虎竹光悦寺垣6尺を作る

虎竹光悦寺垣、竹職人


今年の夏も猛烈に暑い日が続いています。そんな中、職人が製造しているのは光悦寺垣、京都の光悦寺に由来する半月形の曲線の中をヤライで組んで仕上げた竹垣です。袖垣に比べても特殊で一般のご家庭で使われることは稀ですが、忘れた頃に一つ、二つのとご注文をいただきます。


虎竹林


今回作っているのは6尺(180センチ)サイズの光悦寺垣、出来あがるとかなりの大きさです。もちろん日本唯一の虎竹を使って作ります、竹林の画像に写るのは「青々とした真竹みたいな竹で虎模様がない」と心配される方がおられると思います。青々とした竹は今年の若竹です、虎竹は3年程度経ってくると虎模様が段々と浮かびあがってきますのでご安心ください(笑)。


光悦寺垣製作


光悦寺垣の巻竹は芯部分の孟宗竹のゆるやかな曲線に沿って巻いていくので長めのものが必要です。庭の演出に欠かせない垣のひとつのバリエーションとしてずっと続いてきたものの近年は定番のサイズというより先の牧野植物園さんに設置させていただいたような別誂えが主流になるのかも知れません。


虎竹光悦寺垣、竹職人


これだけ存在感のある竹垣です、やはり置き場所を選んでしまうのは仕方ありません。しかし思えば自分の入社した30数年前に3尺から7尺まで各サイズを定番のように製作していたのですから日本人の暮らしはここだけ見ても大きく変化していることになります。





虎竹枝折戸の作り方

枝折戸製作


虎竹の袖垣や枝折戸は完全な分業体制が整っていた。袖垣で言うと竹枠組みから、巻竹、仕上げまで大きく3工程に分かれていて、それぞれが専門職となりフル生産するのだが竹枠用の孟宗竹、巻竹の虎竹、仕上げに使う竹穂・四万十カズラ・ヒシギ等部材の採取の職人、その部材を加工・細工する職人のに細かく枝分かれのようにあったので内職を含めると数十人の人々が一枚の袖垣作りに関わっていた。


枝折戸製作


実は枝折戸も袖垣ほど複雑ではないものの枠組と編み込みは分業で毎日のように内職さんに通っていた時代がある。竹枠と編み込み用に薄く剥いだ「ヘギ竹」を届けると、待ちかねたように古老の職人が無駄のない手さばきで編み始める。柔らかいヘギ竹は、編み台の上でまるで激しいダンスを踊っているかのようだった。あの頃、2台の10トントラックに満載されて運んでいた袖垣や枝折戸は何処に行ったのか?今でも細々と続いている枝折戸製作を見ながら思っている。





伝統の虎竹玉袖垣を製造する

虎竹玉袖垣、職人


竹製の玉袖垣を今回ご紹介してみたいと思ったのには幾つか理由があります。ひとつは、ほんの一昔前まではこのような袖垣が普通に玄関脇などに設えられていたのに今では本当に大きな邸宅であるとか、和風の庭園や特別な場所にしか設置しない竹製品となってしまった事です。


ご存知ない世代の方には信じられないかも知れません。日本は狭いようで広い国ですから、もちろん地域差はあって雪の多い地域では袖垣などあまり使われなかったりしますが、ごく一般的なご自宅の庭に設置されてきたものなのです。


虎竹枝折戸


毎月数回は定期的に10トントラックに袖垣を満載して出荷していた程ですし、イベント等に出かけて行っても4トン車くらいの製品は空になるほど人気と言うより当たり前に使われていた製品ですから少なくなったとは言え現在も需要はボツボツとあります。海外からの輸入品をホームセンターで見かけることもありますから、この虎竹枝折戸等と同様にやはりそれなりに流通している庭園用品ではあります。


竹虎職人


袖垣を初めてご覧になられた方の多くが口にされるのは、一本の柱をそのまま使っていると思っていたのに細くわった虎竹を孟宗竹の芯に巻き付けている手のかかった細工への驚きです。そこで、少し長めのYouTube動画となりましたものの竹枠組みから仕上がるまでをご紹介することにしました。どうかご覧ください。




虎竹袖垣のあるお宅

虎竹袖垣


とある勉強会で登壇された講師の先生が「皆さん、目を閉じて」と言いました。そして「私が今日しているネクタイの色が分かる方は手を上げてください」と続けたそうです。今さっきまで目の前にいた方のネクタイだから分かりそうなものですが、実は青だったか?赤系だったか?ほとんどの方は分からないという話を聞きました。


まさに、この虎竹袖垣などはその典型です。竹虎に来社される方は少なくないと思いますが、その中で袖垣をご存じの方はほんどおられません。中高年の方でしたら今まで何からかの形で見たりする機会はあったかも知れないものの関心がないと人の目には入らないもかも知れません。


虎竹玉袖垣


しかし、この虎竹玉袖垣などはどうでしょうか?洋風の建物には似合わないと思われてる方もおられますけけど何年も使って古びた袖垣も味があっていいものですし、新品にやり替えた袖垣も素晴らしいものです。このお宅のお客様はこうして数十年来同じ別注サイズの袖垣をご愛顧いただき続けていらっしゃいます。


虎竹袖垣


あまり見かけないと思われる方ほど、これから何処かに行かれる際には是非注意してみて下さると嬉しいです。玄関先の見えるお家にこのような袖垣が設えられているのを自分などは度々でくわします。


虎竹玉袖垣、竹垣


このように大きな特別サイズの袖垣は確かに少ないです。


建仁寺垣


京都とかに行くと白竹を一定幅に割った竹を並べて製作する建仁寺垣はあちらこちらにありますので探してみて下さい。白っぽい晒竹の色合いが枯れて渋い風合いに変わっているのも竹の魅力です。


虎竹光悦垣


さらに、このような形の光悦寺垣も庭にあったりしますので目につきだすと楽しくて仕方ありません。


パリの犬矢来

虎竹犬矢来


京都を歩くと必ず目を引くのが塀に設えられた犬矢来です。元々は軒下を守るための柵のようなもので犬のオシッコ除けだとか、雨宿りお断りのためのものだとか言われますが現在では古都の町を彩る無くてはならない竹の造作物となっています。


虎竹で製作することは珍しく、多くは白竹や青竹で作られています。出来あがったばかりの晒竹犬矢来がズラリと黒壁に並んでいたりすると本当に美しいものですけれど、これが時間の経過と共に色褪せ、枯れた風合いになってからでも又味わいが出てくるので竹はいつまでも楽しめるものです。


パリの犬矢来


さて、ところで先日パリのケ・ブランリー美術館で開催されている日本の竹工芸展を拝見に行った帰り道に面白いものを見つけました。竹と鉄と言う素材の違いはありますものの壁に沿ってずっと向こうまで並べられている物は紛れもなく日本の犬矢来のようです。


竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI、山岸義浩)


しかし、日本から遠く離れたフランスで文化も違うのに同じようなものがあるのだろうか?何か別の意味合いなどもあるのではないだろうか?帰りの機内でもずっと気になって考えていましたが、そう考えて竹虎FBに投稿してみたら、物知りな方が教えてくれました。


やはり設置の理由は日本と大差ないようです、特に道路が舗装されていなかった時代には馬車が通ると泥がはねて汚れるのでそれを防ぐためだというのは納得できます。確か、ニューヨークの住宅でも泥はねを防ぐために一階部分が階段になって入り口が高く作られていると何かで読んだ覚えがあります。


それにしても同じようなものが日本では竹で、パリでは鉄でそれぞれ誕生して今でも使われているのは興味深い事です。


新しい袖垣で迎春準備

虎竹角垣、袖垣、玉垣、竹垣


袖垣をご存じでしょうか?和風の住宅や庭が少なくなりましたので若い方の中には見た事もないという人ばかりかも知れません。ちょっとした目隠しのために玄関脇や庭に据え付けられていたもので、竹虎では最盛期には10トントラックに満載して県外に毎週のように運んでいました。


虎竹角垣、袖垣、玉垣、竹垣


しかし、その後生活様式の変化と安価な海外竹製品が入ってくるようになり、今までの既成サイズの製造は極端に少なくなりました。


晒竹、白竹角垣、袖垣、玉垣、竹垣


冬の風物詩と言うくらい白竹(晒竹)の加工もしていましたので白竹の玉袖垣もあります。袖垣の肩部分が丸く曲線になっているのが玉袖(たまそで)垣で両方の柱真っ直ぐなのが角袖(つのそで)垣です。


虎竹角垣、袖垣、玉垣、竹垣


屋根付の袖垣もあります。袖垣は庭で雨ざらしになりますので、このような小さな屋根があるだけで耐久性は随分と違うものです。


虎竹光悦寺垣


光悦寺垣は並べてみると幅によって異なるラインがよりハッキリと分かります。


片袖枝屋根付


先に出ました片袖枝屋根付の屋根を製作していました。竹林で伐採され枝打ちされた竹の小枝はこのような所に使われるのです、目立ちませんが大事な脇役です。このように竹は稈のみならず、根から枝、葉にいたるまで無駄なく全て活用できる素晴らしい素材でもあります。



桂離宮の生垣(桂垣)

桂離宮の生垣(桂垣)


西日本豪雨の被害をニュースで見るたびに心が痛み、雨の多い地域に暮らす自分達には明日は我が身と考えて備えなければならないと思っています。近年の雨の降り方は、すでに異常気象という事ではなく、温暖化の影響なのか?これが当たり前となってきた怖さも感じます。災害への竹の強さという事を先日もお話しさせてもらいましたが、実は桂離宮の生垣も竹の生命力の象徴のようなものです。


桂離宮の竹林


桂垣と呼ばれる、この生垣は約250メートルもの長さがあるそうですが何気に見ていれば普通の竹垣かと見過ごしてしまうほど自然で生き生きとした姿をしています。


桂離宮の生垣(桂垣)


ところが、実は裏側には建仁寺垣があって、その垣に敷地内に生えている淡竹をそのまま引っ張り倒す形で建仁寺垣に竹のウラを固定するという一見乱暴とも思えるような設えとなっているのです。実際に裏側から見た事がないので一度拝見したいと思っていますが外側から見ている分には、まさか、そんな造りになっている事など微塵も感じさせません。


桂川


桂離宮の東側には桂川が流れていて大雨の洪水時には、この生垣が流木などから守ってきたといいますので竹の生命力の象徴というのがお分かりいただけるかと思います。


桂離宮の生垣(桂垣)


背後の竹林の竹を折り曲げる形で、生きた竹の枝葉を使うとは誰が考案したのか知りませんが竹を知り尽くした先人の知恵ですろう。青々と繁る竹葉を見ていると改めて竹の不思議な力を感じますが、これも竹だけではこれだけの生垣にはなりません。竹を活かしきる職人の技が加わり自然災害に負けない竹垣となっているのです。



三代目の門セットについて

竹虎工場、門セット


杉皮を何枚も重ねて重厚な屋根を製作しています。少なくなったとは言え、時折このような大型の竹製品のご注目をいただくのです。この屋根を二本の焼柱の上にのせて焼き板木戸など取り付ければ立派な門セットの完成ぜよ。


門セット


このような製品は、県外に配送する事も多いのですが今回の施工は高知市内のお客様でしたので自分達で施工に行きます。先日は牧野植物園に施工した6メートルの光悦寺垣をブログでお話しさせてもらいしまたが、竹は庭園でも多用されていますのでこのような工事などもあります。


杉皮屋根


真新しい屋根の美しさは言うまでもありませんが、この杉皮の屋根が時間の経過と共に枯れた風合いとなり苔を生したりしはじめると更に味わい深いものになってきます。


竹虎四代目、門セット


実はこの門セットをやり替えさせてもらうのは三回目。一番最初は祖父が40数年前に施工してから古くなったものを自分が20年前に新しくしました、そして又新しくなりましたので門セットは三代目、こうして長くご愛顧いただくお客様のお陰なのです。


虎竹袖垣に関わる職人たち

虎竹袖垣製造職人


竹の袖垣は注意して見ていたら玄関脇などに取り付けられていたり、都会の真ん中でもビルの谷間の飲食店にあったりする昔ながらの庭園用の竹製品の一つなのです。けんど、一般の方でご存じの方はほとんどいないですにゃあ、そしてご存じの方が稀におられたとしても、遠くから眺めるだけですので両脇の竹柱に実は細かい細工が施されちゅうとは思ってもない事のようぜよ。


袖垣の骨組みは実は孟宗竹が使われていて、その柱を細く割った虎竹や白竹で巻き付けて化粧すると共に強度的に強くもするのです。細く割っていますので竹節を微妙にズラして模様にも出来るし、外で雨ざらしで使う竹製品は傷みも早く丸竹の場合など割れる事が多いですが、一度細く割った竹を孟宗竹の芯に巻き付けてあるので割れる心配もなく耐久性は一本の竹と比べて格段に高くなっちょります。


あまり注目される事もない袖垣ですが、骨組みに使う孟宗竹、芯部分を巻く細く割った巻き竹、ヒゲのように見える飾りの黒穂、竹を平らに割のばしたヒシギ、すかしの格子部分を縛っている四万十カズラまで、それぞれの職人さんや内職さんの仕事が一つにまとまって、ようやく一枚の虎竹袖垣が仕上がります。


四万十カズラ


巻き竹は両方の柱が真っ直ぐな角垣(つのがき)だと割幅も比較的広く簡単ですが、玉袖垣のように曲がりがある袖垣は割幅も細く、長い竹を割っていくので熟練した技術が必要となるがぞね。これが幅の広い、大きな光悦寺垣などになると更に大変です。


四万十川流域から集めて来てもらうカズラは、乾燥させ沢山こうやってストックしちょります。出番の多い、少ないはありますものの、どれひとつ欠けても昔ながらの製品作りができなくなる、袖垣は思う以上に多くの人の手を借りながら作り出される竹製品なのです。


虎竹袖垣のある玄関

虎竹玉袖垣


竹垣と言えば、若い方の中にも何となくイメージできると言われる方がいそうな気がするのです。ブロック塀や門等と同じように家の外構部分にあるものですので竹で組んだ垣根などは、それとなく見た事があると思います。


細かく言うと竹垣にも、植栽された生きた竹をそのまま活かして目隠しのように使う場合と、竹を加工して垣根として作りあげるものとに大別されると思います。竹は一年を通して葉が青々と茂り、気持ちのよいものですので生け垣もエイし、職人が加工する竹垣なら色々な竹素材を用いて簡単な四ツ目垣から建仁寺垣や御簾垣、大津垣、鉄砲垣、網代垣など名前を挙げていたら何種類もありますけんど竹穂を使った穂垣や松明垣など個性的なものまで色々とバリエーションを楽しめてエイのです。


最近では自然素材そっくりに塩化ビニールで作られた人工竹があって、遠目には区別がつかないほど、そっくりで驚きますが耐久性が高いのは良い事がも知れないものの、いつまでも綺麗過ぎるので自分は全く好きになれないがです。


古い虎竹袖垣


竹垣は何とか分かるという方も、今度は袖垣となると一体何なのか?どうやって使うのか?竹垣と、どこが違うのか?とお分かりになられない方が多くなってきますぞね。袖垣とは玄関脇など建物の脇にしつらえて目隠しとしての機能を持たせた小さな竹垣とでも言うたら良いろうか。


和風のご自宅が少なくなって袖垣を使われるご家庭は本当に減ってしまっていますが、このような袖垣が一つあると、庭周りが引き締まり何とも言えない良い風情となるがですぜよ。どうしても和風建築でないと似合わないかと言うと実はそうでもなくコンクリートや新建材などのお宅でも使われているのを拝見しますが、なかなか格好のエイものですし庭の緑と、こじゃんとマッチするのがやっぱり天然素材やにゃあと笑顔になる所ながです。


屋外で使う竹垣や袖垣は、新しいものは当然気持ちが良いのですが、古くなる経年変化そのものを楽しむものですぞね。この袖垣は、おそらく20数年お使いいただいたのではないかと思いますが、すっかり色が枯れ、所々に苔をむすようになってきた竹もなかなかエイものです、こう言う長い時間を感じさせる袖垣は大好きぞね。