いてくる。まったくもって、良い歳の重ね方だ(笑)、日本は高齢化が進むそうなので、自分も含めて、ますます竹を見習う事が多くなるのかも知れない。さて、これだけ使い込んでいくと重さは3割減、反比例して愛着は10割増しだ。



忘れられたミカン籠(竹編み盛り籠)

鉄鉢竹籠


昭和の時代、家族の集まる居間には必ずと言っていいほどコタツがあって、その上には決まって竹編みの盛り籠があった。おじいさん、おばあさんから、お孫さんまでが揃ってミカンを剥きながらテレビを観ると言うのが冬の定番だったからミカン籠とも呼ばれたりしていたが、「ミカン籠って何ですか?」と声が上がる。


竹職人


果樹園を経営する友人が、当時と比べて今や柑橘類をはじめとした果物の消費量は半分になっていると話す。なるほど、コタツは無くなる、テレビは無くなりスマホでそれぞれが部屋で楽しむ、そして果物は食べないとなれば、ミカンを入れる盛り籠は知らなくて当然かも知れない。


ミカン籠


しかし、そんな時代の流れの中でも細々ながらも生き続けている、かつてのミカン籠の代表選手のような鉄鉢籠。修行僧が托鉢の時に用い鉄の容器に形が似ているから名付けられた竹籠で、当時は何種類もサイズがあり沢山編まれていた中から、今では一番手頃な大きさを作っている。


虎竹盛り籠


先日、たまたま手の平サイズの小振りな竹籠の別注があって、職人が久しぶりだと楽しそうに編み出した。実は籠は小さいものが手間がかかり難しいが、ちょっとした小物入れに最適なカワイイ虎竹鉄鉢が完成した。





特大サイズのレアな横編み竹籠

特大竹籠


竹虎で普通に販売させてもらっている深竹ざるなどと比べても、圧倒的な大きさと緻密な編み込みで全く異なる竹細工なので横編み竹籠と呼んでいる。少し楕円形になっているので、直径は67センチ×深さ18.5センチ×奥行き63センチという特大サイズだ。


深編竹ざる


深竹ざるも縁巻を籐で二重にしたりした丈夫な作りで、このような50センチサイズの大きさを編み込む職人は激減している。非常に巧みに編まれたザルではあるものの、このレアな横編み竹籠と比べるとどうだろうか?


深編竹ざる


縦に通している竹ヒゴの幅にご注目いただきたい。この竹幅の違いに、思わずアッと驚きの声を上げた方はいませんか?これだけ違う。そして横編みの竹ヒゴの繊細さ、こうして比べてみると日頃は竹細工など手にされてない多くの方でも一目瞭然だと思う。


特大竹籠


現在の日本では恐らく真似できる職人はいない。この見た目の繊細さは使う人の使いやすさや堅牢さ、耐久性となる。そして更にもうひとつ、誰も編めないと確信しているのは竹材にある。この竹籠は、あまりにも綺麗に見えるから真竹と言えば疑う人はいないだろう、しかし、実は孟宗竹で編まれている。あの硬く厚みのある竹材をここまで自由にあしらえるとは、まさにこの道一筋、土佐竹細工の伝統と受け継がれてきた技が生み出した逸品だと思っている。





クルミの手提げ籠バッグの持ち手修理について

クルミバッグ手直し


竹の少ない東北など寒い地域では、山葡萄と並んでクルミの樹皮を使った細工があって人気を博しているが、手提げ籠バッグの場合、持ち手が一番傷みやすいのは竹籠でも、クルミでも同じだ。特にクルミの場合は、堅牢な山葡萄素材に比べるとヒゴが割れやすかったりして耐久性は若干劣ってしまう。


胡桃手提げ籠バッグ修理


樹皮の表皮を剥いだヒゴで編まれているバッグ本体には、同じ素材で持ち手が取付られていたけれどヒゴ折れで使えなくなってしまっていた。持ち手をすっかりやり替えるのが一番との事で、職人は前とは違うクルミの樹皮部分を使って修理をすると言う。


くるみ手提げ籠バッグ


クルミの素朴な色合いを活かした持ち手が付くと、本体とのコントラストが良いのではないかと思っていた通り、出来あがった籠バッグは生まれ変わったように格好がいい。自然素材の素晴らしさを、つくづく感じる持ち手の修理だ。





魔除け?鬼門に置かれた六ツ目籠

虎竹ランドリーバスケット


前にも書かせてもらった事があるが、江戸時代の「用捨箱」という随筆には「昔より目籠は鬼の怖るるといい習わせり」と書かれてあって籠目には魔除けの効果があると信じられていた。古い民家の庭先に長い竹が立てられていて、その先端に六ツ目編みの籠が取付られている写真を見た事がある。籠目に代表される六ツ目編みが沢山の目に見立てられていて悪霊を追い払うと言われ、全国各地に残っている風習だそうだ。


虎竹ランドリーバスケットへのお客様のハガキ


虎竹六ツ目ランドリバスケットをご愛用いただくお客様から届いた葉書には、鬼門に置かれて重宝してくださっいるようで嬉しい。目に見えない力についてはさて置き、美しい竹籠が暮らしの中にひとつあるだけで気持ちが豊かになり、生活に潤いを感じるのは確かだと思うので、これからも末永くお使いいただきたいです。





青空の下で編む竹細工、昔ながらの手付き四ツ目籠

手付き四ツ目籠丸足付


四ツ目籠といえば竹籠の中でも定番の籠で、暮らしの中をはじめ、畑仕事や山仕事など様々なシーンでも使われてきた。それだけに、かつては竹職人のみならず農作業の片手間などに近くにある竹で編まれる事も多かった。


小さい頃、ヤマモモの季節になると近所の山の職人さんが、自分で編んだ四ツ目籠にシダの葉を敷き詰め、その中にワイン色に熟れたヤマモモをいっぱい詰めて届けてくれていた事を思いだす。そう言えばヤマモモだけでなく、大潮ともなれば、四ツ目籠には磯で採れるカラスの口ばしや亀の手と呼んでいた貝がギッシリ入れられていた。竹細工と生活は深く密着し、切っても切れない関係となっていたのだ。


思い起こしてみたら、当時の四ツ目籠には持ち手は付いていなかった。多くの場合、口巻部分にロープが通されていて肩に掛けられるようになっていたと思う。山でも海でも激しく動き回るにはその方が都合が良かったのだ。


野菜籠


今では誰も編む事がなくなり、国産としては、すっかり珍しい籠のひとつになってしまった四ツ目籠には、ご家庭で使いやすいように持ち手を付けている。割れにくい丈夫な細い丸竹の足も付けて、通気性も確保しているから野菜籠としても最適だ。


しかし、何より素晴らしいのは、昔の竹細工の原点のような庭先の青空の下で編み上げる職人の姿である。外で風を感じ、小鳥の遊ぶ声を聞きながら編み進める竹仕事は、たまらなく格好がいい。