土用の丑の日

鰻


この前の丑の日は、鰻を食べましたろうか?あの鰻を焼くエイ香り。たまらんでねえ。まっこと、食欲がのうなる夏に、あれっぱあ食欲をそそる食べ物もないがです。ところで、ワシも鰻は好きやけんど、ワシの鰻好きは筋金入りぜよ。そりゃあ、そう。そりゃあ、そう。(何で、二回言う?)


みなさんは、鰻いうたら鰻屋さんか、魚屋さんか、スーパーかどっかで、「買う」もんですやろう?けんど、ワシらあは小学校の頃から鰻いうたら、「捕る」もんですきに。竹で編んだ「ウケ」を朝早うに起きて川にあげにいくがちや。ウケがズッシリ重たかったら、大量の証ぜよ!ほんでから、捕ってきた鰻を大人たちが、虎バサミでつかんで、まな板にのせた思うたら、頭をキリで打ち付けてササッとさばいていくがです。


鰻が骨だけになってもクネクネ動きよったがを、よう覚えちょります。びっくと(少し)残酷な話かも知れんけんど、鰻がジリジリ焼けて、甘うて美味しそうな香りがしてくる頃には、そんな事はさっぱり忘れてちゅう。けんど、そうやき食べ物には感謝して残こさんと食べなイカン言うことちや。さて、今日はそんな話やのうて、丑の日にびっくと思いだした話があるがです。


魚板


前にも話たろうか?高知の佐川町いうところに、大正軒いう老舗の鰻屋さんがあるがです。実は予約しちょかんと入れん店らしいけんど、そんな事は田舎者のワシは知らんきに。店先の魚板も叩くこともせんと、ズカズカと店に入っていったがです。


さすが、有名店だけあって、お昼は人がいっぱいみたいぜよ。けんど妙ながです。廊下ですれ違うひと、すれ違うひとが、みんなあ、おじきをして行くがです。こりゃあ、上品なお客さんばっかりのお店じゃちや。と思うて、ワシも、「あ、どうも、こんにちわ。」言うて挨拶しながら来たけんど、通してもろうたテーブルで考えたら、どうも、作務衣を着ちゅうきにお店の人か、もしかしたら近くのお寺の人と間違うちゃあるがぜよ。まっこと面白かったちや。


大正軒


「お客さん、ホントは予約なかったらイカンがですきに。」そう言いながら美味しい鰻を食べさせてくれたお店の人に、まっこと、おおきに、ありがとうございます。今度は予約していきますぞね。けんど、不思議なもんじゃ。土用の丑の日まえになったら、鰻を捕るウケ(鰻筌)が、ぼつぼつ売れるがです


うなぎうけ


「コロバシ」とも呼ばれる竹編みの道具やけんど、まっこと、こんな鰻ウケをまだ使う人がおるがや思うたら、びっと、安心したりもするがです。けんど、まだ日本のあちこちの川でも、天然の鰻がおるいう事ですろう?ウケ作りのおんちゃんも、「しょう、せいちゅうのう」(本当に急いでいるんだね)言いながら汗だくで編みよったけんど、嬉しそうながちや。いつまでも、このウケが、今の時期だけでもエエきに、びっと(少し)でもエエきに、人から忘れられんと残っていく、そんな自然が残っちゅう日本やったらエイにゃあ。そう思うがぜよ。


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